ついにマッチサルもローンチを迎えました。
本記事をお読みの皆様につきましては、
今後ともますますご贔屓にして頂けますと幸いでございます。

さて、月日は流れ8月がやってきました。
Jリーグも折り返し地点を過ぎ、いよいよ上位も下位も
今まで以上に必死の戦いが続く季節になっていきます。

本日は、先日のJ1第20節、サガン鳥栖vs清水エスパルスにて、
ボールパーソンの行為を巡るちょっとした事件が起こったらしいので、
これを機にボールパーソンのあり方について
問題提起をしたいと思います。

サガン鳥栖vs清水エスパルスにて起こったと言われているのが、
清水のGK六反選手が、ボールパーソンに向かって
「何回やってるんだ、下手くそ」と暴言を吐いたというものです。
これはサガン鳥栖のサポーター(と思われる)人々の証言が元なので、
きっちり裏を取ったものではないことを予めご了承頂きたいのですが、
どうやらボールパーソンによる遅延行為があったようで、
それを六反選手が咎めた、というわけのようです。
六反選手の言動を「暴言」と捉え、非難する声がありました。

ボールパーソンを巡る事件で記憶に新しいのは、
J2の千葉vs徳島戦で起こったものでしょう。
徳島の馬渡選手が、スローインの際に
ボールを渡すのを遅らせたボールパーソンに対し、 
怒りをあらわにしながらボールを投げ返し、
その後肩を小突く、というものでした。

動画はこちら


馬渡選手の行為はプロフェッショナルとして、 多くの人、特に子供達に夢を与える立場として 決して許されないことであり、 Jリーグの公式戦であのような行為が起こってしまったことについて、 心の底から残念に思います。 馬渡選手には主審よりレッドカードが提示され、 その後2試合の出場停止処分を受けました。 妥当な処分だったと思います。

しかし一方で、ボールパーソンの行為対して
焦点が当たらなかったことも残念に思いました。
「良い大人が子供を恫喝し、小突いた」という
わかりやすく叩きやすい行為がクローズアップされ、
ボールパーソンによる遅延行為については
全く議論の対象になりませんでした。

個人的にはボールパーソンの行為は意図的だったと思います。
素早くリスタートすればゴールの可能性が高いシーンでした。
サッカー経験者として、意図的でないわけないと感じました。
どちらのボールかよくわからなかったから
渡さなかった、との意見もありましたが、
どちらのボールかを判断するのはレフェリーであって、
ボールパーソンであっていいわけがありません。
アウェイ選手の要求に従わなかった時点で、
意図的だったと言わざるを得ません。
もちろん、だからと言って
中学生を恫喝したり小突いて良い理由にはなりませんが。

しかし、今回の記事の目的は、
個別の事象の裁判をすることではなく、
タイトルの通り、「ボールパーソンの在り方」という
大きな観点で論じることです。
ボールパーソンの遅延行為に由来するトラブルというのは
世界中で起こっています。
選手に自制を促すのは簡単ですが、
多くの場合、プロスポーツ選手というのは、
名前も顔も知れている分、匿名の我々よりも相対的に人格者です。
もちろん、例外はありますが。
そんな選手たちが思わず声を荒げてしまう状況について、
ボールパーソンの振る舞いには本当に問題はないのでしょうか。

そもそも、ボールパーソンの役割とは何でしょうか。
2017明治安田生命J1・J2・J3リーグ戦試合実施要項に記載があります。

第 36 条〔係 員〕
(1) ホームクラブは、試合実施を円滑に進行するため、次の各号の補助係員をおき、必要な業務を行わせる。
① 場内外の警備・案内要員
② 場内放送要員
③ ボールパーソン
④ 担架要員(8名、担架を2台用意しておくこと)
⑤ 公式記録員(原則4名以上)

実は規定があるのはこれだけです。
ボールパーソンはホームチームが用意する人員で、
慣例的にホームチームのアカデミーの選手が
充てがわれることが多いです。
もしくは地域の少年団、学校のサッカー部の選手などです。
ひと昔前までは「ボールボーイ」と呼ばれていましたが、
最近は性差別に敏感になっているからか、
ボールパーソンと呼ばれます。

ボールパーソンにアカデミーの選手を充てがうのには
いくつか理由があると思います。
一つは人件費です。おそらくボールパーソンはボランティアかと。
しかし、ボランティアだとしても、プロの試合を間近で見れ、
実際に運営に携われるということは、
未来のプロ選手たちにとって、メリットの大きさは計り知れません。
これが二つ目の理由です。

しかし、先の例にも挙げたように、ボールパーソンの行為は、
ともすれば試合の結果に大きな影響を及ぼします。
ボールを渡すのを数秒遅らせるだけで、
ホームチームのピンチを(かなりアンフェアなやり方で)救うことができます。
そういった重要な役割を中学生くらいの子供達に任せるのは、
(人件費削減の側面があるとはいえ)未来のスター選手たちに
プロの試合を間近で見せてあげたい、という善意に他なりません。

では、ボールパーソンとはどうあるべきなのでしょうか。
先の鳥栖vs清水戦では、
六反選手の言動を非難する鳥栖サポーターの声の中に、
「ホームアドバンテージなんだから当たり前」というものがありました。
しかし、これは明らかに間違っています。

そもそもボールパーソンによる遅延行為が
いわゆる「ホームアドバンテージ」に含まれるというコンセンサスが存在しません。
私の知る限りヨーロッパと日本にはありません。
なぜならめったに見かけないからです。
めったに見かけない事象がコンセンサスなわけがありません。
私は25年間清水エスパルスのサポーターをやっていますが、
清水エスパルスの試合では一度も見たことがありません。
であれば、以前アウェイでの試合で被害を受けたということが前提になりますが、
具体的にいつ被害を受けたという言及は見られませんでした。

ボールパーソンによる時間稼ぎの是非については、
2ステージ制やJ1昇格プレーオフを嫌う
フェアネスを第一に重んじるJリーグファンの立場からすると、
解決策は以下の2つに1つです。

①ボールパーソンの時間稼ぎをホームアドバンテージとして認め徹底的に推奨する
②非紳士的行為として禁止する

①はホーム&アウェイの2試合の中でフェアネスを担保するという考え方、
②は1試合の中でフェアネスを担保するという考え方です。
フェアネスが大好きなJリーグファンの立場で考えると、
これ以外の解決策は無いはずです。

では、どちらの方が良いでしょうか。
私は絶対②が良いです。

サッカーを愛する者として、スポーツを愛する者として、
①のような試合を見たいでしょうか。
ボールパーソンに、アカデミーの中学生に、
遅延行為をさせることを作戦として組み込むような試合をして、
プロスポーツとして胸を張れますか?世界で戦えますか?
未来の日本代表になるかもしれない中学生に
そんなことをさせたいですか?

①を支持する人と私では見たいものが違うようです。
①のようなものを見たい人はそういうものを楽しめばいいと思います。
私はそれをサッカーだと、スポーツだとは思えません。
私はサッカーを、スポーツを楽しみたいと思います。

もちろん、先の動画の実況の方の仰るように、
試合は選手だけで作るものではありません。
ボールパーソンを含めた様々なスタッフがいることで成り立っているし、
そのことに対して感謝を忘れてはいけません。
しかし、だからと言ってボールパーソンを務める中学生に、
ホームアドバンテージとしてアンフェアなやり方で
試合の結果に影響を与えるような行為を許して良いとは思いません。
円滑な試合運営が担保されないのであれば、
ボールパーソンにアカデミーの選手を使うことも考え直す必要があるでしょう。

ちなみにサガン鳥栖のボールパーソンには前科があるようです。

Jリーグトラブル今度は徳島 ボールボーイに乱暴したワケ

上記の記事にこんな記載があります。

ボールボーイと選手をめぐっては、16年5月29日にサガン鳥栖のホーム(ベストアメニティスタジアム)で行われた鳥栖対浦和レッズ戦で、アウェーの浦和MF柏木陽介が声を荒げる場面があった。0対0で迎えた後半アディショナルタイム、浦和がCKを獲得したが、ボールボーイがボールをすぐに渡さなかったため、時間稼ぎと思ったのか柏木が激高。「お前良いプロになれるのかよ」といった言葉をぶつけるのが中継のテレビ音声に拾われていた。

鳥栖サポーターの中には「うちは初めてじゃ無いし」という声もありました。
後者を支持する私は、こういう声にも耳を傾け、
アウェイチームの選手に苦言を呈される前に、
試合運営が円滑に進むように、ホームチームの責任で
ボールパーソンへの教育をきちんと行うべきだと思います。

ボールパーソンの在り方について、
そしてボールパーソンによる時間稼ぎの是非について、
皆さんはどう思いますか?