某大作家の偲ぶ会に参列しました。
サラリーマンを経験して作家になった方です。
戦前生まれ。子どもに小遣いや、遊び道具など与えられるはずがない…
そんな時代に幼少期を過ごしました。
その中になって、読書好きに育ちます。
外で遊ぶ暇がないほど本を読んだそうです。
子供向けの本は限られていたでしょうから、
大人の読みものにも、早くから親しんだことでしょう。
大学では、文学を専攻して、サラリーマンに。
10年以上働いたようです。そこで痛感したことは、社会の多くの人たち、
いやほとんどの人は、認められることのない存在だ!ということでした。
その人たちの癒しになればという思いが、氏を作家へと誘います。
戦争を肌で感じた世代です。
戦後の貧しいみじめな時代が、記憶から消えることはありません。
平和への思いは、相当に強く持っていたと言います。
当時の作家は、書かずにはいられないという動機が、たくさんありました。
共感してくれる読者も、また大勢いました。共に悲惨の体験者でした。
締め切りの地獄に打ち勝ち作品を量産できたのも、
二度とあの悲惨を起こしてはならないという使命感があったから。
そうした意味では昭和初期に生まれた方と、
戦後生まれとでは、引き出しの数が違うということがわかります。
高度経済成長を作ってきた世代と、
オイルショック後に社会人になった世代の違い。
昭和が終わってから社会にでた世代。
平成が終わってからの社会人。
生きている背景がまるで違います。世の中変わるわけですね。
たった一つの作品が770万部も売れ、映画にもなる…
こうした社会現象…もう二度と起こらないかもしれません。
挨拶に立った方が、しみじもと語られました。
「死には二つある。」「一つは肉体の死。」
「もう一つは、人々の心からその人が消えたとき。」だと。
この大作家が、人々の心から永遠に消えないことを願い、
会場を失礼しました。