歌誌「冬雷」2017年 7月号 私の心に残った歌 その2 | 北山の歌雑記

北山の歌雑記

短歌初心者の戯言
「うたは下手でもよい自分のうたを詠め」
目指す旅路の道中記

前回に引き続き歌誌「冬雷」7月号の中で、私なりに特に心に残った 

歌を抜粋してみました。鑑賞・評などと大それたものでは無く

私なりに選ばせていただいた理由を少々、記させていただきます。  

(☆新仮名遣い希望者)


夜の闇のマントに包まるわが住まひ十分ばかり物音途絶ゆ

東京 天 野 克 彦


よく学校の教室で室内を暗くするのに用いた暗幕。

その暗幕に覆われたかような外光の無いという作者の家屋。

周囲に隣家の家灯りも無く、ぽつりと建っているイメージが浮かぶ。

その漆黒の闇に包まれた中で、周囲より一切の物音が無くなったと言う。

そのような事は滅多に無いのであろう。

「物音途絶ゆ」に、その新鮮な驚きが感じられた。


小賢しく電話一本で金儲けを企むベルが朝に夕べに

東京 荒 木 隆 一


作者宅に掛かってくる電話。

大抵、セールスの電話の様だ。

「小賢しく」や「金儲けを企む」の語から、作者はだいぶ立腹のようだ。

それも「朝に夕べに」と、四六時中の対応に相当うんざりしている様子が

窺える。


自己流を捨て蕎麦打ちを習ひたり微妙な湿りを指は覚える

埼玉 嶋 田 正 之


今まで家伝に自己流を加えて蕎麦打ちを行っていた作者。

さらなる精進をと習い始めたようだ。

「微妙な湿りを指は覚える」と、その成果を確信した作者。

やはり物事はしっかりと「習う」事が、必要と感じた次第。


書きたいと思ふ言葉に出会ふのが書の創作の原点なるも

栃木 兼 目   久


「書きたいと思ふ言葉に出会ふ」事が出来ない作者。

それが「創作の原点」であるという。

創作の原点は書きたい言葉への出会いと、そこから発する衝動が

必要なようだ。

その言葉に出会えない作者の嘆きは深い模様だ。

それは結句「原点なるも」の末尾の終助詞の「も」に、端的に表されている。


移り来て五十余年のわが窓に富士の見えねば詠むこともなし

東京 赤 羽 佳 年


現在居住する地に、五十年以上経るという作者。

その居宅の窓辺から富士の山は見えないという。

その結果の「詠むこともなし」。

歌意は至って単純ではあるが、作者の作歌姿勢を窺わせる。


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