hanana

二度目の冬眠から覚めました。投稿も復活します。
日本画、水墨画、本、散歩、旅行など自分用の乱文備忘録です。

●実践女子大香雪記念資料館「中国美術史入門」

2018-01-30 | Art

先日の表参道の本の場所で「月光礼賛」(日記)を拝見した日、渋谷の実践女子大学 香雪記念資料館へ。

1月31日「中国美術史入門展」が開催中。

 

毎年、こちらの美学美術史学科の中国美術史入門の授業の一環として、展示されているものです。

前期と後期の2回開催、前期は主に宋・元画(一昨年の日記はこちら)、後期の今は明・清の画。

複製ですが、原寸大で精緻。台湾の故宮博物院を中心とする名品にて、簡潔に中国の美術史を学べる、貴重な機会。

石濤、八大山人、董其昌、倪瓚、黄公望、惲 寿平、、と、昨年の泉屋博古館や静嘉堂文庫の明清絵画展のおさらいにもなりました。(展示室は大学の建物内ですので、入り口で記名。女子大ですが、もちろん男性の方も観ていらっしゃいました。)

以下備忘録です。

なかでも美人画の流れが興味深い。東博東洋館で見た思い当たる絵があり、ちょっと嬉しい。

美人画も、政治や社会の変化を反映している。

唐:華やかな宮廷文化を反映した美人。豊満系の女性像が多し。一流画家が活躍した。

宋:文人政治によって儒教的価値観。山水や花鳥がメインに。女性は細い姿が好んで描かれた。

元:白描画

明:すたれていた美人画が再興。明末期には独特の美人画。

清:美人を中心に据え、(はかなさ通り越して)病的な美人画が描かれるように。

 

いくつかメモと印象。(展示リストは文末に。)

「宮廷図」作者不明 唐8世紀 :琵琶、笙、筝などの楽者の真ん中に卓を囲む婦人たち。呑んでぐでっとくだまいている。けだるく退廃的な様子が、背景なしでしらじらと浮かんでいる。「くつろぐ姿」は、唐代に流行ったそう。

 

 ・丹楓ゆう鹿図 作者不明 五代 10世紀 :不思議な作。彩色の花木と、わずかなスキマさえつくらない水墨の透けるような鹿。このように余白なく埋め尽くしているのはほかにない。彩色、水墨で山水と花鳥が融合した。まだジャンルが未文明だったからこそ存在しえた。自然描写と装飾性をこのように併せ持つ画は、のちの中国絵画からは姿を消した。木や鹿は北方の風土を示す。

 

 ・文同(1018~1079)「墨竹図」北宋 11世紀中頃: 墨竹画の創始者。蘇軾のいとこ。画面を斜めに下がってくる枝は、最後には上へ伸びあがり、起死回生のねばりを見せる。濃淡が巧み。こののち日本での中国でも多く描かれた竹の元祖がこれかと思うと感慨。濃淡に留意しつつもの、筆のキレ。泉屋博古館で見た、武士が墨竹を描いたのもわかるような。

 

・蘇漢臣「秋庭戯嬰図」南宋 12世紀後半 :ふっくらぽちゃっとしたお姉さん(6、7才くらい?)と弟(3、4才?)がかわいい。菊と牡丹が写実的。真ん中やや右寄りに細高い岩山が画面にぬおっと立ち、永遠な感じ。よって子供たちの単ににかわいいだけの絵にしていないところが、売れっ子の計算??。子(男)供を描くのは子孫繁栄の願いで人気画題。人物をゆったりととらえるのは北宋の名残りで、上部を大きく開けるのは南宋風。

 

・劉松年「羅漢図」1207 南宋 :沙羅双樹、透明な頭光、桃を持つテナガザル。桃がザクロっぽい。インド風風貌の羅漢に、侍者はあっさりした東アジア風の顔。細密な描き方が異彩。

 

・王冕(おうべん)「南枝春早図」1353年 元: 墨梅は南宋からの人気画題だが、宋代の梅は枝の鋭さに主眼を置く。一方これは花を増やし生命力にあふれ、新たな受容層の広がりと好みが見て取れる。花がびっしりと重なるほど。枝は自由にくねり、伸び、まさに生命賛歌のような画。

 

・辺文進「三友百禽図」1413 明:松竹梅の三友。鳥がいっぱい。スネイデルスの鳥のコンサートのよう。

 

・文徴明「湘君湘婦人図」1517 明:文人ならではの独特さ。堯帝の娘二人。夫の舜帝の後を追って身投げし女神になる。三日月の様に流れるようなライン。仇英に彩色をさせたが気に入らず。

 

 ・石濤、王原祁「蘭竹図」1691清:石濤が竹、王原祁が後から蘭石を補い描いた。二人の都での接点を示す作。寂獏とした情景は珍しい。竹はたっぷり水を含ませた筆、岩は乾いた筆。風をが抜ける。

 

キリがないのでこの辺にいたします。とにかく全てが名品中の名品。大家中の大家。少しずつ勉強していきたく思います。

 

 



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