猫は自分を憐れんだりしない

 勝手に憐れんでいるだけだ。当の本人(猫)は飄々としたものだ、きっと。
 昨夜10時過ぎ、庭に面したサッシへ、うちの元野良猫アポロが走り寄り、うなおお~~う、と吼えた。アポロは物凄く警戒心が強くて、庭に来訪者…猫、狸、アライグマ等の気配を察すると窓際で唸り声を上げる。だからゆうべも誰(何)が来たのかとカーテンを捲ると、2mほどのところによっちゃんが佇んでいた。

 f:id:wabisuketubaki:20180328091806j:plain f:id:wabisuketubaki:20180328091923j:plain よっちゃんは、ここいらの野良の目下ボス猫である。お腹と手足は白、背中が茶トラの体躯立派なオスで、2、3年前から我が家の庭をよく訪れる。初めて見た時に夫が「よっちゃんって感じだな」と言ったことから我が家ではそう呼んでいる。そして、これは私見であるが、顔が小栗旬に似ている。よっちゃんを見ると小栗旬を思い、TVに小栗旬が映るとよっちゃんが浮かぶ。
  さてそのよっちゃんだ。アポロと違い、何を恐れることもなく暮らしている。ゆうべもふらりと寄っただけだ。この家にアポロが出入りしている事を知っている。今までに餌を与えたことは無い。もし与えて常駐するようになったら、アポロが帰ってこられなくなるからだ。よっちゃんには餌場が他にもある。アポロにはこの家しかない。
  けれど、庭の暗がりでこちらを向いたよっちゃんを見て。暖かくなったとはいえ夜はまだ冷える。夫の足元でヒーターの温風にあたり、餌と水が常時置かれているアポロと大違いだと思ったら、泣きたくなった。いやいや、天衣無縫に生きられるよっちゃんと臆病者のアポロ、どちらが幸せかなんて判断できない。けれど、私は胸が詰まる。

 ああ、アポロが他の猫と仲良くできる子だったらなぁ。f:id:wabisuketubaki:20180328092603j:plain