夏――
アスファルトの感触を背中に感じながら夜空を見上げると、どれがデネブでどれがアルタイルだかも知らない夏の大三角と目が合う。一際眩いあの星が何等星であるのかも知らない。
年中無休で働いてるくせに気まぐれに本気出して気温を上昇させてしまう星よりは、暑くない夜空の星のほうが好きかもしれないな…などと考えながらこの時期特有の重く蒸し暑い空気を睨んだりしてみる。
待ちわびたそよ風は想像よりもむっとしていて、不快感を形にして投げつけられたような気分になった。
だがそんな俺の目が夜中までギラついてるのも夏のせいってやつだ。
街へ飛び出して昼でも夜でも開放的な気分になっちまうのも全部太陽が本気出してる所為。辺りが暗くなっても地面の火照りが収まっていない程なのだから仕方あるまい。つい数日前まで自分は根っからのインドア派と思っていたことなどすっかり忘れて夏に支配されている。
いつの間にか見上げる空が白んで来ているけれど、体は地面に預けたままでいる。夏の魔力というものはどうやら、意外と、無尽蔵に体に巻きついてくれる訳ではないらしい。つまり、エネルギー切れだ。せっせと補給してきた栄養を夏に絞られて、啜られて、出涸らしになったということだ。このまま何もしなければ、茹だるような陽射しに晒され、夏の大三角を再び拝む事かなわずゲームオーバーだろう。否、もう判っているのだ。命が終わろうとしているのが。
未練はある。一つ。
異性を知らぬのだ。
この世に生まれ落ちたからにはその生に意味を見出したくなるのが性。子孫を残したいという願望が備わっている。勿論この俺も例外ではない。生を殖し、清を色し、性を食したいという至極尋常な、平凡な、人並みな願望は満たされぬままである。
こう見えて、歌声には並々ならぬ自信がある。声量もさることながら、一日通して張り上げ続けても歌声は衰えを知らない。異性が放っておく筈は無いこの才能を持ってして一週間程毎日歌い続けた。結果がこの様である。
独り、嗤うことすら出来ず空を仰ぐ。番を見つけることなく閉じる。
この空の下自分の知らないところでまた一つ二つと新たな番が結成され、決性され、欠清しているというのに。
生きたい――などと願うことはなかった。
ぴくりとも動けないほどに脱力した身体に、同様に衰弱した命の残滓。
燃え尽きようとする、線香花火のその毛先のような意識の向こうに
足音を聞いた。
今、この場に現れた、通りすがった、どこの誰かも知らぬ存在。
意味があるのか、ないのかも判らぬこの出会いに、消えゆくこの命の意味を見出そう。
とうに動かぬと諦めていた肢体に最後の力を。
誰にも届くことのなかった声で最後の歌を。
見知らぬ人よ。
私は生きた。確かに生きた。
暗き闇の中、独りで何年もの時を過ごし生きた。
見知らぬヒトよ。
私が遺すのはたった一つの「欲望」。
生きとし生ける者が逃れられぬ種族保存の大原則。
刻んでくれ。この叫びを。
見出してくれ。この命の意味を。
さぁ、身体よ耐えてくれ。
最後の一ステージだ。
「みーーーーーんみんみんみーーーーーーん!!!!!!!」
・・・どうしてセミ爆弾ってあんなびっくりするんだろ。
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狐太郎でした。
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