八ヶ岳ゆるふわ日記

八ヶ岳ゆるふわ日記

八ヶ岳南麓大泉と東京を行ったり来たりの毎日。日々のよしなしごとを綴ります。


 

(いつもお世話になってます)

 

 2024年3月19日、日銀がマイナス金利政策の見直しを決め、近い将来17年ぶりの利上げが行われることが必至となった。

 また、これと歩調を合わせるかのように3月27日には円ドルレートが34年ぶりの安値(151円94銭)となった。

 

 2024年は「我が国が30年続いたデフレの時代からインフレの時代に回帰した年」として長く記憶されることになるだろう。

 

 我が国の行く末が心配だが、それより焦眉の急は私の行く末(短いけど)である。インフレは年金生活者の暮らしを直撃するし、乏しい預金も日々減価していく。

 

 さあどうするか。とりあえず預金を日本株に代えることにした。

 空前の高値圏にある(しかも先行きが明るくない)日本株を買うなど愚の骨頂だが、ほかにこれという手段を思いつかないので仕方がない。

 

 かつてはデイトレーダーまがいのスイングトレードを繰り返していた私が最後に株を売買したのは3年前のこと。

 

 これを最後に株の世界からはすっぱり足を洗った。

 日本株を買うには我が国の先行きは絶望的だし、他の金融商品に投資するには知識がなさすぎるからだ。

 

 すっかり初心者に戻った私には何を買えばいいのかすら、皆目見当がつかない。

 悩んだ挙句に選んだのは「コシダカホールディングス(2157)」。カラオケ「まねきねこ」の運営会社である。

 配当は年間14円。

 直近の株価(945円)で計算すると配当利回りはわずか1.8%にすぎないが、それでもこの株を買ったのは株主優待に惹かれてのこと。400株以上以上保有すると5000円分のまねきねこ利用券がもらえるのである(3年以上保有すると10000円に増額される)。

 前回まねきねこで私が払った料金は850円だったから6回タダでいける計算になる。この無料券を加味した総合利回りは2.8%となる。

 株主優待に惹かれて株を選ぶなどシロウトそのものだが、元々シロウトなんだから当たり前だ(←開き直り)。

 

 とはいえ、これだけでは「インフレ逃避」というにはいささかショボすぎる。

 そんなわけで清水の舞台から飛び降りるつもりで選んだのが半導体製造装置の雄「東京エレクトロン(8035)」。

 半導体需要は世界規模で爆発的に伸びる一方だが、ご承知のとおり技術革新や需給による変動(斯界ではBBレシオと呼ばれる)が激しい世界である。それに比べれば半導体製造装置分野はより安定的な事業だから株価もさらに上がるはず、というのが私の我田引水理論だ。

 

 実は10年ほど前に同社株を買ったことがある。

 買った時の株価はたしか25万円程度だったが、30万円になった時にうれしくてさっさと売ってしまった。

 それが今はどうだろう。権利落ち日の3月28日の終値は396万円(!)である。

 株の世界には10bagger(10倍株=野球用語で「10塁打」を意味する)という言葉があるが、同社はまさにそれだったのだ。

 

 年間配当利回りは0.9%と預金金利よりはマシだが大したことはない。

 それでもこの銘柄に手を出したのは「愛想をつかして別れた男がいつの間にか大スターになっていた」、そんなやっかみが背景にあるのはいうまでもない。

 

東京エレクトロンこの10年の株価推移

(上がれ上がれ、天まで上がれ~)

 

 コシダカはともかく東京エレクトロンはとりあえず、の感が強い。

 預金だろうが株だろうが所詮インフレに蹂躙される運命だから、いずれは外貨建ての金融資産に切り替えることになるだろう。

 

 羽鳥慎一モーニングショーによると日本株を押し上げているのは中国市場から逃げてきた外国資本で、我が同胞は新型NISAを活用して外貨建て商品に投資しているのだという。どうやら皆さん同じことを考えているらしい。

 10年ほど前にFX取引で為替相場に大きなインパクトを与えた「ミセスワタナベ(日本の主婦層)」が有名になったが、今回は何と呼ばれるのだろう。

 

                

(空中でぶら~りぶら~り)

 

 久々に八ヶ岳南麓に戻って来てオッたまげた。

 とりつき道路上の架線(←すごく細いので電線ではなさそう)に長さ4mはあろうかという松の大枝が引っかかっているではないか。

 幸い架線に影響はないがこのまま放置すると早晩ケーブル切断といった由々しき事態になることは想像に難くない。 

 

 松の枝を取り除く作業を要請したいのだが、件のケーブルがNTTのものなのか地元CATV会社CCNETのものなのか判然としない。

 ままよ、寄らば大樹の陰とばかり、まずはNTTにアクセスしてみた。

 

(NTTがわざわざ我が家までフレッツ光回線を布設してくれたのは2018年3月のこと)

 

 

 NTTはこの手の障害に関してはWEB申告を推奨している。

 その手続きの冒頭、まずはホントにNTTの線か確認しろ、とのこと。

 

(勝手気ままにやっているのかと思ったら日本全国会社ごとにケーブルを張る高さが決まっているらしい けっこう緻密なのね)

 

 遠目で見てもNTTかどうかなど分からないので、決め打ちで先に進んだ。

 現場の写真をつけ、地図で位置登録して申告は終了した。

 

 

(スマホで撮って写真を添付 現場の特定のため最寄り電柱情報が重要らしい)

 

 午前中に申告を済ませ、インノ経由で尾白の湯まで行って戻ってくるとあ~ら不思議、わずか2時間ほどの間に大枝は見事に取り払われていた。

 

 ありがたやNTT。神速で作業を終えたらしい。

 

(大枝は持ち帰らず松の所有者の土地に放ってあった(当たり前か))

 

 翌朝そらの散歩をしているとご近所のAさんと出くわした。

「NTTに連絡してくれたんですね。ありがとうございました」

「いえいえ、ウチが一番迷惑をこうむりますからね」

「実はあすこにまだ1本ぶら下がってるんです」

「ギョギョ」

 

 Aさんが指すところを見ると確かに中枝サイズのヤツがもう1本ブラブラしているではないか。

「あの線はCATV会社のものなのでNTTではとり除けないんですって」

 

 う~ん。

 フットワークのよさはお見事だが、NTTのこの融通の利かなさはいったいどういうことだろう。他社の領分に余計なちょっかいが出せないのは重々承知しているが、たかが松の枝1本取り除くだけのことではないか。

「チッ。じゃあCATV会社に連絡して・・・」

「安心してください」

「穿いてるんですね」

「いえ(アホか)、私が昨日電話しましたから、おっつけ作業に来てくれます」

 

 あ~よかった。

 ったく、NTTの石頭。

 

 でも考えてみればNTTもCATV会社もこの手の保守作業は外部業者に委託しているはず。どうかすれば同じ業者の可能性だってある。

 ということは保守業者からすれば気を利かせて1件で済ましちゃうより、別の2件としてNTTからもCCNETからも作業手数料をもらった方がいい、ってことなのかもしれない。

 

 ケーブルに引っかかった枝を取り除くだけでも世の中のいろいろな仕組みが垣間見えたようで

勉強になった出来事であった。

 

                

(白州・尾白の森名水公園べるが「べるが」とは verdant(緑に覆われた)garden の略)

 

 この日の八ヶ岳南麓は朝から雨。

 外の作業もできないのでバックハウスインノまでパンを買いに行くついでに名湯の誉れ高い「尾白(おじら)の湯」まで行ってみようと思い立った。

 ちなみに我が家からインノまでは約3km、尾白の湯までは16km。「ついで」というのは距離的な意味でなく、わざわざ風呂に浸かりに行くだけの行動はまっぴらごめんという精神的な意味合いである。

 

 キャノンボール・アダレイを聴きながら雨の中を走ること25分、ようやく「べるが」にたどり着いた。

 

 

(正面に甲斐駒ヶ岳が見えるはずだが五里霧中)

 

 ゲートをくぐっても域内には人っ子一人いない。雨とあって駐車場も空っぽである。

 ところが「尾白の湯」に着いてオッたまげた。温泉の駐車場は満杯だった。

 

(平日の午前中だというのにヒマジンが多い) 

 

 別荘族のお約束、830円払って館内へ。

 中はおじいちゃん連中がワンサカワンサ。

 尾白の森に雨が降りゃイェイェエエイエイ、イェイェエイ、イイワ~、思わず歌も出ようというものだ。

 

 浴場は広くてとても快適。どこそこ「たかねの湯」と似た佇まいである。

 調べてみると「尾白の湯」の開業は2006年、「たかねの湯」が2005年だから設計者が同じなのかもしれない。

 

 さっそく噂の露天風呂「赤湯」に入ってみた。

 ここは「ナトリウム塩化物強塩温泉」というヤツで、その濃度は温泉基準の30倍という我が国で一番濃い温泉である。舐めてみるとメチャクチャ塩辛い。

 湯の色は赤というより茶褐色。「夜中に赤味噌を溶いてこっそり注いでいるらしい」というのは根も葉もない噂のようだ。

 

(雨のせいか湯温は39.6℃とやや低めだった 北杜市観光協会HPより

 

(ナトリウム含有量がすごい バリウムイオンは通常の30倍、リチウムイオン(電池か)、ストロンチウムイオンも通常の20倍)

 

 う~む。

 心地よい、と言えなくはないが、風呂嫌いの私にとっては高濃度ナトリウム塩化物強塩温泉だろうとアルカリ単純泉だろうと、風呂にかわりがあるじゃなし融けて流れりゃ皆同じ~、だ。

 

(富士の高嶺に降る雪も、京都先斗町に降る雪も~「お座敷小唄」1964松尾和子+和田弘とマヒナスターズ)

 

 「尾白の湯」にあえて難癖をつけるのであれば、綿棒が置いてないこと。浴場に綿棒がないのはトイレに紙がないのと同じことだと思うのだが。

 走行距離の点と綿棒の有無とで、八ヶ岳南麓日帰り温泉の王者はあっぱれ「たかねの湯」とあいなった。 

 

 八ヶ岳南麓日帰り温泉巡りシリーズ、これにて打ち止めにござります~。

 

                

(優勝祝賀会にて 弟弟子を見つめる照ノ富士の優しい表情といったら)

 

 新入幕の尊富士(伊勢ヶ濱部屋24歳)が足首の捻挫をおして見事初優勝を遂げた。

 お見事尊富士。おめでとう尊富士。

 

 新入幕力士の優勝は1914年(大正3年)5月場所の両国(9勝1休)以来110年ぶりの快挙だという。

 もっとも当時の大相撲は年4場所の10日制、しかも両国関は一門の力士とは対戦が組まれない時代に最大勢力を誇った出羽の海一門のお相撲さんだったからこれは参考記録というべきだろう。

 

 ちなみに新入幕力士の快挙という点では、1945年千代の山(のち横綱→九重親方)の新入幕10戦全勝という記録がある。当時は優勝決定戦がなく「同点上位優勝」だったため、もう一人の全勝力士横綱羽黒山が優勝となった。

 蛇足の蛇足だが、千代の山は横綱返上の申し立て(相撲界で唯一無二の椿事)、ピストル不法所持(親方時代大鵬、北の富士とともにハワイ巡業から持ち帰った)、出羽の海一門破門(九重部屋新設時 高砂一門に部屋ごと移籍)と相撲以外の部分で話題になることが多かった。

 

 その尊富士であるが、これからの1、2年が正念場だ。

 相撲ファンの由利さん、不破さんによると、角界には「25歳までに大関になれないと大成しない」という経験則があるのだという。

 

 今世紀に入ってからの歴代大関の昇進年齢を見ると、25歳までに大関に昇進した力士10人(現大関の豊昇龍、貴景勝、琴ノ若を除く)のうち横綱に昇進したのは7人。昇進率は70%に及んでいる。

 

 

 

 一方26歳以降に大関にあがった10人(現大関の霧島除く)のうち横綱までいけたのはわずか2人に過ぎない。

 

 これが真実だとすれば次代の横綱を担う人材は極めて限定され、幕内、十両を含めて、

 前頭2 熱海富士(21歳)

 前頭3 王鵬(24歳)

 前頭5 大の里(23歳)

 前頭17 尊富士(24歳)

 十両11 欧勝海(22歳)

 十両13 伯桜鵬(20歳)

の6人しかいないことになる。

 

(三賞受賞インタビューで健闘を称え合う尊富士と大の里 これからもよきライバルとなるだろう)

 

 彼らが大関、横綱と昇りつめたとしても別の試練が待っている。

 年寄株取得問題である。

 年寄株は総数が105と限定されていて、これを取得しないと日本相撲協会には在籍できないし、当然ながら部屋持ち親方にもなれない。

 

 現幕内力士から十両のベテランまでおおよそ50人の有資格者がいるとしよう。この力士たちが24歳~35歳の12年間に均等分布しているとすると、年間4人の引退者が年寄株を必要とすることになる。

 一方親方衆は昔と違って皆さん長生きだから、雇用延長も含めた70歳まで株を保有しているのが現状だ。つまり36~70歳までの35年間株を持ち続けることになるから、105人の親方衆がこれまた均等分布しているとすると70歳到達で年間に放出される株の数はわずか3に過ぎない

 

 こんな状況では豊山や逸ノ城が株を手に入れられずに角界を去ったのも理解できるし、照ノ富士が年寄株の取得に難渋しているのもよく分かる(注:伊勢ヶ濱親方、照ノ富士にとっては再来年の伊勢ヶ濱親方定年(=年寄株は保有できるが部屋は経営できない)までに照ノ富士が年寄株Xを取得、定年時点で伊勢ヶ濱名跡とXを交換して照ノ富士が伊勢ヶ濱部屋を承継するというのがベストシナリオ)。

 

 私の勝手な予想ではやがて豊昇龍、琴櫻(琴ノ若から改名)が横綱となり、その次の横綱は熱海富士、王鵬、大の里、尊富士、伯桜鵬の中で先に大関に上がった2人だろう。

 

 新伊勢ヶ濱親方(=照ノ富士)が定年を迎える33年後に伊勢ヶ濱部屋を継ぐのは尊富士だろうか、熱海富士だろうか。それともまだ生まれてもいない新星だろうか。

 

 鬼籍に入った私は知るよしもないが、そんな先のことも楽しみなのが今の大相撲だ。

 

 

(次に涙するのは大関昇進、横綱昇進、そして引退断髪式の時だろう)

 

               

 

 吉祥寺でゴルフのレッスンを受けた後「ハモニカ横丁」へ向かった。といっても100mも離れていない至近である。

 ハモニカ横丁は戦後の闇市の風情をどこそこ残した飲食店街で、1坪の極小店からせいぜい10坪ほどの店が100軒ほど蝟集している。

 中央線沿線にはおカミが歴史遺産として保全に努めているのではないかと邪推したくなるほど闇市臭のするエリアが残されている。例えば高円寺なら「きよ香」の周辺、阿佐ヶ谷は「友ちゃん」の辺り、荻窪は「邪宗門」界隈、西荻は「戎」の一帯。

 そんな中でもハモニカ横丁は最大の規模を誇っていて、しかも他の闇市遺産が風前の灯なのに比してここは盛況を極めている。

 

 この日の目的はハモニカ横丁の端っこにある「小ざさ」(地図の左上①)でお土産の最中を買うこと。

 八ヶ岳南麓は洋菓子に比べて和菓子の店が少ないから和菓子をお土産に持っていくと大層喜ばれる。しかも創業1951年のこの店は多い時には1日で4万個(!)の最中が売れるという繁盛店だからなおさらだ。

 

(小ざさの歴史は本になっている 2010ダイヤモンド社)

 

 幸い一番人気だという10個入り詰め合わせ(黒あん・白あん)をさほど並ばずに買うことができた。

 

 

 続いて向かったのは漬物の店「清水屋」(地図②)。

 

 

(この狭い通路は「祥和会通り」というらしい)

 

 「小ざさ」の行列を押しのけるようにして路地に入ったところにある清水屋もこれまた1坪の極小店だ。

 

(店をヒヤカシているような人物が店主)

 

 ここの漬物、特に糠漬けが実に美味い。

 店主(まだ若い)は毎日少しずつ漬け込んでいるようで、糠漬けは浅漬け、中漬け、古漬けと

3種類から選べる。私の好物はカブの浅漬け1個200円なり。

 

(1個でもイヤな顔をしないのがうれしい この日は白菜漬けも購入)

 

 買い物も終わったところで昼メシだ。

 ハモニカ横丁で私がよく通うのは寿司の「片口」(地図③)だが、この日は寒の戻しで底冷えがするものだから「ハモニカクイナ」(地図④)に向かった。

 

(ハモニカ横丁では大店の部類)

 

 ここは本来タコライスの店なのだが、ついでにやってるソーキそばが旨い。

 年に2、3回どういうわけだか沖縄そばが無性に食いたくなることがあるが、そういう時は迷わずここに来ている。

 

 こちらのソーキそばは「軟骨ソーキ」。スペアリブの軟骨がトロトロに溶けていてコラーゲンたっぷり(のような気がする)。

 

(コーレーグース(島唐辛子のタバスコ)をジャブジャブやると旨いんだな、これが)

 

 

(このままぜ~んぶ飲めちゃいます)

 

 旨い。

 それにしても麺は不味いのに沖縄そばってどうしてこうもそそられるのだろう。

 明日から八ヶ岳。

 お土産の最中と糠漬けを携えて豊かな気分で家路についた。

 

               

(神田川(東京・杉並)のソメイヨシノ 東京の開花予想は今日(24日)だがここいら辺の開花は少し遅れそう)

 

 春が来~た、春が来~た、どこへ来たって東京・杉並の我が家の庭である。

 2年前の引っ越しの時に植えたクリスマスローズが満開になった。

 

(詰まりすぎているのでそろそろ株分けしなくては)

 

 クリスマスローズはキンポウゲ科の多年草で、常緑、丈夫で寒さにも強いから二拠点居住の我が家にはぴったんこ。春の訪れの前の貴重な花である。 

 

 クレマチスも芽を吹きだした。

 

(枯れたような枝から芽が出てくるのが不思議)

 

 クレマチスもクリスマスローズと同じキンポウゲ科だが、どこが同類なのかさっぱり見当がつかない。クリスマスローズの花が盛りを過ぎるとクレマチスの出番になる。

 

 シンボルツリーのひとつとして植えたレモンの木も新芽を吹きだした。クンクンやってみるとレモンのいい匂いがする。

 

(レモンの葉はイモムシの大好物 暖かくなったら入念なチェックが必要)

 

 そんな春の息吹の中でうれしいサプライズがあった。

 昨年の6月に枯れてしまったはずのクレマチスが再び芽を吹いたのである。

 

 

 この場所に植えていたクレマチスは昨年の長雨で根元に水が溜まったせいで根腐れをおこし、地上から姿を消してしまった。

 その後工務店の監督に水はけを妨げる基礎コンクリート部分をハツってもらった際に、コヤシにはなるだろうとダメ元でフヤけた株を埋めておいたのだが、どっこい生きていたらしい。

(2023年6月の記事)

 

 生きものの生命力というものは大したもんだ。

 春を実感できて私の体内にも鬱勃たるパトスが湧いてきたようだ。

 

 

(ハツった穴に植えようとわざわざ長坂の綿半で買って持ち帰った後釜のクレマチス こいつの処遇をどうするか・・・)

 

               

(カラオケ「まねきねこ」)

 

 東京の自宅でサックスの練習ができなくなった。

 家内が外でチェックしたところ、窓や室内の扉を密閉しても音が漏れているらしい。もう少し上手くなるまでは自粛せざるをえまい。

 

 さあどうするか。

 三浦先生がいつもお使いになる吉祥寺の貸スタジオは1時間1100円。高いというほどではないが、自宅でタダで練習するのと比べると少々抵抗がある。

 

 そうだ、と思いついたのがカラオケボックスだ。

 私が時々利用する「まねきねこ」は午前11時までに入室すると「朝うた」とかでメチャクチャ安い。

 念のため「まねきねこ 楽器持ち込み」で調べてみると巨大楽器でなければOKのようなのでさっそく自主練習のために吉祥寺へ向かった。

 

(まねきねこの向かいはお世話になってるゴルフ練習場 私の吉祥寺ライフはこの半径50mほどの範囲で完結している)

 

 受付で念のために楽器を練習することを告げるとどうぞ、どうぞとのこと。

 ワンドリンク制なので「まねきねこ特製ハイボール(←やたら薄い)」を頼み、午前中の1時間半(午後に入ると高くなる)を借りることにした。

 

 いきなり下手なサックスを聞かれるのは恥ずかしい。まずは店員さんがハイボールを持ってくるまでカラオケでお茶を濁すことに。

「銀座カンカン娘(1949)」から始まって「あなただけを(1976あおい輝彦)」、「め組のひと(1983)」、「ダンシングヒーロー(1985)」なんてとこを矢継ぎ早にやっていると次第にノリノリになってきた。

 

 このままでは本末転倒だ。気をひき締めてサックス練習を開始した。

 

 

 先生に習ったばかりのタンギングを駆使して課題曲「一週間」にトライしたが、我ながらなかなかの出来栄えである。

 そうなると、

「次のステップはビリージョエルの New York state of mind(1976) なんかいいんじゃないの。サックスのソロがカッコイイし」てな妄想にかられ、さっそくカラオケで聴いてみた(冒頭の写真)。

 

 う~む。むせび泣くようなサックスが実によい。

 これはただ鑑賞するより唄った方が身に沁みるだろうということでサックスはいったん止めて再びカラオケへ。

 そうなると身体は正直だ。今度は新しい曲から古い方に向かってこれでもかとばかり、「恋(1980松山千春 新しいとは言えないな、これ))」、「わかってください(1976因幡晃)」、「襟裳岬(1974森進一版)」、「知床旅情(1965森繁版)」なんかを一気呵成に唄った。

 そうだ演歌をやってないじゃん、ということで「噂の女(1970クールファイブ)」、「酒よ(1988)」、「天城越え(1986)」、「北酒場(1982)」とさらに悪ノリ、ヤケクソで「虹と雪のバラード(1972)」、「二人の愛ランド(1984)」を続けざまに唸っていると、インターフォンが鳴った。

 

「あと10分で時間になりますが」

「いや、たしか1時間半でお願いしたはずですが」

「だ、か、ら。もう1時間20分経ってるんです~」

 

 そうだったの。あわててサックスをしまって会計へ。

 自動精算機の表示を見てオッたまげた。

 安いよ。安い~(←夢グループ風に)。

 

 

(本日のお代は酒代含めて815円なり) 

 

 結局サックスの練習は15分ほどで後の1時間15分は唄いまくりとなった次第。

 どっちが主役だか分からない状態になってしまったがまあよしとしよう。815円で楽しめるのだから、明日も明後日も来りゃあいいのである。

 

               

(大相撲春場所横綱照ノ富士は腰痛のため途中休場 

引退が旦夕に迫る中、はたして照ノ富士は師匠の伊勢ヶ濱親方が定年(=65歳 以降も5年間に限り協会嘱託として年寄株を保有できるが部屋持ち親方にはなれない)を迎える再来年までに年寄株を手に入れられるのだろうか)

 

 この3月末に全国100万人のサラリーマン諸氏が定年退職(+雇用延長終了)を迎える。

 長いことお勤めごくろうさまでした。

 定年からもうすぐ満6年になる私だが、朝のニュースで「中央線運転見合わせ」なんてのを見るといまだに胸が疼く。立ち往生した電車の中にはトイレを我慢して苦悶する同胞が少なからずいるに違いないのだ。

 

 そんな中のお一人ゴルフ友のAさんが晴れて定年退職を迎えることになった。

「3月末で定年退職です」

「長いことお疲れさまでした。60歳になられたのですね」

「いえ、65歳です」

 八ヶ岳南麓住民は概して若く見えるのだがAさんもその一人。パッと見にはせいぜい50代半ばにしか見えない。

 

 お祝いの記念品をお渡ししたいが、なにがいいだろう。

 会社の同僚一同で渡す記念品と違って個人で渡す場合には予算的な制約もあるし、お返しだなんだ気を遣わせない金額としては3000円前後で選ぶのがよいだろう。

 また、こういう時は自分のカネで買うことがなさそうなものを贈るのがよい。実用的ではあるがちょっと贅沢なもの、使い道がものすごく限定されているもの等々。

 

 男性の場合「もらいたくないもの」の筆頭が花である。はっきり言ってこれは有難迷惑だ。

(定年前に「花は受け取りません」宣言をしたっけ)

 

 酒とか酒器も定年退職祝いの定番だが、一応酒断ちをしているAさんに贈るのはいささか塩梅が悪い。他の食い物は「記念品」的なテイストが薄くてイマイチだ。

 

 そうなるとAさんの唯一の(かどうか分からないが)趣味であるゴルフ関連グッズがよいだろう。ところがいざ探してみると、適当な品はそうそう見つからない。

 ポロシャツなんかは値が嵩むし、趣味に合うかどうかリスクがある。

 距離を測る望遠鏡は喜んでもらえそうだが予算をはるかにオーバーしてしまう。

 ボールはだめ。どうせすぐ失くすんだから彼奴にはロストボールで十分。

 

 う~む。

 結局ゴルフグッズで選ぶのは断念した。

 そうだ、と思いついたのはAさんが好きなブランドから適当な品を選ぶこと。

 たしか PEARLY GATES のなんかを持ってたはず、というので調べてみるとよさそうなものがみつかった。

 

  ゴルフ模様のパンツである。値段はちょうど3000円。 

 

 

(パンツとしては高いが贈り物としては適当な値段)

 

 Aさんがこれを穿いてラウンドするところを想像するとちょっと笑えるが、普段使いにしなくても勝負パンツ(まあ入院の時とかだな)にしてもらえればよい。

 

 お渡しするのは定年退職1日前、3月最後の土曜日。

 パンツを受け取ったAさんがどんな顔をするか、今から楽しみだ。

 

               

(ニューハートワタナベ国際病院 開業2014年)

 

 アルトサックスの練習でにわかに不安になった肺の機能不全。

 「杉並区 肺CT検査」で検索してみるといくつかのクリニックがヒットし、その中のひとつ「ニューハートワタナベ国際病院」(杉並区浜田山)が明日いらっしゃい、とのことだったのでさっそくCT検査を受けに行ってきた。

 

 今でこそタバコは一切吸わないが、過去30年ほどヘビースモーカーだった私の肺はひどく傷んでいるはずだ。

 10なん年前に読んだ「死ぬ時に後悔すること25」(著者:大津秀一=過去1000人以上の患者を看取った終末医療の専門医)によると、死の床についた患者が後悔することの2番目が「タバコを吸ったこと」だという。それほど末期肺がん患者の苦しみは凄まじいらしい。

 他の痛みならモルヒネなどの苦痛緩和治療で多少はやわらぐだろうが、肺がんで少しずつ窒息死していく苦痛はなかなか取り除けるものでないのは想像がつく。

 

 肺がんだったら有無をいわさず即日入院しちゃお、私は眦を決して病院に飛び込んだ。

 ホテルのロビーのようなシャレた待合室の壁のモニターに「本日の担当医」が掲示されていた。

 

 

 

 どうやら循環器内科・芝山納恵瑠先生が私の肺を診てくださるらしい。

 ノエル先生はきっとクリスマスに生まれたんだよ。

 時間がかかっても患者のためにベストを尽くすステキな女性なんだろうな。

 

 そんな夢想はスマホで病院のHPを見た途端に粉々に砕け散った。

 「医師紹介」の写真を見たら芝山センセイは男だった。ったく紛らわしい名前つけるんじゃないっての。

 

 さほど待たずにCT検査を受け、担当医の呼び出しを待った。

 担当は石川紀彦先生。これは男のセンセイに決まってる。

 それはともかく、先生は肺の専門医ではなくて甲状腺のセンセイなのが気になる。今日は期待を裏切られることが続いていて、前途に暗雲が漂い始めた。

 

 先生の呼び出しで診察室に入ると、CT写真がずらりと並んでいた。

 

(脂肪の厚さにオッたまげた まるで安物のロースハムだ)

 

「ふ~む、影はありませんね。ガンの心配はないでしょう」

「・・・(ホントかなあ)」

「(こいつオレが甲状腺担当だから疑ってやがるな)念のために後で放射線技師なんかの意見も確認しておきますから大丈夫です」

 

(心臓には健気にもステントがちゃんとついていた)

 

「それではこれにて・・・」

「一件落着~」

 

 あ~よかった。

 サックスの音が出ないのは単に下手クソだからなのね。

 

(晴れてゴールド会員に 診察代はめちゃくちゃ安かった)

 

               

 

 先日の雪で倒れた八ヶ岳南麓の我が家のエゴノキだが、「ゴルフはしないが反省はする」のでおなじみの飲みトモAさんが週末に細かく切ってくれることになり、LINEでやりとりした。

 

(「タダでいい」というAさんにそうはいきませんと返信しながらもこちらから金額を切り出さないあたりがいかにも小さい)

 

(800円→1000円の値上げ・・・)

 

 Aさんが検分を済ませ、この程度ならとそのまま切断を終えたであろう頃、東京の私は近所の飲みトモBさんと井の頭線三鷹台駅前の蕎麦屋「美たか庵」に向かっていた。

 

 

 「美たか庵」は写真のとおりもうひとつパッとしない蕎麦屋で(失礼)、私としてはせっかくなら吉祥寺か西荻辺りに行きたいところだが、女将が小学校だか中学校だかの同級生ということでBさんはなにかにつけここに来たがる。

 

 この日はBさん宅の2階部分を新たに借りることになったCさんとの顔合わせ会だ。

 何故私がBさんの店子と顔合わせをしなくてはならないのかイマイチ理解に苦しむが、2年前に私が引っ越してきた時に引っ越し祝いをくれ、さらに宴席に誘ってくれたBさんの誘いとあっては断るわけにはいかない。

 

 Cさんは九州のご出身。杉並育ちの奥様のご実家の近くに住むことになったらしい。

 

 

(ちくわの磯辺揚げ 今日はハレの日だからさ)

 

「奥さんはどこの中学だったんですか」

「〇〇中です」

「え、じゃあオレの後輩だ~!」

 Bさんの喜ぶことといったら。この時点でCさんは「店子」から「かわいい後輩のダンナ」に格上げされた(格下げ、かな)。

 

 

(川エビの唐揚げ 先輩後輩だしここはやはり揚げ物でしょ)

 

「じゃあこの辺りにも多少は土地鑑があるんだね」

「住んだことは今までないんですが、〇〇神社の氏子団体に入ってます」

「××会?あすこの会長の△△は知ってる?」

「よく知ってます。先週も飲みました」

「なんだよ~、アイツ俺の同級生なんだよ!今度3人で飲もうや」

 

 この時点でCさんは「後輩のダンナ」からあっぱれ舎弟扱いとなった。

 これから先の店子生活でCさんは階下の飲み会にしょっちゅう誘われるだろう。

「ちょっとビール買ってきてよ」なんてコキ使われるんだろうなあ、そんな暗黒の未来が待っているとは露知らず磯辺揚げを無心にほおばるCさんに私は心から同情した。

 

(揚げ物の王様カキフライ 油をたっぷり吸った衣が妖しい光を放つ この後揚げ物のラスボス鶏の唐揚げ2人前がやってくる)

 

 そうこうするうちに八ヶ岳南麓のAさんから作業終了の連絡がきた。

 

(切断だけでなく撤去もやってくれた模様)

 

 ああ、ありがたや飲みトモ(八ヶ岳南麓の)。

 一方こなたの飲みトモにはこれといった取柄はないが、それでもこうして声をかけてくれて酒を楽しめるのは考えてみればありがたいことだ。

 

 東京の近所の飲みトモ、八ヶ岳南麓の近所の飲みトモ、ありがたい二人の飲みトモのおかげで今日もいい一日となった。

 

(「美たか庵」名物「井の頭うどん」と格闘するBさん)