今のところは、まだジュンペイには大きな変化が見られない。
ただ、顔色がよくなったくらいだ。
「全然目を覚まさないけど、本当に大丈夫?」
思わず裕太が、声を上げる。
さっきくんできた水は、もうなくなってしまった。
(これで何も起こらなかったら、また取りにいかないといけないの
だろうか?)
ジリジリとした、焦りも感じながら、ジュンペイの反応を待つ。
「それで…考えてくれたか?」
いきなり声が聞こえる。
「えっ?」
何のこと?
もしかして、聞き間違えたのか?
すっかり裕太は、さっき龍神と話していたことを、忘れていた。
『だから、言っただろ?
あの子を助けるためには…その代わりになるものが、必要なんだ』
「えっ?」
にわかには、信じられない言葉が、裕太の頭に響く。
「代わりになるもの?」
どういうこと?
裕太は空っぽになった花入れを持ったまま、呆然とする。
『だから…キミの大切なものだ』
まさか、対価を差し出せってこと?
何で、そんなことを要求するのか?
こんな…物々交換みたいなことを、本当にしないと
いけないのか?
どうにも納得できなくて、裕太はイラついた顔になる。
『まぁ…キミの気持ちもわかるが…これは決まりなんだ』
「きまり?」
なんで、こんな所で、決まりだの、ルールだのが存在するんだ?
(人が住んでいるわけでもないのに…)
どうしても、おかしいと裕太は思う。