人気の新型ハイブリッド車の仕組みを比較! おすすめ車種を紹介

ハイブリッド

ひと口に「ハイブリッド車」と言っても、実はその仕組みは実にさまざまです。

ハイブリッド車の仕組みをより深く理解することで、自分に合ったハイブリッド車を選ぶことが可能になると思います。

そこで今回は、ハイブリッド車の仕組みやその歴史について紹介します。







そもそも「ハイブリッド車」とはどんな車?その歴史を解説

トヨタ初代プリウス

引用:https://global.toyota/jp/prius20th/evolution/1st/

まず最初に、そもそもハイブリッド車とはどんな車のことを指すのかを説明します。

「ハイブリッド」という英語は、日本語に直すと「(生物学上)異なる種類や品種の動植物を人工的に掛け合わせてできたい交雑種」「複数の方式を組み合わせた工業製品」などを意味します。

ハイブリッド車は内燃機関、つまりシリンダなどの機関内でガソリンなどの燃料を燃焼させ、それによって発生した燃料ガスを用いて機械を動かす原動機=エンジンと、電動機のモーターという異なる方式を組み合わせて動かす車、ということになります。

ハイブリッド車の歴史は意外に古く、世界初のハイブリッド車は1896年にフェルディナント・ポルシェという人が発明した「ローナーポルシェ」という車だといわれています。

ちなみにフェルディナント・ポルシェはその後フォルクスワーゲン・タイプⅠを設計、独立して設立したデザイン事務所が息子のフェリー・ポルシェの作った「356.001」という車を製造したことで自動車メーカーに発展、現在のポルシェにつながります。

ハイブリッド車に話を戻すと、その後各社によってさまざまな研究がなされましたが、トヨタは1965年から研究を開始、1969年には基礎研究から実車研究へ移行、1971年にはバス用試作ユニットを公開しています。

その後1975年の第21回東京モーターショーに「センチュリー・ガスタービン・ハイブリッド実験車」を出展。

トヨタセンチュリーガスタービンハイブリッド

引用:https://www.esquire.com/jp/car/car-news/g25597741/toyota-century-sports-800/?slide=1

1977年には第22回東京モーターショーに、往年の名車「トヨタスポーツ800」のガスタービンハイブリッドカーも出展しています。

トヨタスポーツ800ガスタービンハイブリッド

引用:https://global.toyota/jp/prius20th/innovation/gas/

その後世界は第2次オイルショックを迎えたことにより、ハイブリッド車の開発は世界的に拍車がかかりますが、その後石油の安定供給が復活すると、その技術的な困難さもあって量産車として登場するには至りませんでした。

なおこの時期、当時の東洋工業(現在のマツダ)が、商用トラックのタイタンをベースにディーゼルハイブリッド車を製作して新聞社に15台を納入したり、フォルクスワーゲンが20台のハイブリッド車を一般に貸し出したり、ということは行われています。

1980年代に入ると、後のハイブリッド車の実現にとって画期的な技術が次々と発明されます。

まずは1981年に旭化成の吉野彰氏がリチウムイオン二次電池を発明します。リチウムイオン電池はハイブリッド車のバッテリーに使われる技術です。

なお、吉野彰氏はこの発明が評価され、2019年のノーベル化学賞を受賞しました。

そして翌1982年には住友金属の佐川眞人氏らがネオジム磁石を発明します。

ネオジム磁石はプリウスの発電機、動力モーターなどに使われる永久磁石式動機モーターに使われるもので、リチウムイオン電池と並んで現在のハイブリッド車に欠かせない技術です。

1990年代に入ってからは地球温暖化による車の排出ガス規制の重要性が叫ばれるようになり、次世代自動車開発のうねりの中で再びハイブリッド車開発は盛り上がりをみせます。

そして1994年、ついにアウディが乗用車として世界で初めてハイブリッド車の市販にこぎつけます。それが「アウディ 80 duo」です。

アウディ80duo

引用:https://www.vau-max.de/magazin/klassik/audi-duo-das-erste-hybridfahrzeug-aus-ingolstadt-erblickte-schon-1989-das-licht-der-welt-seiner-zeit-voraus-zu-teuer-und-vergessen-vorsprung-aus-ingolstadt.1715

しかし非常に高価であったことからまったく売れず、販売的には大失敗に終わったようです。

翌1995年、トヨタが第31回東京モーターショーについにプリウスを参考出品しました。

1995年東京モーターショーのプリウス

引用:https://autos.goo.ne.jp/news/webcartop-361418/image11.html

この頃トヨタとアウディはハイブリッド車開発に凌ぎを削っており、アウディは1997年にアウディ A4 duoをディーゼルハイブリッド車として発売しました。

しかしこちらは90台しか売れず、アウディはハイブリッド車の研究開発を大幅に縮小、次世代車開発としてはディーゼル車の方向へ舵を切っていきます。

そして1997年、ついにトヨタがプリウスを市販にこぎつけました。

これまで見てきたように、少なくとも市販車としてはアウディが既にハイブリッド車の販売を行っていましたが、販売台数が非常に限られていたこともあり、プリウスは「世界初の量産型ハイブリッド車」ということになっています。

当時の販売価格は215万円でしたので、現実的に購入できる金額という意味でもプリウスは画期的だったことに間違いはありません。

当時のカローラの最量販グレード、1.5SEサルーンが約152万円でしたから、決して安い価格ではなかったと思います。しかしこれでもトヨタ的には儲けはほとんどなく、むしろ原価を割っていた、という話すらあります。

そうまでしてもトヨタは世界初の量産型ハイブリッド車の発売にこだわった、ということでしょう。

初代プリウスは「性能は軽自動車並み、価格は高級車並み」と言われ、実際にそのとおりだったことから、販売成績はそれほどふるいませんでした。

プリウスが今のような大人気車種になるのは、2003年に発売された2代目以降の話です。

トヨタプリウス(2代目)

引用:https://global.toyota/jp/prius20th/evolution/2nd/

初代プリウスの発売後、1999年にホンダが初めてのハイブリッド車、インサイトを発売。2003年にはスズキが軽自動車としては初のハイブリッド車となるツインを発売、という具合に他社も続々とハイブリッド車の開発・販売を手掛け、現在に至ります。



ハイブリッドシステムは全部で3種類ある

トヨタプリウス(初代)

引用:https://gazoo.com/article/car_history/151225.html

ひと口にハイブリッドシステムといっても、その仕組みによって大きく3種類に分かれています。

3種類とは「パラレル方式」「シリーズ方式」、そしてその両方を掛け合わせた「シリーズ・パラレル方式」(スプリット方式)です。

パラレル方式

まず最初に紹介するのはパラレル方式です。

パラレルとは「並列」という意味ですが、パラレル方式は基本的に「モーターがエンジンをアシストする」という考え方です。

パラレル方式は、発進時や加速時といったガソリンをたくさん消費する場面でモーターがエンジンをアシストすることでガソリンの消費を抑えます。

構造的には比較的単純で、車両重量やコストの増加を抑えられるという特徴があります。そのため軽自動車やコンパクトカーに採用されることが多いです。

パラレル方式を採用している代表的な車種はホンダフィットです。

ホンダフィット

引用:https://www.webcg.net/articles/gallery/37164#image-11

フィットに採用されているハイブリッドシステムは「i-DCD」と呼ばれるパラレル方式で、同じパラレル方式で前身の「Honda IMAシステム」の発展形です。先代のフィットハイブリッドはIMAを搭載していました。

IMAはエンジンとモーターが一体化していましたが、i-DCDはエンジンとモーターが分離しているのが大きな違いです。

i-DCDは燃費効率のみを追求したIMAと異なり、アグレッシブな走りを楽しめるのが大きな特徴です。i-DCDの登場で「ハイブリッド車は運転していても面白くない」という常識が覆されました。

なお、i-DCDの更に上位版でレジェンドなどに採用されている「SPORT HYBRID SH-AWD」もパラレル方式です。

また、スズキの「エネチャージ」「S-エネチャージ」、その発展形の「スズキマイルドハイブリッド」もパラレル方式です。これらはエンジンとモーターが一体化しています。

マイルドハイブリッドが搭載されているのはワゴンR、スペーシア、クロスビー、スイフト、ソリオ、イグニスなど多岐に渡ります。

スバルのハイブリッドシステムである「e-BOXER」もパラレル方式で、CVT(リニアトロニック)の前にトルコン付きエンジンとモーターが並列に配置されます。

最新のe-BOXER搭載車としては、2019年11月に一部改良を受けて発売されたXVがあります。

スバルXV

引用:https://www.subaru.jp/xv/xv/design/exterior.html

また、日産がフーガやスカイラインなどのFRハイブリッド車に採用している「インテリジェントデュアルクラッチ」もパラレル方式です。



シリーズ方式

シリーズ方式は「直列方式」とも呼ばれ、並列方式であるパラレル方式と対比されることが多いです。

先に言ってしまうと、シリーズ方式として代表的なのは日産の「e-POWER」です。ノートやセレナに搭載されています。

日産ノートe-POWER

引用:https://web.motormagazine.co.jp/_ct/17127240

シリーズ方式はエンジンと駆動系が完全に分離されていて、駆動させるのは電力で動くモーター、そしてそのモーターで必要な電力を発電するのがエンジン、という仕組みになっています。

エンジンはもっぱら発電のためにのみ存在するので、常に最適な回転数で効率よく発電をすることが可能です。

そしてエンジンと駆動系は分離されているので、エンジンの稼働状態によって駆動が左右されることがありません。

つまり効率のよい発電と最適な駆動が両立できるということです。



シリーズ・パラレル方式(スプリット方式)

最後にシリーズ・パラレル方式(スプリット方式)です。

シリーズ・パラレル方式はこれまで紹介したパラレル方式とシリーズ方式を組み合わせたハイブリッドシステムで、エンジンとモーターを最適な効率で組み合わせるもので、状況によってはエンジンのみ、モーターのみで走行することも可能です。

たとえば発進時はエンジンだとガソリンを多く消費してしまうのでモーターのみ、加速時はエンジンとモーターを組み合わせて状況に応じて配分を変え、高速巡航時はガソリンの消費が少なくて済む上、バッテリーに貯めた電力を消費しないようにエンジンのみ、といった具合です。

シリーズ・パラレル方式はシリーズ方式とパラレル方式の「美味しいとこ取り」なので、非常に低燃費となります。

しかし大きなモーターやバッテリーを搭載する必要があるので、重量やコストの面で不利になりがちです。

トヨタのハイブリッドシステムはこのシリーズ・パラレル方式です。また、ホンダのインサイトなどに採用されている「SPORT HYBRID i-MMD」もシリーズ・パラレル方式となっています。

ホンダインサイト

引用:https://www.webcg.net/articles/gallery/40556#image-2



結局どのハイブリッドシステムがおすすめなのか

パラレル方式、シリーズ方式、シリーズ・パラレル方式(スプリット方式)のどれがおすすめなのかは、一概には言えません。ここまで紹介したように、どれも一長一短だからです。

単純に燃費のことだけを考えるならシリーズ方式かシリーズ・パラレル方式で、パラレル方式はやや不利です。

たとえばパラレル方式で紹介したXVの2.0Lのエンジン+モーターで、燃費は19.2km/Lです。決して悪くはありませんが、ハイブリッド車としては多少物足りなさを感じるでしょう。

ワゴンRの燃費は30.4~33.4km/Lと非常に良いですが、これは元々排気量が小さく車両重量が軽い軽自動車だから、という点は否めません。

パラレル方式は燃費面ではシリーズ方式やシリーズ・パラレル方式に劣りますが、安価であるというメリットがあります。価格を重視するならパラレル方式、ということになるでしょう。

シリーズ方式とシリーズ・パラレル方式のどちらが優れているかは微妙です。シリーズ方式は駆動自体はモーターが担うので、電気自動車のような走行フィールになりますが、これをどう捉えるかが決め手になると思います。

電気自動車はアクセルを踏み込んだ時のレスポンスが良い上、トルクフルな加速感が味わえます。シリーズ方式は電気自動車ではありませんが、これに近い感覚となります。

ただこの走行フィールを「スムーズ過ぎて気持ち悪い」と感じる向きもあるようです。

無難なのはシリーズ・パラレル方式です。これはトヨタのハイブリッド車すべてに採用されており、最も熟成が進んだ技術です。

とにかく安くハイブリッド車に乗りたい、燃費も良い方がいい、ということであればスズキの軽自動車のハイブリッド車(ワゴンRやハスラーなど)、何も考えずに「とりあえずハイブリッド車に乗ってみよう」ということであればトヨタのハイブリッド車(プリウスやアクアなど)を選ぶのが良いかもしれません。