どうして龍神が、そんなことにこだわるのだろう?
(そもそも、本当に龍神なのか?)
自分が勝手に、そう思い込んでいるだけなのかもしれない、と裕太はそう思う。
『まぁ、そんなに…深く考えることはない。
友達を助けたいんだろ?
だったら…選択肢はおのずと、見えてくるはずだ』
理路整然と、竜神の言葉が、裕太の頭に響く。
だが裕太は、どうしても納得が出来ない。
むしろ、それがイジワルにも感じている。
龍神の目が、まっすぐに、裕太をとらえている。
ごまかしは、ここでは通用しないようだ。
(ジュンペイは、本当にこのことを、望んでいるのだろうか?)
今も目覚めることなく、リュウタの背中で守られている
ジュンペイのことを思い出して、裕太はまだ、迷っている。
(それなら、自分に、どうしろと言うんだ?)
それに…自分にとっての大切なものって、なんだ?
裕太は真剣に、自分の心に問いかける。
『そんなに、悩むことでもないだろ?』
ごく単純なことだ…
龍神は辛抱強く、裕太の答えを待っている。
『たとえば、野球のサインボールだとか、大切にしている
鉛筆だとか…
とにかくキミたちの大切なものだったら、何でもいい』
それでも裕太は、竜神の言うことが、理解できない…
竜神が何を目的に、ここに連れて来たのだろう?
裕太は頭をめぐらせて、その場でじぃっとしている。