5月14日に付き合い始めた娘と彼は、毎月14日に、二人だけで小さなお祝いをしていた。
ある月の14日。
お気に入りのバーガー屋さんでお祝いすることにした二人。
その帰り道、手を繋いで歩いていると、5、6歳くらいの小さな女の子が、二人に近づいてきた。
女の子は、手の中に持っていたものを差し出して言う。
「これ、貰ってくれますか?」
女の子の手の中にあったのは、ハートの絵が描かれた小石。
彼女は、その小石を「ラブロック」と呼んでいた。
娘が、
「貰ってもいいの?」と聞くと、女の子は頷いて、
「私、最近思うんです。
世の中に、愛が少なくなってるなって。
特に、
トランプが大統領になってから・・・。」
女の子は、ラブロックをできるだけ沢山の人に渡して、愛のある世界を取り戻したいと言っていたという。
わずか5,6歳にして政治の知識もあるとは・・・・。
近い将来、こういう子が大統領になってくれることを願う。
*************
娘が大学へ向かう準備をしていた時、危なくラブロックを自分の机の上に置き忘れて行きそうになった。
彼がそれに気が付き、ラブロックを娘に渡しながら言う。
「忘れちゃだめだよ。
ラブロックのことも。
僕のことも。」
大学が始まり、勉強も、慣れない寮生活も大変で、心の余裕がない時も多い二人。
時々、お互いの言葉がトゲトゲしくなり、傷ついてしまうことも・・・・。
それでも、何か困った事があると、娘は彼に、彼は娘に一番先に相談している。
ラブロックも彼も、暫く忘れることはないようだ。