2017年6月1日木曜日

いくら暑くても犬にしてはいけないこと あっちゃんの話


おいらが日射病になって母ちゃんは思い出したことがある。

おいらの母ちゃんの古くからの友人でワンコ好きのあっちゃんという御仁がいる。
あっちゃんもおいらのブログを読んでくれていて、この話はあっちゃんの了解のもとに明かす。

あっちゃんは本当に犬が好き。
口は悪いけど、いつも犬の気持ちになって考える本当はとても優しい人だ。

そんなあっちゃんが、犬にとって良かれと思ってやったことがとんでもないことになって、それ以来、あっちゃんの人生は犬に償うための人生になったんだ。

今から20年以上前のこと、あっちゃんはアイビーという黒いラブラドールを家族にしていたんだ。あっちゃんは本当にアイビーを愛していて、アイビーもあっちゃんのことが大好きで、とてもとても信頼していたんだ。



アイビーが5歳になった年の夏はとても暑かった。
ラブラドールという犬はカナダのニューファンドランド島原産の犬だから、寒さにはめっぽう強いけど暑さにはとても弱い。あっちゃんもそのことはよく承知していて、アイビーに少しでも涼しくお散歩を楽しんでもらおうと、いろいろ考えて工夫していたんだ。
散歩時間をまだ薄暗い早朝にしたり、大きなシャトルに凍った濡れタオルを入れて持ち歩き、散歩の途中でアイビーがハアハアしたら、それで首周りを冷やしたりしてあげてたんだ。
でも、その年の暑さにあっちゃんの努力は追いつけなくて、遂にアイビーは暑さを嫌って大好きだったお散歩に行きたがらなくなっちゃったんだ。



あっちゃんは考えた。
アイビーの暑さの原因を取り除いてあげようと。
考えた末にあっちゃんはハサミとバリカンでアイビーの毛を丸刈りにしちゃったんだ。
黒ラブだったはずのアイビーは灰色がかった薄ピンクの鶏ガラ仕様に><
ちょっと外に連れ出せる容貌ではなくなっちゃったから、お散歩も人がいない夜だけにしたんだ。
涼しくなって家の中では元気を取り戻したかのように見えたアイビーだったけど、次の日から急速に衰弱していって、その次の日にあっちゃんはアイビーを獣医さんのところに連れて行った。
そこで、あっちゃんは先生からものすごく叱られたんだ。
あっちゃんは初めて知ったんだ。
犬は紫外線にとても弱く、紫外線から身を守るために毛が生えているんだってことを。
紫外線を防止するために慌ててアイビーに服を着せたんだけど、地毛ほどの効果はなく、残念なことにそれから数日後アイビーは亡くなったんだ。
紫外線被ばくによる衰弱死だった。



あっちゃんは泣いて泣いて泣いてアイビーに謝ったんだけど、もちろんアイビーは帰って来ない。
あっちゃんの友人たちは、あっちゃんがアイビーの後を追うんじゃないかとすごく心配したんだ。その後、2年くらいあっちゃんは家に閉じこもってた。
母ちゃんが久しぶりにあっちゃんに会った時、あっちゃんはほぼほぼおっさんなのになんと!ピカピカの1年生になっていたんだって。獣医科大学に入学したんだ。
現在あっちゃんは獣医を育成する獣医として頑張っている。
自分の無知で失くした命に、こういう形で落とし前を付けたあっちゃんを母ちゃんもおいらもとても尊敬しているんだ。

人間は間違いを犯す。
それが如何に善意に基づく間違いであっても、取り返しのつかないことをしてしまったら、そこからどう立ち向かうかで人間の真価が決まるんだろうな。

口が悪いあっちゃんは今でもバカは犯罪と言ってはばからない。

でも、自分の犯罪的バカを自覚して、それを自力で乗り越えたあっちゃんには、そう言う資格がちょっとだけあるんじゃないかと思うんだ。


なんてな。




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