仕方のない事ですが、
「メヌエットが流れ、ナースがドタバタ急ぎ足で動き、
ガラガラと、医療台を動かす」
…この作業は、絶え間ない「音」を産み出します。
入院中は、昼間に睡魔が襲って来て、何十分間か眠り込み、
夜は、ほとんど眠れずに、
カーテン越しの夜明けを迎える、そんな毎日でした。
「バッハのメヌエット」の旋律を聞くと、
「大学病院での入院生活」が、脳裏に浮かぶのと同じく、
「シャボネット」という、
(洗面所やトイレに備え付けられた)液体せっけんの匂いも、
「点滴棒を押して移動していた自分」を、
瞬時にして、思い起こさせてくれます。
音の記憶、匂いの記憶、
…それらは、理屈抜きに立ち昇ってくる、
なつかしさがこみ上げてくる、
原初的な感覚…そう、思います。