今週はずっと雨の大阪です。こんな日は朝からずっとベートーベン
ピアノソナタ20番第1楽章を練習する僕たーちゃん。
僕の家には脳出血を起こして体や頭や目が不自由になってしまった
義理の母のマミーと、その娘で僕の妻のかっちん、そしてかっちんが
可愛がっているチワワのちーくんがいます。
大人3人とちーくんだけの暮らしなので、さぞや落ち着いた静かな暮ら
しっぷりだと思われてそうですが、そんな事あるはずもなく~。
脳出血を起こしてしまったマミーは御年80歳を迎えていますが、その
言動はまるで幼児並なので(お漏らししたり夜中に泣いたり大騒ぎした
りと、体が大きい分案外幼児よりもずっと大変なのよ)、日々やかましい
我家なのであった。
昨日の昼もこのマミーの昼食後、久しぶりにかっちんはクラッシック
の名曲をマミーに聴かせていた。
ショパンの「英雄ポロネーズ」の、ピアノバージョンとオーケストラ
バージョンだ。
前にこの曲を聴いたマミーは「ええ曲やな~」と、感心していたもの
だった。
しかし近頃ではあまりクラッシックの曲をマミーに聴かせていなかった
せいか、昨日のマミーはこう言った。
「なんか大した曲ではありませんね、はい。」
これを聞いて驚くかっちん。
「何で? 前は「ええ曲やな~」って言うとったやんか!」
「そ~お? 大したことない曲に聞こえるけどな。」
「あんな、この曲はな、たーちゃんが生まれて初めて弾きたいと思った
運命の曲なんやで? 前にたーちゃんがピアノ辞めた時に近所に住ん
でるピアニストのN先生の門下生らの発表会に行ったやろ? それは覚
えてるか?」
「はい、そう言えば、あんた達2人そんなのに行ってましたね。」
「そうよ。あの時の発表会でN先生の門下生が最後に弾いてたのが、
この英雄ポロネーズやねん。」
「えいゆうボロ、ボロネーゼ?」
「英雄ポロネーズや、ショパンの英雄ポロネーズ!」
「ショパンの英雄ボロネーゼ。」
「英雄ポロネーズな。ショパンの英雄ポロネーズ。ショパンはな、20歳
の時に祖国のポーランドを離れて演奏活動してたんやけど、その後
すぐにポーランドで革命が起こってしもうてん。戦争やな戦争。」
「へ~大変だったんですね。」
「そん時ショパンはな、祖国に帰って自分も戦うべきかどうかすんごい
悩んだんやけどな、ショパンの友達がショパンには銃を持って戦うこと
よりも、祖国のために芸術で戦うべきやって言うてん。」
「友達ええ事言うな~。」
「うん、ええ事言うやろ? ほんでな、その友達は祖国ポーランドの音楽
の素晴らしさを世界に知らしめることこそが、ショパンの使命なんやで
って悩めるショパンを音楽に専念させたっちゅーわけや。」
「ふ~ん。」
「それで、この英雄ポロネーズって曲が生まれたってわけや。どうや?
ええ曲やろ?」
「ええ、そう言われてみたら、さっきのチャララってところとか凄く良
かったです、はい。」
「そうやろ? ショパンはな、この他にも沢山スゴイ曲を世に出してるん
やで。どうや? ショパンって凄いやろ?」
「ショパンも凄いけどその友達が偉いわ。ショパンはええ友達を持って
たんやな~。」
「そうやな。その友達がおらんかったら、英雄は生まれてなかったのか
もしれへんな。」
「そしたらたーちゃんも今頃ピアノ辞めて楽出来てたのにな・・・。」
「えっ?」
「そんな、たーちゃんが弾きたくなるような曲をショパンが張り切って
作ったばっかりに、たーちゃんはまたピアノ続ける事になってしもうて
今苦労してるんですよ、はい。」
「・・・」
「ショパンがええ曲作ったせいで、たーちゃんは今地獄見てますよ、
はい。」
罰当たりな事ばかり言うマミーは次にこんな事をボソっと言い出した。
「ショパンは、奥さんおったんかな?」
「奥さん? 何で?」
「ショパンは、こんなええ曲沢山作ったんだから印税もかなりあるはず
だから、奥さんおったら大喜びですよ、はい。」
「・・・」
「ショパン、奥さんおったんかな?」
「ショパンに奥さんがおろうがおらなかろうが、さよ子(マミー)には全く
関係ない話やからな。大体、ショパンは芸術家なんやで?」
「それが?」
「芸術家というものは美しいものが好きやねん。だから、さよ子じゃね~
顔が・・・。」
「そんなのわかりませんよ! 本物の芸術家だからこそ、鼻に添え木も
何もつけてないような純粋な天然の顔が好きかもしれません、はい。」
「鼻に添え木? 鼻低いってことか? 確かにさよ子は、鼻も低いし目も
ちっちゃくて純粋な顔っちゃ純粋な顔かもな。だけど外国人からしたら
その顔は口しか無い顔に見えるかもな。そんな口しか無いように顔し
た女をショパンが選ぶとか思うなよな。あつかましい!」
「わてがこんな顔で選ばれようなんてコレッぽっちも思ってませんよ!
かっこちゃん(かっちん)が選ばれたらいいな~って思ったんです、はい。」
「私が? そりゃ私やったら美しいから芸術家のショパンも奥さんに
したいかもな~。」
「笑わせんなよ? 大して美しくも無いくせに調子こくんじゃねーよ!」
ここのところ、かっちんの事をいつも「まぁまぁ美人」と言っていたマミー
だったのに、この日のマミーは一味違った。
しかし、こんなマミーの言葉を無視してかっちんは言った。
「何で私とショパンをくっつけようとしとんねん? まさか私からショパン
の印税を引っ張り出そうって企んでるんと違うやろな?」
「そんな、まさか! だけど、ちょっとだけでもくれへんかな~って思った
んです、はい。」
やはり悪どい事ばかり考えるこの日のマミーだった。
そんなマミーにかっちんは言った。
「はいはい、アホな事ばっかり言うてないで、もう一回ショパンの曲を
聴いてからトイレ行こう。たーちゃんの心に炎をつけた運命の曲を。」
「はい!」
「題名覚えてるか?」
「はい、英雄ベネズエラですっ!」
英雄べネズエラ・・・なんか革命おきてるっぽい題名だけど・・・。
(※ちなみにショパンは生涯独身だったようです)
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