ちわきの俳句の部屋

メカ音痴おばさんの一念発起のブログです。
人生の後半を俳句にどっぷりと浸かって、…今がある。

大暑

2017年07月23日 | 俳句

 今日は二十四節季の一つ、「大暑」です。「小暑」の後、暑中に入り、その15日目が大暑、暑さが最も厳しい盛夏の時節となります。ところで、今日の「全国最高気温ランキング」を見てみたら、もうビックリ!です。ナント山口県の萩市が1位で、35.6度。暑いはずですね。

 次の句は、私の歳時記の最初に載っている句です。

   兎も片耳垂るる大暑かな   芥川龍之介

 ウン?この句どう読めばいいのかしら…ちょっと迷って「兎」に他の読み方がないか調べてみました。以前まだ私が駆け出しの頃の話。選句で採らなかった理由を聞かれ、「この句は字余りだから採りませんでした」と言って、恥を掻いたことがありましたから、おかしいと思ったときはまず自分を疑うようになりました。この句も同じです。龍之介ともあろうお方が…と。でも、この句は〈うさぎもかたみみたるるたいしょかな〉でいいんです。要するに、上五が4音で字足らずの句なんです。

 この句、調べてみると、初案は〈小兎も片耳垂るる大暑かな〉だったのが、たとえ字足らずでも「小」なんて言葉は取るべきだと友人から強く主張され、龍之介もしぶしぶ折れて掲句のようになったらしい。でもやはり彼の言語感覚からすると、どうしても落ち着かなかったのでしょう、後に前書として「破調」と入れたそうです。

   芥川龍之介仏大暑かな   久保田万太郎 

 この句は〈あくたがわりゅうのすけぶつたいしょかな〉と読みます。龍之介は、昭和2年(1927)の35歳の時、7月24日の未明に服毒自殺をしました。大体毎年7月23日頃が大暑ですから、この暑さの中で親交のあった龍之介が仏になったことを悼んで詠んだ弔句なんです。

   水洟や鼻の先だけ暮れ残る

 自殺直前に書いた色紙のこの句が龍之介の辞世の句となっています。短編小説『鼻』を夏目漱石に激賞されて、作家への道が開けたことを思えば、何か因縁的なものを感じますね。龍之介は生涯漱石を尊崇していたそうですから。でも、この句の「水洟」は冬の季語なんですよ。どう考えても真夏に冬の句を詠むのはおかしいでしょう。もしかしたら龍之介は2年ほど前から自殺を考えていたそうですから、この句も前に作っていて死ぬときに書き残そうと思ったのではないかしら? ちなみに、忌日は俳号が我鬼なので「我鬼忌」とか、晩年の作品『河童』から、「河童忌」とも言います。

 我家のテンはもうかなりの年なので夏バテ、食べたものを吐いたりして…どこか涼しいところを見つけて隠れています。これは他所の猫チャン。〝我が輩はまだ若いんだから…〟と、この暑い中を出歩いていますよ。

  

  

 

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