『明日の約束』の毒親 | 星は海、そして虹

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ハト井上真央さんが

 スクールカウンセラー 藍沢日向役を演じている

 テレビドラマ  『明日の約束』

 設定や 登場人物の細かなやりとりの中に

 リアリティーを感じられる部分が わりとあって

 見ています

 

 とは言っても  ミステリードラマなので

 始まって早々に  登場人物の死や 

 警察沙汰の事件が起こりますが

 登場人物の家族(特に母子関係)の描写が

 かなり 丁寧だと思います 

 

 

イルカ1『明日の約束』には

 毒親が2人  出てきますね

 仲間由紀恵さん演じる 男子生徒の母親

 手塚理美さん演じる  主人公(日向)の母親です

 

 公式サイトの相関図では

 仲間さんは 息子に“過干渉な” 母親となっていて

 教育委員会に勤める夫との関係は冷めていても

 その権力だけは利用しつつ

 息子に起きた事すべての原因は

 学校にあると主張し  訴えようとします

 

 手塚さんは  娘(日向)を “縛り付ける” 母親

 日向が小さい頃から

 自分の思い通りにしようとしてきました

 (その手段の1つが

 “明日の約束” という交換日記だったのですね)

 

イルカ子どもへの干渉、支配は  どうして起こるのでしょうか

 子どもへの愛情が深すぎるから、、、と

 毒親に同情する見方も できるかもしれません

 

 でも

 例えば 10代だった日向へ向けられた

 手塚さん演じる母の  このようなセリフ

「男の子へのラブレター ママが捨てておきました 

 あんないやらしいもの!  

 もうママを裏切らないでね  内緒にしないでね」

 

「あんたには似合わない ふつりあいなんだよ!

 (と、日向の大切な万年筆を折って捨てる)」

・・・あまりにも  ひどいですね涙

 

 成長した娘が抱いた恋心を  見守ることなく

 “いやらしいもの” と否定し 

 恋をすることが 母親への裏切りになると主張し

 内緒にするなと “約束” させています

 

 万年筆を捨てるだけでなく

 “あんたには 似合わない” と

 娘の自尊心も一緒に ボロボロにして

 ゴミ箱に捨ててしまっています涙

 

 仲間さん演じる母親は

 息子を “殺したのは学校だ” と

 一方的に決めつけていますね

 

 息子が死んでしまう前から

 学校生活に入り込み 

 学校側にも  息子にも多くの指示をしていました

 

 子ども自身が成長しながら  

 社会と関わりを作り  生きる世界を拡げ

 様々な喜怒哀楽を体験し  知恵を深めていく

 その様子を 見守るという姿勢に欠けていました

 

 

イルカ2人の毒親に共通しているのは

 “相手の立場に立って考えられない”

 “相手の喜びや傷付きを想像して自分をコントロールできない”

 という部分ではないでしょうか

 

 自己中だとか  ワガママだとか

 性格の問題であれば  自分で気付いたり

 人から指摘されて  変える努力をしてくれるかもしれませんが

 忠告されても  聞く耳を持たない、

 忠告した人を嫌って関係がこじれるか終わってしまう、といった場合は

 性格ではなく   人格の健康度のお話になります

 

 このドラマでの設定がどうなのかは  わかりませんが

 最近 注目されている  毒親という言葉の

 “毒” の要因を理解するには

 やはり

 境界性人格構造(人格水準)についての見方

 役立つと思われます

 (境界人格障害、とは厳密には異なります)

 

 境界性水準の人格の特徴の1つに

 投影同一視 というものがあります

 相手の感情や考えは  自分のものとは違うのだ、という

 当たり前の感覚を持てなくて

 相手と自分との境界線が曖昧になってしまう現象です

 自分はこう思うけど、あなたはどう?

 とならず

 自分はこうしてほしいんだから  あなたも当然そうすべきでしょ?

 と 一方的に思いこんだり

 自分が不安や怒りを抱えているのに

 相手が不安そうに  あるいは怒っているように見えてしまい

 それに反応してしまいます

 そういう状態の親と対峙させられた子どもは

 違う、そうじゃなくて、と 言いたくても

 伝えることができず 

 がんばって言葉にできたとしても  多くの場合

 理解してもらえません

 言い合いが続くか  あきらめるしかないという状況になりがちです

 

 それから  スプリッティングという特徴もあります

 all or nothing、0か100か、という言い方も似ています

 

 この2つは  どちらかだけというより絡み合って

 毒親の言動として  現れることがあります

 

  オセロのコマのように 

 “白(=good)”  と “黒(=bad)”  どちらかしかなく

 goodであれば とても幸せで満足だけれど

 badであれば  強い不安や怒りを感じてしまいます

 スプリッティングが起きると  葛藤や迷いを感じないため

 言動は極端になり

 投影同一視が起きると  相手の立場になることができません

 

 さらに

 娘の成長を喜べない母親、

 娘に無関心 あるいは冷淡な母親の心には

 envy が起きていることもあります

 envy(エンビィ)は 嫉妬の強力バージョンで

 母親自身が 女性として強い劣等感を抱いていたり

 成育過程で辛い体験を多くしていたりすると

 大らかな気持ちや態度で  娘の成長を見守ることが苦しくなってしまうのです

 

 成長し 自立して輝いていく娘を見ることが辛く、

 失敗しうまく生きれなくて 自分を頼りにしてくる方がいい(親の自尊心が満たされる)、

 そうなると  関係はギクシャクしたり

 不健全な共依存関係が形成されてしまう可能性が生じます

 (父親と息子の関係性でも そういった可能性はありますね)

 

 親子関係って

 こじれると 本当に難しいと思います汗

 

 

イルカ1息子へは過干渉だけれど  娘へは無関心という

 仲間さん演じる母親のように

 複数の子どもたちへ  goodとbadが投影されて

 育て方が極端に違ってしまうこともあります

  

 少し話は飛びますが  デイブ・ペルザー氏の 自伝的小説では

 スプリッティングがつくりだす 凄まじい状況が描かれています 

 

 

 この小説の  子を虐待する母親は

 毒親を通り越して  誰が読んでも心を病んでいると感じると思いますが

 自分を正当化するために  恐ろしく智恵が働き  

 外から知られないように振る舞えるなど

 現実検討力がある程度維持されているところが

 本当に残酷で 人格の病の恐ろしさに胸がつぶれます

 

 でも  毒親というのは

 急に そうなるわけではなく

 そして境界水準と思われる人が 100%悪い人ということでもありません

 その  親になった人も  かつて

 虐待や心理的トラウマを抱えさせられていることが多いのです 

 

 生き抜くために 潜在意識が作りだした構造かもしれないんですね

 

 私が相談室やセラピーで出会ってきた

 児童・生徒の多くも

 やはり 世代間伝達を背負っていました

 

 そして  その子どもたちの多くが

 愛されているのか 虐待されているのかわからない

 苦しい状況の中にいて  心は悲鳴を上げているのに  同時に

 親を必死で理解しようと  そしてかばおうとしていました

 (その理由は いくつかあって

 ただ純粋に 子どもは親のことが好きで  頼りにしているからということもありますし

 母子の心が融合していて  親を拒否できないという場合もあります)

 

 カウンセラーやセラピストは

 親に対して  時に分析や忠告をする人だと

 思われていることが多いので

 親子同席面接を  最初は怖がるこどもたちも少なくありませんでした

 

 見立てをきちんと行い

 子を導く親として期待し  “正しいこと” を説明したり忠告して大丈夫なのか

 身体は大人でも  傷付いた子どもの心のまま 責められたくなくて怯えているのか

 想像して  言動を調整するのは  セラピストの責任です

 正義や知識を振りかざして  もし追いつめるようなことをしてしまえば

 自宅という密室に戻った親子が  

 もっと恐ろしい体験を重ねしまう可能性があります 

 

 話は ドラマに戻りますけれど

 できるだけ冷静に  相手の状況を確認し

 わりと淡々とした表情で

 大切なことは  はっきりと伝える日向の言動は

 共感できる部分が多く安心します汗

 

 (今までも 臨床心理士を扱ったドラマはありましたが

 サスペンスを狙いすぎていたり

 ストーリーがあまりに単純すぎたりして

 ありえない汗 ってなることが多かったので・・)

 

 視聴率も大切だと思いますが

 毒親など シリアスなテーマが他人事ではない人たちが抱える

 心の重さや  生き辛さや孤独が できるだけほどけて

 前を向くきっかけになるような展開に

 今後  なってくれたらいいなぁと 思います流星3 

 

キラ  イルカ1  キラ  イルカ  キラ  イルカ1  キラ  イルカ  キラ

 

 虐待、DV、アダルトチルドレン・(AC傾向)、共依存・・・

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 心の闇を作らない育児(コミュニケーション法を含みます)

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