歌誌「冬雷」2017年  11月号 私の心に残った歌 その6 | 北山の歌雑記

北山の歌雑記

短歌初心者の戯言
「うたは下手でもよい自分のうたを詠め」
目指す旅路の道中記

前回に引き続き歌誌「冬雷」11月号の中で、私なりに特に心に残った 

歌を抜粋してみました。鑑賞・評などと大それたものでは無く

私なりに選ばせていただいた理由を少々記させていただきます。  

(☆新仮名遣い希望者)


切り通す那須高原の東北道なだりに過ぎる白きやまゆり

埼玉 町 田 勝 男


人家を避けて造成された東北道。

当然、切り通しの道はやたらと多い。

東北道で那須高原の辺りを走行した作者。  

なだりに白きやまゆりを見掛けた。

走行中の事で見えたのは、ほとんど一瞬の光景であったろう。  

しかしながら確かに作者の脳裏に残された白きやまゆり。

その群生はなだりの一面に広がった規模の大きい群生であった事が

想像される。  


うわむきに動かぬ蝉を拾わんと手を添えたればジジと脅さる  

東京 永 田 夫 佐☆


うわむきに動かぬ蝉を見つけた作者。  

当然、死骸と思った事であろう。

そのままでは不憫と思ったのであろうか。  

片付けようと手を添えたその途端、死んだかに見えた蝉が最期に放った

生存の伝達。

作者はその意外な力強さに驚きを感じたようだ。

 

帰省せる子に「嫁取らむか」と襖越し父親言ふを厨に居て聞く

 岩手 田 端 五百子


帰省せる子に「嫁取らむか」と襖越し述べる父親。

 面と向かっての問いかけ出来ないところに遠慮があるようだ。  

そして母である作者に至ってはその場に居合わせるのも遠慮がちだ。

 しかし厨に居て聞く」には、単に聞こえてくる話し声を聞いているといった  

内容では無く、主体的に父子の会話を「聞く」積極的な姿勢が表されている。


 ぽたぽたと顔から汗の滴りて草取り中にトマト捥り食む  

栃木 正 田 フミヱ☆


 ぽたぽたと顔から汗の滴る真夏の草取り。  

その暑さにたまらず「トマト捥り食む」作者。

 捥り」の語に耐え難い暑さと喉の乾きによる、ほとんど衝動に近い作者の 

作といった雰囲気がリアルに感じられる。


美容院でもポルシェの話題近所でも宝くじか遺産入ったのかと  

埼玉 浜 田 はるみ☆


作者の近隣の民家の駐車場に突然留め置かれるようになったポルシェ。

その話題は美容院でも持ちきりのようだ。

しかしその購入資金については誰も真相を知らない。

下句「宝くじか遺産入ったのかと」と、周囲に飛び交う憶測。

ポルシェの所有者にとっては、まったく大きなお世話の内容ではあるが

ごく狭い近隣の人間関係の中での飛び交う憶測の、つまるところを

知りたくなるような内容歌だ。



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