前号続きです。。。
お笑い分析研究69号修正
□□□□□□前号まとめ□□□□□□
放送作家の方によると、
「反復」は笑いの基本構造の1つで、
「反復」とは、
「ギャグやボケを繰り返し使うことで笑いを誘」う事だそうです。
でも「繰り返す事」としか言いようがない「反復」が、
「何故笑いになるか」
「どんな笑いのフォーマットがあるか」
は、それぞれ異なるでしょう。
前号では、
「単純リピート」と「ダウンタウン松本人志さんの『天丼』」を取り上げました。
以下続き。。。
□□□□□□はじめに□□□□□□
放送作家の方の記事では、
反復の説明で、タカアンドトシの「欧米か!」を例示していました。
ただ、「ギャグやボケを繰り返し使う事で笑いを誘います。」と説明している「反復」の例として、
「欧米か!」挙げるのは適切ではないと思います。
タカアンドトシの漫才では、
トシさんの突っ込み「欧米か!」が同型で繰り返されます。
これは、前号で書いた単純リピートと同じ笑いではない事は解るでしょう。
「欧米か!」の繰返しそのものが、ディスコミュニケーションな訳ではないですよね?
トシさんの「欧米か!」という突っ込みの繰り返しに対して、
「何で繰り返すねん!」
と、言いたくなる訳じゃないでしょう?
「欧米か!」という突っ込みが間違いという訳でもありません。
でも、その反復に笑いをつくる効果があるのは間違いありません。
同じ突っ込みをただ繰り返す事に、
どんな効果があるんでしょう。
□□□□□□欧米か!(1)□□□□□□
まず、タカさんのボケのディスコミュニケーション度を大きくする効果があると思います。
トシさんの突っ込みはディスコミュニケーションではないので、
トシさんの突っ込みに対して、
「何で何回も言うねん!」
とは思いませんが、
逆に、タカさんのボケに対しては、
「何で何回も言わすねん!」
と、突っ込めますね。
繰り返したからこそ芽生える「突っ込みたい気持ち」でしょう。
タカさんのボケ自体が特に面白い訳ではない。
…というか、勝手にミートパイ作ればいいでしょう。
そんな笑いにならないボケをより面白く感じさせるのが、
同じ突っ込みの繰返しと、
同じ突っ込みをさせる同様のボケの繰返しによる、
ディスコミュニケーションの醸成。
何度突っ込まれても、
同じようなボケを繰り返す、
「伝わらなさ」がおかしい。
「ディスコミュニケーションの醸成」
< 基準 >:一度突っ込まれれば、伝わるはずにも拘わらず
< ズレ >:何度突っ込まれても、伝わらず同じ逸脱を繰り返す
<ツッコミ>:「何回言わすねん!」「いい加減解れよ!」
□□□□□□欧米か!(2)□□□□□□
次に、「反復」が、
トシさんの突っ込み自体を笑いにする効果もあります。
「欧米か!」の突っ込みを繰返す事は、
「欧米か!」をいわゆる「お約束」にし、
その結果、観客自身が、
「欧米か!」反復を期待しますよね。
お約束のパターンに成り立つのは「予定調和の緊張と緩和」。
展開を知っていて、突っ込みの予想が出来ても、
予想通りの展開を期待しつつ、予想が外れるかもしれない不安もある。
実際、後で違う事が起きますよね。
そのペンディングの状態が生み出す緊張から、
予想通りの落ちで、緊張の緩和。
< 基準 >:予想通りの展開か未決定の緊張
< ズレ >:予想通りの展開に決定して緩和
<ツッコミ>:「同じかい!」「『欧米か!』しか言うてへんやん!」「言い方のバリエーション無いんか!」
「欧米か!」が間違っているという「ディスコミュニケーション」の笑いではなく、
「緊張の緩和」の笑い。
□□□□□□欧米か!(3)□□□□□□
タカアンドトシの漫才は、
上記2つの笑いをテンポよく繰り返し、
観客をひきつけます。
そして、その観客をひきつける力は、
次の笑いに繋がる効果を持ちます。
同じやり取りを繰返した後、
タカさんが、自分自身のボケに対して、トシさんの頭を叩き、突っ込むというイレギュラーで笑いを獲りますよね。
しかも、突っ込みが「南米か!」などに変わっている。
予定調和を期待する観客にとっては、
それは、二重の「思い込みの間違い」の笑い。
その「前振り」として、
「思い込みの醸成」の役割を担うのが、
「欧米か!」
の、繰返しです。
「2重の思い込みの間違い」
< 基準 >:「トシさん」が「欧米か!」と突っ込むかと思ったら
< ズレ >:「タカさん自身」が「南米か?」と突っ込む
<ツッコミ>:「『欧米か!』違うんかい!」「今度はこっちかい!」「自分で言うんかい!」
□□□□□□欧米か!(4)□□□□□□
タカさんの「南米か!」は、
形式的には、逸脱の存在を指摘する「突っ込み」ですが、
自らボケながら、
何も間違ってないトシさんを叩くという行動自体が、
常識を逸脱したディスコミュニケーション。
実際、トシさんは怒って突っ込みますね。
< 基準 >:タカさんが自らボケたにも拘わらず
< ズレ >:ボケていないトシさんを叩く
<ツッコミ>:「何で俺叩くんだよ!」「お前が言ったんだろ!」
上記の「ディスコミュニケーションの醸成(1)」「予定調和の緊張と緩和(2)」「思い込みの醸成(3)」は、
「反復」の直接の効果です。
(4)そのものは「反復」の効果ではありませんが、
「反復」の効果である(3)の「思い込みの間違い」を上手く効かせた笑いになってます。
□□□□□□まとめ□□□□□□
「反復」という言葉表現できる言動が、
笑いに貢献する事があるのは間違いありません。
ただ、その貢献の仕方は、
一つではありません。。
特に、タカアンドトシの「欧米か!」は、
反復には違いありませんが、
代表例として挙げるような一般的な形態ではないと思います。
「何を笑うか」を考えずにひとまとめに出来る程、
笑いって単純じゃないですね。
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