2017年2月10日金曜日

MARCH対決:中央大理工学部VS法政大理工学部

 今回の比較対象は、MARCHの中のライバル校として知られる、中央大と法政大。その中で、両校の「理工学部」に合格した場合、どちらに進学するのが良いかという観点から比較していきたい。


※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。
 また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。


「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値単位数値年度中央大学
理工学部
法政大学
理工学部
大学全体の学部生数(人)大学20152508027110
学部の学生数(人)学部201541012309
入試難易度(河合塾)学部201657.555
入試難易度(駿台)学部20165348
入試難易度(ベネッセ)学部20166764
入学者数(人)学部2016899549
競争入試での入学者(人)学部2016564405
競争入試の割合(%)学部201662.70%73.80%
入試方式の数(競争入試)学部201534
現役入学者の比率(%)学部201678.375

 入試難易度は3社とも中央大理工学部が優位の数値となっている。
 ただし、偏差値操作の要素としてみなされる「競争入試の割合」は、中央大理工学部が高い。それでも、中央大学理工学部の方が入学定員も多いため、差し引きゼロで、予備校が出している難易度通りとみていいだろう。
 (MARCHクラスの大学では、競争入試(一般入試、センター試験利用入試)で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多い。その意味で、競争入試で入った学生の割合が多いほど優秀と言えるのだが、競争入試の割合を高くすると、間口が広がってしまうことで入試偏差値が下がる恐れもある)
 したがって、「入学時点でどちらが学力が高い学生を集めているか」は、中央大学理工学部が上とみていいだろう。


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値単位数値年度中央大学
理工学部
法政大学
理工学部
4年間でかかる学費(万円)学部20156361,187
学生還元率(%)大学201535.70%38.00%
奨学費(円)大学20151,245,994,977994,270,147
学生一人当たりの奨学費(円)大学20154968136675
卒業率(%)学部201482.583.6
最寄駅の平均家賃(万円)20167.5~84.5~5

 4年間でかかる学費については、法政大学理工学部の方が「最大値」(機械工学科航空操縦学専修)を示しているため、単純比較ができないほどの差になっている(学科や専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい)。
 なお、学生還元率はやや法政大が高く、一人当たりの奨学費は逆に中央大が多い。「学生が払った学費をどれだけ学生のために使っているか」という観点からは、互角であろう。
 また、キャンパス周辺の家賃を考えてみてると、法政大の方が安く、一人暮らしのコストは法政大の方が安くなるだろう(大学と住居が近ければ利便性も高く、充実した学生生活になる可能性が高いという考えからこの家賃相場を比較している)。
 留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、ほぼ互角の数字である。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値単位数値年度中央大学
理工学部
法政大学
理工学部
キャンパス学部2016後楽園【都市型】小金井【郊外型】
1年以内退学率(%)学部201410.9
4年間退学率(%)学部20144.74.3
入学者の地元占有率(%)学部201632.431.5
大学全体の首都圏出身比率(%)大学201556.161.6
女子入学者の割合(%)学部201623.213.5
大学全体の女子学生数(人)大学2016906410509
大学全体の男子学生数(人)大学20161575718067
大学全体の女子学生比率(%)大学201636.50%36.80%
女性ファッション誌登場人数(人)大学20112386
受入留学生数(人)学部20156525
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20161.60%1.10%
長期留学派遣学生数(人)大学20158572
長期留学派遣の割合(%)大学20151.40%1.10%
ST比(人)学部201522.230
専任教員数(人)学部201518577
一人当たり貸出冊数(冊)大学20154.87.4

<キャンパスの立地>
 まずはキャンパスの立地から。中央大理工学部は、東京ドーム近くの後楽園キャンパスで4年間を過ごすことになり、文系と違って「都市型キャンパス」である。
 一方の法政大学理工学部は、JR中央線で新宿から25分の東小金井駅が最寄り駅で徒歩15分の場所にキャンパスを構えている。交通の便はあまり良くないが、「田舎」というほどのキャンパスでもない。周りは住宅街であり、静かな学習環境である。
 キャンパスの立地については、アクセス面を加味すると、中央大に軍配が上がるだろう。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、ほとんど両者に違いはない。
 なお、大学通信社による2016年度「面倒見が良い大学」ランキング(進学校の進路指導教員にアンケートを行って選定)においては、、中央大が20位(29ポイント)、法政大が18位(35ポイント)となっており、高校教育の現場においては、僅差ではあるものの法政大の方が「面倒見が良い」という印象があるようだ。

<学生の属性>
 次に、学生の属性を比較していくと、女子学生比率については、中央大理工学部の方が10%ほど高い。
 また、地方占有率(東京都出身)についてはほとんど変わらない数字となっている。
 なお、留学生比率については、中央大理工学部の方がやや高く、国際色豊かな教育環境という意味では、中央大理工学部がやや優れているといえる。
 上記を総合すると、「多様な価値観に触れる(ダイバーシティ)」という観点では、中央大理工学部がやや優れているといえるだろう。

<教育面>
 次に、教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、長期留学している学生の割合を見ると、中央大に軍配が上がりそうだ。ただし、理系に限ってはこれよりも低い数値となることが推測されることから、あまり判断材料にはならないだろう。
 専任教員一人当たりの学生数(ST比)は、中央大理工学部が低く、「少人数教育」の環境としては中央大理工学部が優位といえる。
 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、法政大が多い。この数字は逆に中央大が低すぎであり、中央大のマイナスポイントであるだろう。

 実際の教育効果については、比較が難しいが、大学通信社が進学校の進路指導教員に「進学して伸びた大学」と「進学して伸び悩んだ大学」をアンケートしている。
 2014年10月に実施したアンケートでは、「進学して伸びた」と答えた数は、中央大が19人、法政大が6人、一方で「進学して伸び悩んだ」と答えた数は、中央大が10人、法政大が17人であり、高校側の印象では、中央大の方がより生徒を伸ばしてくれると感じているようだ。
 その他の比較としては大学通信による「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)において、中央大は28位(17ポイント)、法政大は47位(11ポイント)となっており、同じように、中央大がやや優位のようだ。

 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、やや中央大理工学部が優勢のような印象を受ける。


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値単位数値年度中央大学
理工学部
法政大学
理工学部
主要企業400社への就職率(%)大学201623.322.5
卒業生数(人)学部2015922488
進学者数(人)学部2015365129
進学率(%)学部201539.60%26.40%
公務員就職者数(人)学部2015585
公務員就職比率(%)学部20156.30%1.00%
警察官就職者数(人)大学20152857
国家公務員総合職(人)大学2015486
CA採用数(人)大学20141320
国会議員の数(人)大学20153111
上場企業の社長数(人)学部2006数値なし(5人以下)数値なし(5人以下)
社長の数(人)大学201585346971
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.340.26
上場企業の役員数(人)学部200663数値なし(46人以下)
上場企業の役員数(人)大学2015969341
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0390.013

<大企業に入りたい>
 さきにお断りしておきたいのは、今回の比較は「学部」の比較であるということだ。理系の場合は、大学院に進学する割合が高く、学問分野を生かした職業に就きたければ、学部卒業段階では卒業という選択肢になならない。したがって、ここでの就職とは、文系と同じ様なジェネラリスト・総合職社員としてのことを指しているとご判断いただきたい。
 大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、中央大がやや高い。ただし、その差は大きな差ではない。
 いわゆる「学歴フィルター」の対象としては、中央大理工学部と法政大理工学部で差がつくことは考えられないため、いかに充実した(中身のある)大学生活を送るかによって、大企業に就職できるか・できないかは変わってくる。大企業に就職したいからという理由でどちらかの大学を選ぶという判断材料にはなりえないだろう。

<大学院に進学する>
 大学院進学率は、中央大理工学部の方が高いため、大学院進学を考えているのであれば中央大学理工学部がいいかもしれない。
 また、仮に他大学の大学院に進学することを想定している場合は、中央大理工学部の方が都心部にあるため、他大学への選択肢を広げやすいということは考えられるかもしれない(他大学へ進学しても、通学の便がさほど変わらず、引越しなどが発生しないことが想定されるため)。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、中央大理工学部が圧倒的に高い。公務員になることを想定しているのであれば、中央大理工学部を選んだ方が良いかもしれない。

<主要な就職先の比較>

中央大学
理工学部
法政大学
理工学部
東京都庁スズキ
東京都教育委員会NECソリューションイノベータ
SCSK日立システムズ
日本電気メイテックグループ
キヤノンNECネッツエスアイ
日立システムズソフトバンクグループ
東日本旅客鉄道ANAエアポートサービス
東日本電信電話ANAウィングス
千葉県庁バニラエア
神奈川県横浜市役所東日本旅客鉄道

 主要就職先については、中央大理工学部の公務員比率が高い分、就職先にもそれが表れている。あくまで、主観的なイメージではあるが、就職実績については中央大学理工学部の方がやや優位の感がある。

<出世した先輩の多さ>
 双方とも名門大学であり、上場企業の役員などを「大学全体」として数多く輩出している。また中央大理工学部については、「学部単体」でも相当数の役員を輩出している。よって全体としては、中央大に軍配が上がる(大学全体としての役員輩出率は中央大が3倍ほど高い)。半ば都市伝説として語られることも多い「学閥」であるが、もし存在するのであればその大学の出身者は有利になる。一方で「学閥」が実際はないのであれば、先輩たちが実力で出世していったということにもなり、その大学の出身者が周りから高く評価されていることにもなる。そういった意味では、中央大学理工学部の方がやや有利と言えるかもしれない。

<上位校との差について>
 「研究職」として一流企業への就職を望むのであれば、中央大や法政大の研究科(大学院)より、東大や東京工大、早稲田、慶應など、もう一つ上のレベルの大学院に進学することをおすすめしたい。文系の「学歴フィルター」とはやや異なるが、やはり超一流企業はそれらの大学からの採用実績が多くなる。学部生の4年間でしっかり勉強して、それらの大学院にぜひチャレンジしてほしい。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値単位数値年度中央大学
理工学部
法政大学
理工学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学2015596,960446,556
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20152416

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。ここで比較するデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
 この数値を比較すると、中央大が優勢となっている。
 別の比較材料としては、大学通信社による2016年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、法政大が12位(54ポイント)、中央大はランク外(21位以下)と、法政大が勝っている。

<まとめ>
 以上、中央大理工学部と法政大理工学部を比較してみてきたが、全体の印象としては中央大理工学部の方が優位と感じられる。実際に両方に合格した人の選択を見てみても、中央大理工学部に進学した人が94%、法政大理工学部に進学した人が6%(サンデー毎日2014年7月20日号より)という顕著な結果が出ている。
 しかし一方で、強調したいのは、「理工学部」は、学問分野が細分化されているため、どこで学ぶかよりも「何を学ぶか」が重要であることは忘れてはいけない。
 理系の研究は「人(教員)」に張り付いているケースが多く、教員の大学間移籍も文系と比べて活発である。自分の学びたい学問分野の第一人者が片方の大学にしかいなければ、文句なしにそちらの大学を選ぶべきである。「理工学部」を選ぶ以上は、そういった観点も含めて、大学選択を行っていただければ幸いである。