『少林寺』三部作でブレイクを果たしたジェット・リーが満を持して監督も務めた格闘アクション。

日中戦争後の中国。日本軍を撃破し、意気揚々と故郷に凱旋したジェットだったが、故郷は戦争後の租界統治でアメリカ軍が駐留し、横暴の限りを尽くしていた。

天涯孤独のジェットは共に戦争に参加した兄貴分のチョウを訪ねる。
戦闘の爆風によって破片を腰にくらい負傷して後遺症の残るチョウは除隊後、人力車夫として生計をたてていた。

久しぶりの帰郷でかつての戦友たちと町にあるクラブへ飲みに行ったジェットたちだが、そこはアメリカ海兵隊がたむろし、中国人相手にボクシングで叩きのめしたり、ホステスたちに暴行したりと傍若無人の振る舞いをしていた。

ジェットの仲間の一人が海兵隊のベイリーに挑発されたことがきっかけとなり、中国人としての意地を示すかのようにボクシングルールでリングに上がるジェット。
足枷のようなルールに縛られながらも遂にはベイリーを返り討ちにするのだが、それを片隅でじっと見ている人物がいた。

それから数日後。チョウはアメリカ人と娼婦を客として乗せるが、その娼婦はチョウの娘であった。
ばつの悪そうな娘をよそにいちゃつくアメリカ人はあのベイリー。娘の様子に遂にキレるチョウだが、反対にベイリーに痛めつけられたチョウは頭に大怪我を負い病院に運ばれてしまう。

入院し、生活ができない彼を見、ジェットは代わりに人力車夫として働くのだが、彼に恨みをもつベイリーたちによって追い回された挙げ句に人力車を壊されてしまう。
生活の糧を失ったジェットはチョウの入院費や生活費を稼ぐために自らの血を売ったり、クラブにいき、ボクシングの殴られ役になってベイリーに殴られたりと身を削ってお金を稼いでいた。

そんなある日、ジェットはボクシングの殴られ役に行くとリングにはあのクラブにいた人物が立っていた。
海兵隊の指揮官であるハン大佐がジェットの腕をみ、真剣勝負を挑んできたのだ。

ボクシングの達人であるハンとカンフーの使い手であるジェットの対決は実力伯仲ながら場外戦まで雪崩れ込み、仲間を巻き込んでの大乱戦となり痛み分けとなるが、ジェットは重傷を負ってしまう。
そんな彼を助けたのはいつぞやのチョウに責められていたレイであった。

退院したチョウはジェットが怪我したと聞き、駆けつけるがそこには自分の娘レイがいた。
レイが娼婦になったことから絶縁状態となっていたチョウはレイを罵倒し追い出すのだが、そんなチョウにジェットも反論し、出ていく。

本音は復縁したいレイの気持ちを知り、ジェットは一芝居うってレイとチョウを仲直りさせる。
そんな仲直りの祝いとしてレイは祝杯のためのごちそうの食材を買いに出掛けるのだが、そこであのベイリーたちに襲われてしまう。

仲間からレイがベイリーたちに拐われたことを知ったジェットたちは彼らを追うが、追うジェットの前にハン大佐が立ちはだかり、リングでの試合の決着を迫る。
一方で暴行されそうになっていたレイを助けに入ったチョウだったが、ベイリーの反撃にあい殴られた上に高所から投げ飛ばされ転落死し、自分を守るために逃げようとしたレイも飛び降りて墜落、死亡する。

激昂するジェットだが、ハン大佐やベイリー共々警察に逮捕されてしまう。
ベイリーの殺人を主張する彼だが、アメリカ軍の言いなりの警察はジェットの意見に耳を貸さず、彼の目の前で捜査もせず釈放するばかりか、暴れるジェットを集団で痛めつけ、小便までかける屈辱を与えるのだった。

その夜、意を決したジェットは警察を脱獄。
ハン大佐たちの前に立ちはだかる。
全てをかけて復讐に燃える彼はチョウたちの仇を討つため戦いを挑むのだが…

ジェット・リーが自ら脚本、監督まで手掛けて挑んだ意欲作。

『少林寺』三部作で一躍希代のスターとなった彼が次のステップとして挑んだのが本作なのだが、実はこの時をきっかけに暗黒時代に突入する。
それを象徴するかのように本作は全体的に彼の幼少の頃からの苦労を表すかのような陰湿さに満ちていて、とにかく痛々しい空気感が漂う。

ジェット・リーは全編に渡ってとにかく試練とトラブルの連続で、最後の最後まで救われることのない展開となっていて、観ているこちらまで鬱的気分になってしまいそうである。
本作から始まり、次の『ドラゴン・ファイト』に至るまで彼の明るい笑顔の裏にある暗黒面が作品に多大なる影響を与えているのは間違いないだろう。

一説ではこの時の彼は彼の名声に群がる悪徳ブローカーたちに蝕まれていて、裏社会とも関連があり、関係者が実際に不審な死を遂げたこともあったらしい。それを思うと作品の暗さも分からないでもないか。

肝心のアクションであるが、ジェット・リー自体は若い頃であり、動きもキレがある。アクション監督はド派手な危険スタントを得意とする徐小明ということもあり、高所からのスタントにも積極的。
格闘アクションとしてはカンフーの流麗さと違い、現代アクションのストリートファイトスタイルに近い。アクションとしてのセールスポイントを上げるため、敵役には本物の格闘家でもあるパオロ・トチャやハン大佐役のボクシング王者カール・ロナウド・ピターゼンなどを配役したものの、ジェット・リーとは格闘アクションとしてはミスマッチとなっている。

どう見てもジェット・リーの動きにはついていけておらず、明らかにジェットがレベルを落として付き合ってる感がするのだ。
そんなミスマッチ感もあってか最大の見所となるクライマックスの復讐戦ではパオロ・トチャは何もできないままジェットに瞬殺され、対カール戦では巨大スパナや斧、ハンマーなどを使ったチャンバラ格闘になってしまっていて、格闘シーンとしての見所を削いでしまっている。

こうしてどこまでも陰鬱な印象漂う作品ではあるが、後のリー作品では見ることのできないレアな特徴として、本作のリーはとにかく肉体美を強調する。
『少林寺』時代よりもビルドアップして肉体的には一番マッチョな時かと思うが、タオル一枚で走り回ったり、胸をはだけさせたりととにかく肉体美サービスが多い。
ただクライマックスはなぜか黄色のトレーナーにオーバーオールという謎のファッションではあるが(笑)

ジェット・リーが不遇の時代に陥るきっかけとなった作品として、ファンの間でも不評なのだが、ジェット・リー自体のアクションレベルは高いので、ある意味ジェット・リー好きならばおさえておきたいレア作品である。

評価…★★★
(ジェット・リーの心の闇を具現化したかのような陰鬱アクション作品(^^;)