「早く飲ませないと」

 裕太はやや、焦っている。

『わかった。そう慌てるな』

龍神がそう言うと、ズルリ…と、裕太の前に近づく。

『その子に、その中身で満たしてやりなさい』

今さらのように言う。

「それは、わかっているよ」

(だから、早く!)

ジリジリといら立ちを感じていると

『だが、その前に!』

ピシャリと、裕太の声をさえぎる。

『その前に…大切なことを、一つ伝えておかないといけない。

 その子を助けるためには…キミにも一つ、しないといけない

 ことがあるんだ…』

そこまで一気に言うと、フッと言葉を切る。

「わかっているよ!だから…こうして水を探して、持って来た

 んじゃあないか」

いいから、早く言ってよ!

一刻も早く、ジュンペイに飲ませたくて、裕太はじれたように

声を張り上げる。

 龍神は、ジロリと鋭いまなざしを向けると…

『人の話は、最後まで聞け!』

ピシャリと厳しい声が響く。

「あっ…」

これまでになく、きつい言い方だったので、裕太はあわてて

口を閉ざす。

『確かに君は…水をくんで来てくれた。

 だが、あの子を目覚めさせるには…キミは、自分の大切な

 ものを、差し出さないといけない』

重々しい声が、裕太にそう告げる。

「えっ、なに?」

 そんなことは、初耳だ。

今まで誰も、教えてはくれなかった。

もしもこの場で、水を持っていなけれぼ、竜神に食ってかかる

ところだった。

 

 

 

 

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