歌を抜粋してみました。鑑賞・評などと大それたものでは無く
私なりに選ばせていただいた理由を少々、記させていただきます。(☆新仮名遣い希望者)
尚、冬雷集感想の一部は後日
住む人の絶えたる隣家風強き日には気になり時々覗く
栃木 高 松 ヒ サ☆
空き家になってしまった作者の隣家。
作者は風の強い日は、ときどき覗くという。
それまで建っていた家屋が、急に倒壊するとも考えにくい。
隣家が空き家という事そのものが、不安なのであろう。
ちなみに私の実家は現在、隣三軒目まで空き家らしい。
旧の切手にプラス二円のうさぎの絵一日も早く届く気のして
東京 大 川 澄 枝☆
以前は五十円であった官製はがき。
作者の手元には、買い置きしたはがきが随分とあるようだ。
投函する前にそのはがきに二円切手を貼り足していた作者。
そのうさぎの絵は静止している図柄ではあるが、その飛び跳ねる
というイメージから連想された結句の「早く届く気のして」。
とても、かわいらしい内容と思われた。
四月八日花まつりとも気付かずに来たる寺院に参詣者多し
東京 田 中 しげ子
四月八日は釈迦の誕生を祝う仏教行事の花まつり。
他にも灌仏会等々、さまざまな呼び名があるらしい。
その日、参詣に寺院を訪れた作者。
普段より参詣者の数が多く驚いたようだ。
後で知った花まつりの日であった事。
「花まつりとも」に、この日に参詣した事への作者の後悔が察せられる。
片付かぬ机の上の片隅に一汁一菜独りの夕餉
兵庫 三 村 芙美代☆
さまざまな書類等が重なる机上。
その空いているスペースを利用しての作者の夕餉。
「机の上の片隅」や「一汁一菜」に、他人を気にせず自分のペースで
日々を過ごしている気楽さ。
そして「片付かぬ机の上」への、作者の感じる後ろめたさのような感覚が
見受けられる。
二十一軒が十三軒の班になり静かな総会先細りなり
茨城 姫 野 郁 子☆
作者の所属する町内会の班。
「二十一軒が十三軒」の班に減少した模様だ。
予想される「静かな総会」。
結句「先細りなり」に、今後の町内会運営への不安が案じられる。