邦画界を代表する千葉真一率いるアクショングループ『JAC 』と角川映画がタッグを組んで挑んだ時代劇スペクタクルアクション。

戦国乱世の時代。強力な大名三好氏に仕える家老の松永久秀(弾正)はその野心の高さから下克上の機会を狙っていた。
更に彼は主君の三好義興の正室である右京太夫に横恋慕し、我が物にしたい欲望に駆られていた。

そんな彼のどす黒い欲望を叶えんと何処よりきた不気味な妖術士『果心居士』は配下である5人の妖坊を久秀にあずけ、右京太夫と天下を取るための邪法を促す。

それは右京太夫と同じ顔、肉体を持つ生娘の涙を使い惚れ薬を精製して飲ませること。
さっそく久秀は妖坊たちに命じ、その娘を拉致しにむかう。

右京太夫と同じ顔をもつ伊賀のくの一篝火は幼馴染みの笛吹城太郎と忍としての掟を破るほど互いを想いあっていたが、そこに妖坊たちが現れ、ひとりが放った毒液によって城太郎は倒され、篝火は連れ去られてしまう。

仮死の術で命をとりとめていた城太郎であったが、敵は思いの外強大であった。
篝火奪還の復讐に燃える城太郎だが、伊賀の頭領である服部半蔵は彼を破門する。しかしそれは破門されることで伊賀に被害が及ばぬようにという配慮でもあった。

敵の手に落ちた篝火は自らが犯されることにより久秀の野望に荷担することに耐えられず、自ら首を切断して果てるが、妖坊たちは久秀の愛室の首を切断しすげ替えることで篝火を生き返らせる。
かくして妖坊たちに犯され凌辱された首をすげ替えられた篝火は絶望の涙を流す。
久秀の名器『平蜘蛛』で篝火の涙をもとに作られた茶の効果は絶大で、たちまちのうちに婦女は淫乱の気を纏う強力さであった。

しかし、それを阻止せんとボロボロの篝火は平蜘蛛を持って逃亡。
そして城太郎と落ち合うのだか、凌辱された身であり、弱りきった彼女は追いかけてきた妖坊たちの攻撃により致命傷を負い亡くなってしまう。

怒りに震える城太郎だが、不死の術を使う5人を相手に歯がたたず、倒されるも何者かによって助け出される。
目覚めた城太郎は不死の妖坊たちの秘密を探り、篝火の復讐を狙う。

一方、久秀は計画通りに主君と右京太夫を東大寺に呼び、主君を暗殺して、右京太夫を手込めにしようとする計画を実行するが、そこに隠れていた城太郎が襲いかかる。周りには弾正の息のかかった刺客たちが現れ、大混乱となる中、城太郎は右京太夫を連れて逃げるのだが、敵に囲まれた二人は火中の中に消える。

焼け落ちた東大寺。首の無くなった大仏の中に二人は息を潜めていた。
弱っていた右京太夫を助けるため、城太郎は献身的に看護をするのだが、それは遂に妖坊たちの知るとことなる。
間一髪逃げ出す二人。

しかし妖坊たちの追撃は激しく、城太郎も二人を倒すが力尽き敵の手に落ちてしまう。
城太郎に味方する謎の黒衣の騎馬集団に助けられた右京太夫は主君に久秀の野望を告げるが、彼に信頼をおく義興は全く聞く耳を持たず、失望する。

意を決した彼女は拷問され囚われている城太郎を敵の女忍者漁火になりすまし、助けだすのだが、そこにも妖坊のひとりが立ち塞がる。
手負いの城太郎が何とか倒すが、城内は右京太夫の失踪と城太郎が逃げ出したことで動揺が走っていた。

妖坊たちの追撃の他所で、久秀は鬼火の策略で右京太夫になりすまして義興自体を罠にはめ、国を乗っ取る計画をたてる。
かくして鬼火の色香に惑わされた義興は鬼火たちの傀儡となってしまうが、本物の右京太夫が戻り、錯乱状態となった義興は乱心して自害。
その混乱に乗じた久秀は下克上を発動して全権を掌握し、右京太夫も捕まえる。

惚れ薬を強引に右京太夫に飲ませようとする久秀。しかしそこに復活した城太郎が彼女を救うために居城に襲いかかる。
城太郎は妖坊と久秀に最後の戦いを挑むのだが、その背後にはあの果心居士が待ち受けていた。
果たして城太郎と右京太夫の運命は…

SF 時代劇作品の原作としても知られる山田風太郎原作の荒唐無稽な忍者アクション作品。

山田風太郎といえば史実をヒントに荒唐無稽な時代劇アクションなど数々の忍者時代劇作品などで知られる作家だが、本作はその2作目の発表作品の実写化である。

主演はJAC きってのアクションスターだった真田広之…であるが、この頃から演技派の道を模索しはじめており、JAC においては最後の主演となっている。
ヒロインとして共演するのは角川三人娘の末っ子である渡辺典子。
本作がデビュー作となる中で、清楚な右京太夫、悪女の鬼火、くの一の篝火という三役を務める大抜擢。新人とはいえセミヌードを披露する体当たりぶりで堂々の主演を果たした。

他にもJAC と角川のズブズブ関係を示すような千葉真一が共演して美味しいところを持っていく他、ギラつく悪役として中尾彬、不気味な妖術士果心居士に成田三樹夫が飄々とした色で演じ、妖坊主たちの中には元プロレスラーのストロング金剛の姿も。

更に驚くべきはこの妖坊主たちの中にはあの日本一の斬られ役としてギネスにも載っている福本清三がおり、台詞も多めの重要な役どころで出演している。

当時の角川時代劇といえば『魔界転生』などに代表される残酷描写とソードアクション、そしてエロスシーンを兼ね備えたエログロアクション路線であったが、本作もその系統にのっており、いわゆる脱ぎ要員的な立場で、日活ロマンポルノ出身から美保純と風祭ゆきが出演し、美保純は凌辱される篝火の役として迫真の艶技をみせ、風祭ゆきは妖坊主の最強の刺客として魔性の色香とアクションをみせている。

こうした豪華な主演陣が揃うなかで期待されるアクションであるが、中心となるのはやはり真田広之である。
忍者アクションはJAC の十八番中の十八番であり、その代表格が真田広之なのだが、後期になると大規模なガジェットに頼り、肉弾戦のアクションは影を潜めつつあった。
本作においてはJAC における最後のアクションということで香港スターにも負けない鋭い蹴りなども見せるものの、殆どは大見得をきるようなソードアクションが主体。

期待された対福本清三もあっさり斬られてしまうし、対佐藤蛾次郎戦も水中にかくれて何をしてるのか分からずじまい。
唯一期待された対ストロング金剛戦ではいきなりの無音処理で始まり、金剛がプロレス技を見せるも、真田広之に両目を潰されると間抜けな自滅で死亡してしまう。

このように敵が結構強大な風に描かれる割りには、間がもたなくなると雑に処理されてしまう気があり、アクションの中心となるであろう城太郎対妖坊主たちの決戦もグダグダな感じになってしまっている。

ちなみにラスボスとして出てくる果心居士であるが、こちらはもはや蛇足に近い感じがする。
二人の愛を確かめるとかいう割りにはそそのかしたのは果心居士本人であり、一応その史実をそこまで汚すことなく落とし込んだのは良かったとしよう。

本作での最大の見所は豪華なセットを惜しげもなく破壊しつくす破天荒なシーンである。
史実では東大寺の大仏の頭部が破壊されたとのことだが、本作も本物そっくりのセットで実際に火をつけて撮影されたらしく、首の取れるところは一代シークエンスと化している。

元の原作はまだエログロ度が高く、荒唐無稽さも甚だしい内容であった。
今では大女優でもある美保純の初々しさ残るヌードも鮮烈。

アクションに関しては総じて目を見張るようなシーンがあまりなく、期待されていた真田広之のアクションも足払い系くらいしかみせておらず過度に期待するのは禁物。

そして元々原作も破綻したストーリー展開であったが、実写化の本作はその壮大な話を2時間近くで纏めるというのもムリなものがある。
クライマックスの果心居士との対決ももはや安いメロドロマを見ているようで、これは果心居士でなくてもやる気でないかんじになってしまいそうである。
チープながらも首を切り落とすというグロシーンもあり、そもそもが子どもにはオススメできない代物。

山田風太郎原作らしい破天荒なアクション内容ではあるが、スタントやガジェットに力を入れすぎて、格闘シーンにはそこまで熱がないように覚えた。
そこにもっと真田広之と戦える人間を用意するなどの配慮があれば、アクション映画としてまだブレイクしていたかもしれない(^ω^)

評価…★★★
(渡辺典子の絶品の可愛さもいいが、ロマンポルノ出身の美保純や風祭ゆきの体当たりぶりも注目。千葉ちゃんはもはや何も言うまい(^-^;)