【読書感想】真賀田四季に迫る「四季シリーズ」「春」「夏」「秋」「冬」 著:森博嗣

四季 春夏秋冬のイメージ

森博嗣のミステリー小説「四季シリーズ」の四部作「春」「夏」「秋」「冬」を読んだ感想&紹介。※記事の一部に表示を選択できるネタバレ要素があるのでご注意ください。

作品情報

  • ジャンル:ミステリー
  • 著者名:森博嗣く
  • サブタイトル:The Four Seasons
  • 初出:2003年9月~2004年3月

作品内容

あらすじ

「すべてがFになる」から始まる推理小説シリーズ「S&Mシリーズ」や、続編「Vシリーズ」にも登場する孤高の天才科学者「真賀田四季」の幼少からの軌跡を描いた4部作。

関連シリーズ作品では触れられなかった事件の裏側・真相や、真賀田四季の真の意図などが語られる…。

作品紹介

基本的には、S&MシリーズやVシリーズで明かされなかった謎を補完しながら、ある意味で人間を超越した「真賀田四季」という天才の目覚め、成長、そして行き着く先が描かれていく。

シリーズ1作目「春」は、真賀田四季の幼少期からの生い立ちが。2作目「夏」では、13~14才の四季が経験する「恋」や「すべてがFになる」では全てが明かされなかった妃真加島の研究所で起きた過去の事件の詳細が語られる。

3作目「秋」では、S&Mシリーズの最終作「有限と微小のパン」のその後のお話が関連シリーズのメインキャストも登場しながら展開。そして、最終作の4作目「冬」では、天才過ぎるがゆえに孤独であった真賀田四季の心の奥底に潜むものが明かされる。




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ネタバレ考察(開閉式)

※ネタバレ注意(ここをクリックして開閉)※

一応は殺人事件が起きて推理要素もあるのだけど、核となっているのは真賀田四季の幼少期からの天才児ぶりなど生い立ちで、どのように特殊な人格形成が行われたのか描いている感じだった。雰囲気的にはやや推理要素有りのミステリー作品。

四季はあっという間に他人の人格をトレースして見切ると、冷徹な合理で以後得るものは無いと遠ざけたりする一方で、"肉体"がもたらす処理できない感情を自分の中で創り出した別人格に受け持たせて人との繋がりを持とうとする矛盾も抱えているようだった。

Vシリーズのラスト「赤緑黒白」で描かれた、瀬在丸紅子と"栗本其志雄"と名乗る真賀田四季の出会いを別角度から知ることができて面白い!他にも各務亜樹良や、赤ちゃん時代の西之園萌絵もちょびっと登場!

13~14才の四季が妃真加島の研究所で両親を殺害するに至った過程が描かれている。叔父「新藤清二」との恋、瀬在丸紅子との再会、保呂草潤平に拉致・監禁されるなど様々な経験から、思春期の恋する乙女チックな感情と天才思考の狭間に生じた結果が真賀田家の暗い因縁を引き寄せてしまったのかも。

四季の恋物語の印象が強くて、何だかこの「夏」は恋愛小説みたいな気もしたなあ(;´∀`)

S&Mシリーズの「犀川創平」「西之園萌絵」、Vシリーズの「瀬在丸紅子」「保呂草潤平」「各務亜樹良」などが登場するファンサービス満点の3作目「秋」。時代設定はVシリーズ8作目「捩れ屋敷の利鈍」の少し後。

「すべてがFになる」で「なぜ真賀田四季は妃真加島の研究所から(殺人を伴いながら)脱出する必要があったのか」という謎に答えが出される。事故(自殺)で死んでしまった娘を救う(生きた細胞を持ち出してクローン(?)として再生させる)ためだったという、何ともすごいお話でここから話がSFっぽくなっていく。

短編集「虚空の逆マトリクス」の「いつ入れ替わった?」で、犀川から指輪を贈られた萌絵がついに紅子と邂逅!保呂草と各務も何やかんやで良い感じになり、四季がS&MやVシリーズのキャラクター達と"直接的"に絡むのは、この「秋」で完了する。

天才過ぎて時間や空間を超越した結果、他人にトレースしてもらわないと自分を認識できないというのは、何とも妙な状況だろうなあ。

どう読み解くのか非常に難しい最終作の「冬」。時代設定は前作「秋」から少なくとも数十年後、作中に「百年が過ぎた」という表現も出てくるので22世紀以降とかでも不思議ではない未来に生きている真賀田四季の話。SFっぽい!

犀川創平とのやりとりは真賀田四季の脳内で過去が"再現"されているのもので、四季が若かったころに接した人々は既に皆いない(死んでる)と思われる。四季の体はまだ"人"のようだから、ウォーカロンとの「今度、私が起きたとき」という会話からも延命のためのコールドスリープ(冷凍睡眠)とかしていそう。

そしてシリーズ最大の肝となる天才「真賀田四季」の心の奥底にあるものは何だったのかという謎については、読者それぞれの解釈次第といったところだろうなあ。生と死、精神と肉体、天才の苦悩と、謎が深い。

エピローグの「綺麗に矛盾している」がヒントになりそうだけど、なんだろう…??精神と肉体、合理と不合理、複雑で単純、思考のパーツは色々とあるのだけど言語化するのが難しいなあ。

四季は、合理的な思考と矛盾するもの(矛盾を多く含む"人間性"や"人間の肉体"のようなもの?)を多く切り捨ててきた。しかし、記憶(心)の中の犀川創平の問い「人間がお好きですか?」に、「ええ…」と自問自答するように、本当はそういう切り捨ててきたものが好きだった(求めていた)と、100年以上を掛けて気付く成長の物語なのかなあ(´ε`;)ウーン…

真賀田四季とは…

印象的だったのは、「秋」にて紅子が萌絵に語った四季についての話、「あの方のそばにいても、私は何も得られない、むしろ、吸い取られるだけだと」。四季は紅子が子供を生むことを「自分を殺す」と解釈していたようだが、実際は子供に何かを「与えている」のではないかなあ。

本当は「綺麗に矛盾」するものを与えられていたのにそれを上手く受け取れなかった(処理・実感)のが天才の孤独なのかも。まだ小さかった時の真賀田四季をちゃんと「四季ちゃん」と呼んであげられる人がいたらなあ。むぎゅーっと抱きしめたり、肉体言語でも良かったかも!?

若干気になる森川さん

四季のアシスタントで事故死(?)した「森川須磨」は、Vシリーズの「森川素直」と関係があったりするのかな?森作品で同じ名字の人がホイホイ出てくるとは思えないし、何かの伏線だったりする可能性も?


感想:★★★★★

各作ごとに性質が大分違い読み辛い点もあるのでどう評価するのか悩ましいですが、森先生の公式サイトによると「四季シリーズ」4作品は"四季"という一つの作品を4つに分けて刊行されたものだそうで、4作品を一括りで考えるとジャンルは広義のミステリーなんでしょうな~。

参考:森博嗣の浮遊工作室 (ミステリィ制作部)

主人公「真賀田四季」の内側を描いていく作品ですが、関連する他シリーズを繋げる要素もあって、ファンには嬉しいサービスがたっぷり!自分的にはかなり楽しめました!

続編のGシリーズでも従来のキャラクター達が登場するらしいので、ボチボチ読み進めていきたいと思います!




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