ワーク・ライフスタイル

大橋巨泉「第二の人生」これが正解

1980年代のバブル時代最盛期に「11PM」「クイズダービー」などの人気テレビ番組司会者として人気を博した大橋巨泉氏。

1990年にセミリタイア宣言して芸能界の一線から身を引いてから23年目に突入した2013年に刊行された本書で、これからの時代に合ったハッピーリタイアメントの送り方、心構えなどについてまとめています。

4カ国のベストシーズンを巡る「ひまわり生活」

1年中ゴルフがしたいという理由でセミリタイア宣言をしたという巨泉さんは、ゴルフを快適にできる季節を求めて4カ国のベストシーズンを満喫する「ひまわり生活」を送っています。

著者の1年の生活拠点をまとめると以下のようになります。サーフィンをするために世界中の波を求めて旅をする「エンドレス・サマー」というドキュメンタリー映画がありましたが、ゴルフ版「エンドレス・スプリング&サマー」ですね。羨ましい限りです!

  • 【春】4〜5月は日本
  • 【夏】6〜9月の半ばまではカナダ
  • 【秋】9月の半ばから10月は日本
  • 【春】11月はオーストラリア
  • 【夏】12〜3月はニュージーランド

金持ち芸能人のセミリタイア話なんて参考になるのか?

こんな誰もが羨むセミリタイア生活を送る巨泉さんは、大物芸能人だからこそできることで、一般人には参考にならないのではないかと思いながら読み始めました。

しかし、沢山稼ぐ人は沢山使う習慣(生活レベル)があるので、スケールは全く異なるものの、「セミリタイア(仕事を辞める=収入が大幅に減る)にどう備えるか」「その後の人生をどう生きるか(=何をして暮らすか?どうお金を使うか?)」ということに対する考え方については、一般人にも参考になることが多いのではないかと感じました。

有名芸能人ほど経済感覚が狂って大きな借金を抱えてしまったり、引退することで注目を得られなくなる寂しさもあったりすると思いますので、若くして自ら引退することは、別の意味にはなりますが、一般人よりも難しいのではないかとさえ思えてしまいます。

また、仕事に人生を没入し、派手に豪遊することが良しとされたバブルの円熟期に、このような確固たる価値観をもって、本書の中でも書かれているように、自らの生活を「スケール・ダウン」させるという選択をして、実行に移した巨泉さんは本当に凄い聡明な人だと思います。

セミリタイアに向けた準備は30代で始めるべき

巨泉さんは、夫婦二人で夢のリタイアの条件は、「第1に自分たち名義の家、第2が100万ドルのキャッシュ、第3が長期的な投資(またはビジネス)」と言ってます。

これを用意できる人は日本人の数%に限られますので、一部の成功者だけの話になってしまい、現実味がありません。

しかし一方で、以下のようなリアリティーのあるアドバイスも載せています。

ボクがセミリタイア宣言をした90年代はバブルがはじけた頃だった。だがそれでも、まだまだ好景気だった。今は当時とは全く逆で、低成長時代。だから、いろいろな点でスケールダウンして対応すべきではないだろうか。

こうした時代に対応するには、若い人にはちょっとかわいそうだが、とにかく辛抱強く頑張り続けるしかない。つまり後半生に向けて、財政的な準備をいち早く始めることだ。ボクは以前の著書『巨泉 人生の選択』(講談社刊)で40歳から準備せよと書いたが、今なら30代で始めるべきだと思う。将来に備えて、スタートは若ければ若いほど良い!

副業をしながらセミリタイア生活をするスタイルが自然

また、当サイトでも度々書いてきましたが、副業を持つことを勧めています。

  • 例えば現役時代は悔いのないように、思いきり仕事をして稼ぐことが重要だ。同時に、定年後にもできる仕事として副業を持つことをお勧めしたい。
  • これからの時代、完全リタイアできる人はごく少数で、副業を活かしながらセミリタイア生活をするスタイルが自然ではないだろうか
  • 若い頃から将来に向けて、副業を考えておくべきだ。今の仕事を一生懸命やるばかりではなく20年先、30年先にプラスになるような職業を副業として考えてみることをお勧めする。

人生の優先順位は「健康、パートナー、趣味、財政」の順番

巨泉さんは、人生の優先順位を明確にして、それを守るための具体的な生活習慣を実行しています。

その中でも、パートナー(妻)の大切さについては繰り返し主張していて、「後半生は2人で1人のつもりで生きる。2人の共同事業としてセミリタイアライフを作り上げていく。」という主旨のことを述べています。

実際に、セミリタイアの失敗の原因は「パートナーとの関係の崩壊」が最も多いそうで、そうした事態に陥ることの悲惨さも強調しています。

もうひとつの主な失敗の原因としては、若くして引退した後に、退屈すぎて再び仕事に復帰してしまう、といった「逆燃え尽き症候群」があると言っています。それを避けるためには試しに3ヶ月間休んでみるといった「トライアウト」をしたら良いと助言しています。

この点に関しては、私も以前、半年以上仕事をしないで海外で暮らした時に感じたことで、当サイトの別記事で詳しく書かせて頂きましたので参考になれば幸いです。

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まとめ

最近では、リンダ・ラットンの「ライフ・シフト」を始め、人生100年時代にどうやって生き抜いていくかというテーマの本が注目を集めていますが、1990年頃から、それに近いことを考え、情報を発信していた大橋巨泉さんの先見性の凄さを思いしらされる一冊です。

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