カップリング曲歌詞・楽曲解説直井由文

楽曲解説:彼女と星の椅子 vol.2 – スターになりたい彼女とチャマ

カップリング曲

前回の記事では、直井さんの作った初めてのオリジナル曲(曲名不明)について説明をしました。今回はその曲が「彼女と星の椅子」というタイトルが付けられ、歌詞が書かれるまでを説明します。




 

直井が自分で歌詞を書くという条件でOKした藤原

インディーズ時代の未発表曲を再録することにあたり、歌詞は日本語で書き直すことになりました。ボーカルの藤原さんは、まずチャマさん本人に歌詞を書くよう求めます。

 

直井 – とりあえず曲を聞いてもらって、藤くんも覚えていて。ただ条件としてなんでもいいから、自分がこうしたいんだって思ってる歌詞をイメージでもいいから書いてみてって言われて。

MUSICA 2008.07

 

こうしてチャマさんは、その日のうちに(!)歌詞のプロトタイプを書きます。それを藤原さんに見せて推敲し、音楽的な部分も話し合って作り直しました。

 

藤原 – 『どこを伝えたいの?』ってチャマと頭を合わせながらね。『いやここを伝えたいんならこっちを消して』『いや、それだけは入れたいんだ』みたいな。

ROCKIN’ ON JAPAN vol.333

 

彼女と星の椅子の歌詞のクレジットは藤原基央となっていますが、伝えたい主題は直井さんによって作られました。

 

歌詞の中の「彼女」 = チャマ自身

テレビの中 唄うスターを見て
煙とともに皮肉を吐いてる

本当はスターになりたい 君が
何も出来ず 椅子に座ってる

彼女と星の椅子 / BUMP OF CHICKEN

 

スターになりたい「彼女」はなにも行動をせず、スターに向かってどうのこうの批評しています。誰にも経験ありますよね。夢を追っている人を馬鹿にしたり、うまくいっている人を恨んだり。自分の人生は自分で行動しないと何も始まらないのに。すごく共感できます。

 

この「彼女」とはチャマさん本人を指しています。カッコ悪い自分、そして似たようなことをしているカッコ悪い友人をみて、反省していたそうです。

 

直井 – ・・・劇かなんかを一緒に見たときに俺が知ったような口を利いてたら、藤くんにキレ気味に『でも、少なくともあの人達は自分のことちゃんとやってるよ』って言われて、その時に、すっげぇ自分が恥ずかしくなったことを覚えてて。

(中略)

みんな今もテレビを見ながら『あいつはどうこう』とか言ってると思うけど。そういうのって、自分は遠いところに置いておいて、そのままどんどん傍観者ばっかりがするような深みにハマっていって。

(中略)

自分に少しでもそういう気持ちがあるんだったら、自分から求めた方がいいよっていう、どストレートな歌。

MUSICA 2008.07

 

なんだか・・・すごく胸に刺さります。私も夢をすぐ諦めてしまいましたが、そのくせに諦めないで続けている友人に対して「どうのこうの」言ってましたね。大人になった今でも、自分はやらないくせに、やっている人たちを値踏みするようなことをしています。すごく、この歌詞いいな、と思いました。

 

直井さん自身も、「俺が!俺が!」というエゴをバンド内で消化するために向き合っていました。絵も描きたい、曲も描きたい、歌も歌いたい。でも全部自分より上手な人が隣にいつもいる。だからこそ、この歌詞を書くことで、「俺だって!」という気持ちを消化しているようにも思えます。きっと無意識のうちにね。




チャマ主導のサウンドメイキング

藤原 – だいたい俺のやることに『すげぇ!』しか言わなくて(笑)で、チャマは音を歪ませたがってたんですよ。

MUSICA 2008.07

 

サウンド面ではチャマさん主導でアレンジが行われて行きました。My Bloody Valentineなどが好きだったチャマさんは、とにかく歪んだ音を求め、升さんのドラムでさえエフェクターをかけて歪ませようとしますが、NGになります(笑)

初めて使われたライトハンド

この曲ではライトハンド(タッピング)が初めて使われました。藤原さんは「こんなのどう?」とアイデアを出して、チャマさんが採用・不採用を判断しました。エモーショナルかつイケイケな直井さん基準のサウンドが楽しめる、とても珍しい楽曲ですね。

 

ライブ演奏記録

演奏回数 27回演奏率 8.7%

・POKISTA21
・NINJA PORKING
・MY PEGASUS

2002年と2003年のツアーで演奏されていますが、それ以外では基本的に演奏されていません。

誕生日前日のライブでサプライズ演奏

2004年のマイペガサスでは直井さんの誕生日前日の仙台公演で直井さん本人に内緒でサプライズ演奏されました。

 

藤原さんはギターの最初のCコードをレコーディングではパワーコード「C」で弾いていました。けれど「音が物足りない・シンプルすぎる」という理由から2003年頃のツアーではパワーコードの「ConG」 [335xxx]で演奏しています。

*藤原さんは2005年のAsian Kung-Fu Generation後藤さんとのラジオ対談で「Cコードが一番嫌い」といっています。

 

さてさて、2回に渡って「彼女と星の椅子」について紹介しました!またライブで聴けるといいですね!




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