前回の記事ではハルジオンの曲作りのきっかけと、天体観測への反省から生まれたサウンドメイキングについて紹介しました。今回はサウンドメイキングの続きと歌詞について紹介します。
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ハードコアを意識した直井のベース
ハルジオンのベースラインをつけるにあたって、ベーシストの直井由文さんはまずハードコアのゴリゴリの音をイメージしました。そして藤原さんの意見を尋ね、音作りについて意見をぶつけ合います。
直井 – ハードコア並みのギャリギャリ感を出したいなと思った。それはなんで買っつうと、この曲を聴いた時に、俺はそのイメージしかなかったから。作りたいなっていう、そういう直感しかないから。
出典:ROCK’IN ON JAPAN 2001.10
イメージを大切にしている部分は今も変わりませんが、直感で弾こうとしている部分は今と異なり若さを感じます。結局、ゴリゴリの音を表現するとただのパンクサウンドになるのがいやで、3時間もベースアンプのイコライザをいじり音作りにこだわりを尽くします。
直井 – なんかね、爆発っていうイメージだったから。でもそうすると、パンクになっちゃうから、そうじゃなくて、爆発の中に綺麗な繊細さっていうの出したくて。
出典:ROCK’IN JAPAN 2002.04
パンクさを避けるためにAメロの変わったフレージングが生まれます。フレージングについては、セッションを通して培われていいきました。
直井 – そんな考えずにみんなで何回か合わせて、似たようなものが俺と升の間で流れたから、それを言葉交わさないで追求していって、レコーディングに。
出典;BUMP TV 第18回「ハルジオンについて語る」
ユグドラシル前の<エゴで弾いている>直井さんのベースライン全盛期という印象ですね。私はこの楽曲のゴリゴリに動くベースラインがすごく熱くて好きです!後にエゴで弾くことをやめますが、私は素直に直井さんの動くベースラインが好きです。
升さんとのやりとりについて、わざわざ「言葉を交わさず」なんて付けてるところが若いなーっていう印象です(笑)
6時間かけてレコーディングした升
ストイックな制作作業で有名なドラムの升秀夫さん。レコーディングでは昼の12時から4時間音作りを始め、午後の4時から夜10時まで叩き続けました。
升 – 途中で終わりそうだからと思って俺の頼んだたぬきそばが、(食べれずに)水面から浮き出るくらいのびてた(笑)
BUMP TV 第18回「ハルジオンについて語る」
ファミレスで友人の前でハルジオンと名付ける
音楽的な構築は割とスムーズにいき、歌詞のないオケの制作をしている時期に、友人とファミレスに行きます。そこでまだ歌詞を書けていないにも関わらず「ハルジオン」とタイトルを付けました。
藤原 – だからオケの雛形は割と早く上がったんですよ。その時からなんの根拠もなく”ハルジオン”てタイトルがいいって思ってて(笑)。俺はファミレスで誰かにボヤいた覚えがある。『俺、”ハルジオン”がいいんだよ』って。
ROCKIN’ ON JAPAN 2002年10月号
なんとなく花の名前をタイトルにしたいと考えていた藤原さんは、「ポピュラーでなくても美しいものはあるんだ」という気持ちから、あえて簡単に思いつくような花の名前は避けました。
藤原基央とタイトル
藤原さんは勢いでタイトルをつけることがあります。アルバム「jupiter」のタイトルもレコーディング疲れで、自宅に車で送ってもらっている最中に、聞かれて「jupiter」とポンと考えずに答えた藤原さん。「宇宙飛行士への手紙」も元々はアルバムタイトルの予定でしたが、新曲のタイトルを聞かれてポンと名付けました。
5ヶ月かけて書いたハルジオンの歌詞
曲とタイトルがスムーズについても作詞には時間がかかりました。書けずに悩んでいたある日、藤原さんは、ブリキのジョウロが部屋を転がる夢を見ます。それは実にシュールだったといい、そのまま歌詞を書きました。
藤原 – すごいシュールな絵だったよ!で、目覚めて、”ハルジオン”の曲作ってる時に、ノートにまずタイトル、ハルジオンって書いてたの。それで”ブリキのじょうろ”って下に書くだけで。そこから始まった(笑)
ROCK’IN JAPAN 2001.10
藤原さんは「揺れるもの」を書こうしていました。風に吹かれても、揺れる姿、枯れてもまた咲く姿にインプレッションを受けたそうです。タイトルはハルジオンになりましたが、揺れるのであれば<竹>でもよかったらしいです(笑)
俺は”ハルジオン”がいいんだよってずーっと言ってて。なんか、揺れてたいな、揺れてるし、でも折れねえし、みたいな。どんどん咲くし、どんどん枯れてくし、みたいな。折れたら枯れるし、でもまた咲くし、みたいな。そういうのいいなあと思って。俺ん中ではもうGOサイン、完璧ですね。
ROCKIN’ ON JAPAN 2002.10
そのハルジオンのモチーフは見事に歌詞の中に投影されています。
ほら ここに 揺れる 白い花
僕は気づかなかった 忘れられていた名前
僕の中で 揺れるなら
折れることなく 揺れる 揺るぎない 信念だろう引用;「ハルジオン」作詞・作曲 藤原基央 (2001年)
揺れる、揺れないの花の姿を最終的に<揺るぎない>に繋げるところが、藤原さんの詩人のセンスを体現していますね。
ライブ演奏記録
演奏回数 98回 | 演奏率 31.5% |
* 2017年 PATHFINDER以前まで集計
実はハルジオンはこれまでほとんどのツアーで演奏されている曲です。GOOD GLIDER TOURとWILLPOLIS 2014以外では、レギュラーセトリもしくはアンコールで演奏されてきました。
ライブ版では演奏が長くなっている
原曲では間奏がなく1番のサビの後にすぐに2番にいきますが、ライブでは息継ぎが辛いようで間奏が設けられています。アウトロのダダダダンというリフが入っています。ライブ初披露時(2001.09.14 surf porkin’ 大阪BIG CAT公演)からこのアレンジが加えられていました。
韓国で人気!?
韓国ではハルジオンが人気だという情報をどこかで見たことがあります。ネット情報か、きちんとしたメディアか忘れましたが、メンバー本人達も自覚しているようです。
PEGASUS YOUの後の韓国公演、run rabbit runの後の韓国公演、ホームシップ衛星の間の韓国公演ではハルジオンが演奏されています。
以上、ハルジオンについて紹介しました。今後のツアーでもっとたくさん聴けるといいですね。