面接当日。当のオフィスはバンクーバー中心地グランビルから10分ほど歩いたところにある商業ビルの5階のフロアにありました。そこはかなり変わっている作りのフロアになっていました。中央はフリーのスペースになっており、その中央を囲むようにテナントが入っているような間取りでした。
そのお店はタイマッサージの店と言うよりは治療院のようでした。針や灸、漢方、アロマなど東洋とアジアのもの何でもござれな感じのお店でした。そこで私を待っていたのはタイ系カナダ人のオーナーでした。タイ系だからでしょうか?彼の英語はすごく聞き取りやすかったです。
面接というより雑談から始まり、現在の私の状況を伝えました。そこから私の過去の話にも飛ぶのですが、そこでタイのチェンマイでマッサージの勉強をしていたこと、それから日本に戻りタイマッサージと日本式のマッサージを独自に組み合わせたマッサージで施術していたことなどを話しました。
初めから予想はしていましたが、それじゃあやってみてくれ、という話になり、日本で通常やっていた、うつぶせで頭から足まで30分で施術するコース、をやることになりました。そして10分も経たずにオーナーを熟睡させることができました。
足の裏まで終わり、熟睡しているオーナーを起こし、仰向けに寝てもらい仕上げに顔と頭のマッサージをして30分ぴったりで終えました。フィニッシュ、と告げベッドの上で起き上がるのを手伝うと、オーナーは大きく伸びをしながら、EXCELENT!と一言。あれ?AWSOME!だったかも。どちらにしても邦訳すると、素晴らしい!みたいな意味だと思われます。そしておもむろに尋ねられました
いつから働ける?
>・・・え?
だからいつから来れる?
>いや来るのはいつからでも大丈夫でS・・・
じゃあ来週の月曜日から。
>はあ。
そんな感じで採用が決定しました。しかし既述のようにバンクーバーでマッサージの仕事をするには資格と登録が必要。私はその両方とも持っていませんでした。そのことをオーナーに話すと、ちょっと考えたかと思うと、
じゃあ黙ってればいいんじゃない?
>え?いいんすか?
うーん。大丈夫でしょ。ここ治療院だし。
確かに摘発される確率は限りなく低いかと思いますが・・・法律違反はさすがにまずいのではと思いました。するとそんな私の胸中を表情から察したのか、それじゃあマッサージを施術として公に出すのじゃなくて、あくまでサービスの一環として提供するのはどうか?と言ってきました。
ああ、あれか。美容院でサービスの中にマッサージが入っているようなものか・・・うーん、それならいいのか・・・?と完全に納得したわけではありませんでしたが、とりあえず私の仕事内容としては、サービスのマッサージ、受付業務、掃除など、要するに雑務全般するということでどうだ、となりました。まあ、いいか。当初夢見た業務内容ではないですが、一応マッサージの仕事できるわけだし。
ああそれから給料だけど。
>はい。
時給20カナダドル(当時2400円くらい)でどう
>マジですか。
少ない?
>いや充分です。
今日本のマッサージ業界だとほとんどの店が出来高払い・歩合がほとんどだと思います。時給で、つまり客が来ても来なくても、払ってくれるところなんてほとんどありません。あったとしても時給800円とかそんなものです。そんな中、もちろん物価の違いや為替レートの違いはありますが、それでも時給2400円か・・・
俺も出世したな・・・面接から帰る途中そう独りつぶやきながら家路に着きました。