”そんなに医学部にいきたいか?” | 東大SPHを目指す貴方へ

東大SPHを目指す貴方へ

東京大学 公共健康医学専攻 (SPH:公衆衛生大学院)の卒業生有志による、入試対策法・学生生活・キャリアプランについて綴っているブログです。
東大ひいては日本国内でMPH(公衆衛生修士号)取得を目指されている皆様のご参考になれば幸いです。

とても共感する記事があったので誠に勝手ながらシェアいたします。



8年間臨床現場で働き、専門医まで取得している自分が言うセリフではないかもしれませんが、非医療従事者の方々が思っている程、医療界は綺麗でカッコいい世界ではないです。
医師、看護師、その他コメディカルのどれをとっても。

前置きとして言っておきますが、医療界を否定するつもりはありません。

医療界に限らず、すべての職種には陽の部分と陰の部分があり「陰の部分を含めてその職種を好きになれなければ生き残れない」と言う一般論を医療界に当てはめるだけであることをご承知おきください。

まず、医学部学生、授業態度が最悪です。

理学部や工学部などと違って、学科・教室の進振りがない医学部医学科は、単位だけ取得できれば希望学科に進学できるため、(医学部生と言う特権階級意識もあってか)教養時代は「あからさまに」手を抜きます。他学部の真面目な学生が多い一般教養演習などでは浮きます。授業中、教員の目の前で堂々と前のドアから退室して教員を激怒させるような輩もいます。

そして、専門課程に入ると、解剖学や生理学や薬理学は掌を反すように真面目になりますが、公衆衛生学や法医学の授業が始まると再び出席率がガタ落ちします。自分達の進む業界(ここでは臨床医)に直結しない科目はサボるのです。

「俺は(私は)意識が高いんだぞ」と誇示するかのようにUSMLE(米国医師国家試験)の勉強をする者や、学生向けの地域医療実習に参加したり短期留学したりする「真面目な」学生もいますが、そういう学生に限って授業態度は悪かったりします。本末転倒です。

代返・代筆はあたりまえ。授業中にPCで動画をみるのも日常茶飯事。病院実習では、患者さんの目の前で本を読んだり、酷い学生になると携帯ゲームをやって大問題になる学生もいます。そのくせ、口だけは達者で教授に問い詰められると「あなたたちがきっちり教育しないからです」的なことを平気で口走る者もいます(さすがにこれは稀な例ですが)。

そして、医学部は閉鎖空間です。

教養課程を抜けて専門に入ると、卒業するまでの全ての科目が必修科目になります。選択科目なんてものはありませんし、教室に配属してゼミを受ける、なんてこともありません。もちろん、卒業論文もないです。つまり、ただでさえ一学年100名しかいないのに、同じメンバーで一つの教室に朝から晩まで一緒にいなければならず、これが月曜から金曜まで、6年間も続くのです。仲間意識は強くなるかもしれませんが、気が狂いそうになります。気の合わないクラスメイトがいると尚のこと。

サークル活動も、医学部(大学によっては医歯薬3学部)だけの部活に所属するのが通常です。「医学部バスケ部」とか「医学部サッカー部」などのように。そして、インカレではなく、東医体ないしは西医体と言う、医学部学生だけの総合大会に出場します。学業どころか、課外活動まで他学部との交流が断たれてしまうのです。

そんな閉鎖空間なので、一学年に数名はうつ病を発症する者が必ず現れます。
現に、私の同級生で自殺した人もいました。

次に、いざ医師になると、ドロドロギスギスした世界に放り込まれます。

病院内はストレス社会です。癇癪を起す患者さんやそのご家族もいれば、いつでも「訴訟してやるぞ」と言わんばかりに揚げ足を取ってくる人もいます。そんな世界で働いていると、ある程度経験を積んだ医師や看護師にはもはや「正義感」などと言うものはカケラもありません。心の中に秘めて、外には出さないだけの人も少数いますが。まして、中堅どころの医師・看護師になると、上司からの重圧と部下への教育の板挟みになり、一番ピリピリします。

そんなところへ、フレッシュな気持ちで生き生きした(なのに点滴ひとつとることができない)研修医が入ってくると、明らかに「邪魔者」になります。中堅医師であれば、まだ優しく教えてくれますが、問題は中堅看護師です。陰湿なイジメや嫌がらせに会います。特に女子研修医は格好のターゲットになります。そして、クレイマー患者の矢面に立たされるのも研修医であることが多いです。

にも関わらず、土日休日は基本的に出勤しなければなりませんし、夜中に突然呼び起こされて病院内で朝を迎えるのが通常です。精神・体力ともにすり減っていても、自分自身に鞭を入れて働き続けなければなりません。朝カンファは殺伐とした雰囲気だし、外来に出れば救急車をタクシー替わりに利用した生活保護者が来てるし、病棟に戻れば(以下省略

医学部を目指している高校生・予備校生の皆さん。
そんな世界でも医療を愛せますか?


答えがNOなのであれば、医学部受験は一度考え直すことをオススメします。
どうせ学力はあるんですから、東大や京大の非医学部(非理3)に行きましょう。

それでも「やっぱり医者になりたい!」って仰るのであれば、一つだけアドバイスがあります。

正義感を持たないこと(学生の間は持ってもいいですが、いずれ捨てる覚悟を持つこと)

これにつきます。
上述の通り、全ての患者さんやご家族から感謝されるわけではありません。理不尽な仕打ちをうけることなんてざらにあります。看護師や他のコメディカルとのすれ違いや八つ当たりに出くわすこともあります。

そう言う場面に遭遇した時に「何も感じずに受け流せる」鈍感さが必要なのです。
一つ一つを受け止めていたら体がいくつあっても足りませんから。

うまく立ち回れている医師・看護師ほど、共通して医療をどことなく冷めた目で見ています。

医療従事者ではない人は理解に苦しむかもしれませんが、現実ではこれが重要なのです。

もちろん、それでも形だけでも良いので、患者さんやそのご家族には共感的態度をとってください。

最後にもう一つ追加で言っておきたいことがあります。

息子・娘を医学部に入れさせたい親御さん方へ。

愛する我が子が医学部受験をするように英才教育などで誘導するのは結構ですが、いざ子供が医学部に入ったあと、ないしは晴れて医者になったあとに「やっぱり臨床よりも他のことがやりたい」と言い出した時には、気持ちよく背中を押してあげてください。

「あなたを医者にするために20年かけて育てたのに親不孝だ!」などと言うのだけはやめてください。

臨床以外にも人を救える方法はいくらでもあるのです。

行政、研究、メディア、どれをとっても「現場の医師の仕事よりも下」などと言うことはありません。

いつだか、筑波大の医学群を卒業した女の子がテレビ局に入社して、一部の人から反感を食らったことがありましたね。実に馬鹿げた話です。ただでさえ、医療界とメディアとの間に健康に関する考え方の乖離が生じているのですから、メディア内に医学知識のある人間が入って改革を起こせれば、それは素晴らしいことじゃないですか。

HPVワクチン接種率を70%から1%未満まで激減させたのはマスコミなのですよ。

色々とネガティブな話ばかりしていましたが、言いたいことは二つ。

①正義感を持っていると医療業界では生き残れないこと
②医学部卒=医者にならなきゃダメ、ではないこと

これだけです。








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