歌誌「冬雷」2017年 5月号 私の心に残った歌 その1 | 北山の歌雑記

北山の歌雑記

短歌初心者の戯言
「うたは下手でもよい自分のうたを詠め」
目指す旅路の道中記

前月に引き続き歌誌「冬雷」5月号の中で、私なりに特に心に残った

歌を抜粋してみました。鑑賞・評などと大それたものでは無く  

私なりに選ばせていただいた理由を少々、記させていただきます。

(☆新仮名遣い希望者)  

尚、冬雷集感想の一部は後日


「小錦」の真横に座せば大いなる加護にあるやう旅のゆきずり

愛知 澤 木 洋 子


元大関の小錦八十吉。

現役引退してほどなく廃業し、現在はタレントとして活動しているようだ。

移動の最中、その小錦の真横に座る機会を得た作者。

その大きな体に威圧感はなく、「大いなる加護にあるやう」と感じた。

旅のゆきずりの、心に残った出会いの1コマが窺える。


三月十一日大震災の懐古の陰で大空襲のこと小さき記事に

東京 赤 間 洋 子


三月十一日の東日本大震災の関連が、今年も大きく取り上げられた記事。

その紙面の片隅に昭和二十年三月十日の東京大空襲の記事を見つけた

作者。

三月十日の東京大空襲は、この日だけでも罹災者は百万人を有に超える

という人類史上最大の無差別爆撃。

その記事の小さな扱いに、その事実が忘れ去られるかのような気配を

感じつつ、往時を知る作者としては複雑な沈痛な思いで眺めていたように

察せられる。


ベランダに首のべ白き半月を眺めてをれば夕からす鳴く

東京 森 藤 ふ み


ベランダに干し物を取り込んでいたのであろうか。

作者がふと眺めた空には、ほっかりと白い半月が浮かんでいた。

結句「夕からす鳴く」に、我に帰った作者。

その様子からは、時間の思いがけない進捗が窺える。


昨日一首今日も一首と詠む歌は幼子こぼす飯粒に似る

富山 冨 田 眞紀恵


日々、一首一首詠い続けけてゆく作者の作歌作業。

それを自身では、「幼子こぼす飯粒に似る」と評する。

それが的確なのか否かは別として、その比喩は巧みだと思う。

作者の願うところであろう沸き出でるかのような多作創作。

作歌経験のある方には共通の思い、願いかも知れない。


梅の木のひともとまじれる杉山の木立の間に花みゆほのと

東京 天 野 克 彦


人が容易に踏み入られる杉山に咲く梅の木。

 木立の間に花みゆほのと」といった具合に、ひっそりと咲いていた模様だ。

なぜ杉木立の中に、ぽつりと梅の木が在るのか。

「ひともとまじれる」にの語には、そんな作者の素朴な疑問も隠されて

いるようにも感じられる。
 


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