お掃除ロボットに乗っかって遊ぶ猫がいるらしいですね。遊園地のコーヒーカップと申しましょうか、円舞と申しましょうか。ルンバ890を買ったのは、そんな様子を思い描いたからでもあります。

 

 

「友達きたよ」とかみさんが目の前で開封したルンバに興味津津の様子でした。止まっている時はクンクン臭いをかぎに来ました。この調子なら、上に乗ってルンタッタ、ルンタッタとやってくれるかなと思ったのは束の間、うちの猫は飼い主に似てビビリなのを思い出しました。

 

ルンバが動き出すと、一瞬立ちすくみ、背を向けると、脱兎のごとく一番遠い部屋の一番奥まったところに逃げてしまいました。キャビネットの裏にある本棚の最下段です。そこに身をひそめて縮こまっています。そないにこわがらんでもいいのに。

 

 

こうして「制床権」はルンバに握られたのでした。

 
 
 

 

 

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なので、猫に遠慮して、あまりルンバは動かしていません。ところがある日、猫のしつけに厳しいかみさんが、ロボットのスイッチを入れたまま家を空けた。家の中は猫とルンバのみ。ルンバはうなりをあげて動きまわっていたことでしょう。ルンバには当然、周りを慮った動きはできない。ごみがあるところに突進します。猫あるところに抜け毛あり、抜け毛あるところにルンバあり。

 

 

かみさんが帰ってくると、いつものように猫がお出迎えにきました。しっぽをつんとたててすり寄ってくる。だがルンバの姿はありません。そのへんを探しました。でも見当たらない。「ルンバどこにいったん?」と猫に聞くけれど、ごはんをよこせとミャーミャー言うばかり。で、見つけました。ルンバは扉のしまった私の部屋にいたのです。窓はしめていたので、部屋には風が通りません。扉がかってにしまることはないのです。

 

 

誰が閉じ込めたのか?かみさんは、ピンときた。

 

 

あなたなの?

 

 

 

あなたなのね!

 

 

 

 

 

扉をしめてルンバを監禁したのは、うちの猫だと確信したのでした。監禁犯でありながら、扉は自然にしまったものと無罪を装うワル?な猫。大事件が起きたとばかりに、私が家に帰ると、この顛末を息せき切って、面白おかしく話すのでした。

 

 

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「ふん」、「ふん」と聞いていたものの、「ほんまかいな」と思いました。というのも、うちの猫は、これも飼い主に似てあまり賢くありません。世の中にはドアノブにとびついて開けたり閉めたりする猫があると聞きますが、それはよそ様のこと。うちの猫は、少し開いた扉に前足をつっこんでこじ開ける技はもっていますが、閉めるなんてところは見たことがない。閉め方がわからなければ監禁するなんて発想が沸くはずもありません。

 

 

想像するに、猫が隠れていた部屋にルンバが入ってきた。「恐ぇ~よ~」とばかり別の部屋に逃げた。ルンバはあちこちゴツンゴツンとぶつかりながら、健気に掃除をする。そのうち、内側から扉にもゴツンとやった。1回だろうか、2回だろうか。当たっているうちに閉まった。出口を失ったルンバは別の部屋にあるホームベースに帰ることができずに電気がなくなってこと切れた。それが真相でしょう。猫は天敵の音が聞こえなくなったので、しめしめと思っていたのかも。とういうか猫タワーの上ですでに熟睡していて知らなかったのかもしれません。

 

 

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体重

うちの猫2.5㌔  ルンバ3.8㌔

 

 

うちの猫は、2歳になりましたが、本当に小さくてやせっぽちです。毛が多いのでそれなりのボリューム感があります。でも、胴体は私の両手の親指と人差し指で作る輪っかぐらいの大きさしかありません。重戦車のようなルンバと対決して勝てるはずもない。

 

 

再大稼働時間

うちの猫5分  ルンバ1時間

 

 

ペルシャ(チンチラ)にしては活動的な方だと思います。夜明け前には、毎朝、廊下ダッシュを3本はやります。しかし、その程度が限界で、猫じゃらしで遊んでやっても5分もすると省エネモードになります。これに対してルンバはたっぷり充電してやると、ゴツンゴツンと疲れを知らない子供になる。働き方改革の敵のようなモーレツ社員です。勝負にはなりません。

 

 

唯一、猫が勝っているのはスピードでしょう。だから逃げるにしかず、なのです。

 

 

ところで、うちの猫とルンバには共通点もあります。それは「人間の期待を裏切る」ところです。猫は来てほしいときは来ず、邪魔な時に寄ってくる。食べてほしいものを食べず、食べてほしくないものをねだる。ルンバとはいえば、ごみが多いところを真っ先にスイーとやってほしいのだが、そこには近寄らず、何度も同じところをやったりする。わざわざ持ち上げて置いてやっても、そこは「見なかったことにしよう」と言わんばかりに、ほかのところに行ってしまう。アマノジャクです。しばらくして、他のところを一通り回ってきてから、最大重点地域にやってくる。人間からすれば「最初にそこやってよ」と思うわけです。

 

 

前にも書きましたが、猫は未来にではなく現在に報恩するところが徳であると思いますし、ルンバももう少しうちに慣れてくれば、効率的な動きをしてくれると思います。

 

 

問題は「二人」が仲良くやってくれるかどうかです。コーヒーカップは望むべくもありませんが、ニアミスしても気にならないくらいに、うちとけてくれたらいいと思うのです。