歌誌「冬雷」2018年  1月号 私の心に残った歌 その3 | 北山の歌雑記

北山の歌雑記

短歌初心者の戯言
「うたは下手でもよい自分のうたを詠め」
目指す旅路の道中記

前回に引き続き歌誌「冬雷」1月号の中で、私なりに特に心に残った 

歌を抜粋してみました。鑑賞・評などと大それたものでは無く

私なりに選ばせていただいた理由を少々記させていただきます。  

(☆新仮名遣い希望者)


トロ箱に小ぶりの秋刀魚うち揃ひ街おこしといふ祭はじまる

岩手 田 端 五百子


水産物を入れるトロ箱。

その中には小ぶりの秋刀魚がぎっしり。

うち揃ひ」に大振りの物は見当たらないとの実感が見える。

「祭はじまる」の「祭」はイベントの事だ。

この場合の「祭」には街おこしイベントが、いよいよ始まるのだとの

期待感が感じられる


熟練のオペレーターのタッチする画面通りに鉄板曲がる

千葉 黒 田 江美子


工場見学に訪れた作者。

そこで作者が目にしたのはオペレーターのタッチする画面通りに鉄板が

曲げられる光景。

熟練の職人が行う作業ではなく、「熟練のオペレーター」の作業と云う

ところが現代の工場における生産工程の有り様を窺わせる。


台風の過ぎて気付けり鉄線の茎がすくりと伸びていること

埼玉 江波戸 愛 子☆


台風の過ぎて、ようやく日差しの戻った天候。

飛来したゴミの片付けの合間であろうか。

気付けり鉄線の茎がすくりと伸びていること」と、悪天候の中でも成長して

いた鉄線に気付いた作者。

「すくりと」に、その強靭さを感じた作者の感動があるように思う。


思うことすらっと話せる母の前老いても唯一子となれる時

埼玉 野 崎 礼 子☆


家族に囲まれての作者の生活。

そこでも何かしらの気兼ねを感じると思うのは、家庭といっても社会の

縮図であるが故であろう。

そのような中でも、「思うことすらっと話せる母の前」という作者。

家庭では「母」もしくは「祖母」の立場である作者。

それでも母の前では「老いても唯一子となれる時」と、今でも心安らぐ母の

存在に作者の安心感が感じられる。


今年こそ古いセーター捨てようと思いつつ着てどこか落ちつく

栃木 川 俣 美治子☆

 

「今年こそ古いセーター捨てようと」思いつついる作者。

しかしながら着慣れた衣服に愛着は付き物だ。

そして実際に着てみると、「どこか落ちつく」。

私にも思い当たる服が無数にあり、共感できる内容歌だ。



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