ロック探偵のMY GENERATION

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歌と愛国心について考える ~邦楽編~

2018-06-21 18:43:09 | 時事
以前このブログで、歌と愛国心について考える記事を投稿しました。

そこでは「私は愛国者」というアメリカの歌を紹介しましたが、せっかくなので、日本の歌についても書きたいと思います。

愛国心を歌う日本の歌ということで私の脳内アーカイヴを検索してみると……
長渕剛さんの「家族」という歌がヒットしました。

この曲は1996年に発表された同名のアルバムに収録されています。
もの悲しいアコギをバックにして、一編の小説のように、四人家族で粗暴な父とその暴力にさらされる母、姉、自分……といったようなストーリーが語られ、最後には次のようなフレーズが出てきます。


  白地に赤い日の丸
     その父をたまらなく愛してる
  白地に赤い日の丸
     その母をたまらなく愛してる
  白地に赤い日の丸
     その姉をたまらなく愛してる
  白地に赤い日の丸
     殺したくなるような夕暮れの赤
  白地に赤い日の丸
     この国をやっぱり愛しているのだ


感じ方は人によるでしょうが、私はこの歌から“右翼的”というような印象は受けません。

それはやはり、借り物の言葉ではないからでしょう。

“愛国心”を表す記号のような言葉を借用してきてショートカットするのではなく、自分の言葉をひねり出してこそ、説得力が生まれるのだと思います。

余談ながら、このアルバム『家族』には、いわゆるライナーノーツがついていて、湯川れい子さんがその文を書いています。
そこで湯川さんはブルース・スプリングスティーンの『ゴースト・オブ・トム・ジョード』という作品に言及しています。“ボス”ブルース・スプリングスティーンの、周辺に追いやられたものにむけるまなざしを、湯川さんは『家族』に感じ取っているようです。

ここで、以前の記事にリンクしてきます。

じつは、以前の記事で名前が出てきたリトル・スティーヴンは、ブルース・スプリングスティーンのバックバンドであるEストリート・バンドのギタリストでもあります。ジャクソン・ブラウンは、ブルース・スプリングスティーンへのリスペクトを表明していて、何度か共演もしている関係……そんなふうに、あちこちつながってくるんですね。

勇ましいことをいうのではなく、疎外されるものに目をむける。
国家のために人があるのではなく、人のために国家がある。
そういう方向への愛国心であってほしいと私は思いますね。

“記号”で愛国心を語るということは、いやおうなしにその“記号”を作り出した過去の何者かの価値観に染められることが避けられません。日本でそれをやると、無茶苦茶な戦争で国家を破滅に追いやった国家主義者たちの影がちらついてきます。本人の意図がどうであろうと、そうなってしまうんです。その記号を生み出した権威の側の視点によりかかってしまうために、おそらくそこで語られる“愛国心”は、「国家のためなら国民は犠牲にしてもかまわない」という思想にむかうでしょう。それゆえに、記号化した言葉で愛国心を語ることは危険なのだと思います。


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