任意整理を自分でおこないたい?自分で任意整理をおこなうメリット・デメリット紹介します!

任意整理ですが、一般的に弁護士や司法書士に依頼して手続きを進めます。その場合が効率的であり、債権者が任意整理に応じてくれる可能性が高くなるからです。しかし、アディーレ法律事務所のような大手に依頼していても、営業停止になってしまうと、別の弁護士などを探さなければならず面倒です。

そもそも、任意整理を個人でおこなうことは不可能なことなのでしょうか。今回は任意整理を自分でおこなうことが可能か不可能かについて紹介していきます。

アディーレ法律相務所の業務停止について

弁護士法人アディーレ法律事務所は、景品表示法違反に基づく措置命令を受けて2017年10月11日付で東京弁護士会より懲戒処分として2ヶ月の業務停止命令を受けています。

この背景としては、アディーレ法律事務所がWebサイトの広告で過払い金返還請求着手金を1ヶ月の期間限定で無料もしくは値引きすることを宣言していました。しかし、同様の広告を1ヶ月ごとに繰り返し掲出しており、実態として期間限定ではなかったわけです。

そのため、広告が景品表示法とうい法律に違反(有利誤認表示)している上、弁護士連合会の弁護士の業務広告に関する規定などにも抵触しているとして、弁護士法人としての品位を失うべき非行であると判断され、業務停止2ヶ月の懲戒処分の申し渡しとなりました。

2ヶ月というのは非常に重い罰

通常、弁護士法人が1ヶ月を越える業務停止を受けると委任中の事件(案件)をすべて辞任しなければなりません。新しく弁護士を見つけるにしても、処理が遅れることが予想され、時効の問題が生じる可能性が高くなります。

債務整理において時効が関係してくるものは、過払い金請求の事件が問題です。過払い金は取引終了後10年経過で時効になる可能性が高く、過払い金の一部ないし全部が時効消滅する可能性も高くなります。

2017年10月13日より順次、アディーレ法律事務所から解除通知が送付されていますので、その契約解除のお知らせが届いたらアディーレ法律事務所との契約が解除されていると考えられますので、別の弁護士に依頼するか、債務者が自身で任意整理するなどの必要があります。

アディーレ法律事務所は、債務整理業界内でも最大手でありましたので、そのほかの弁護士事務所が、現在その対応に追われています。アディーレ法律事務所業務停止命令の件は稀ではありますが、弁護士や司法書士へ依頼した場合のリスクの1つであるという点です。

アディーレ法律事務所へ依頼している方は、新しい弁護士に目星をつけておき、アディーレ法律事務所から通知が送られてきたら、よく読んで対処しましょう。

支払代行を依頼している場合

また、すでに任意整理の和解交渉で和解に合意している場合も影響があります。アディーレ法律事務所は支払代行をおこなっています。しかし、業務停止処分のため、支払代行業務もすることができません。そのため、自身で支払する必要があります。

任意整理は一般的に2回連続、つまり、2ヶ月連続で支払いを滞納した場合、期限の利益を喪失しますので、一括請求される契約になっていることが多いのです。そのため、業者に連絡をとり、支払日や振込先をきちんと確認しておかなければなりません。

もし、支払代行を依頼していて契約解除通知が届いた場合、今月の支払額と支払口座が書かれています。それを参考にして、債務者本人が直接支払っても問題はありません。

任意整理を家族に内緒にしている場合、直接業者とやり取りするのが困る方は、本人が直接手続きするのに支障があるなどの事情がある方は、別の弁護士に依頼するのがいいでしょう。

ただし、支払代行を別の弁護士に依頼する場合、支払い額が変わる場合もありますので、注意してください。

任意整理を自分でおこなうことは可能か?

では、本題に入っていきましょう。

借金の整理を考えている場合、なるべく費用を抑えるために、自分で任意整理の交渉をおこないと考える方もいるのではないのでしょうか。確かに、任意整理などを考えている方の場合、お金がありませんので、弁護士や司法書士へ依頼するよりも自分でやってしまった方が安上がりであると考えるかもしれません。

もちろん、任意整理を自分でおこなうことは不可能ではありません。ありませんが、おすすめはできません。

例外的な場合を除き、債務者が専門家である弁護士や司法書士の力を借りずに任意整理をするという非常に困難を極めます。債務整理というくくりで見た場合、民事再生(個人再生)は債務者本人がおこなうと、失敗するリスクが高くなる可能性のある債務整理もあります。

なぜなら、作業自体が複雑であり、状況に応じて冷静な判断を必要とします。また、弁護士や司法書士に依頼するメリットも、債務者本人が任意整理をおこなってしまうと受けることができません。

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そのため、不可能ではないのですが、そこまでおすすめできるものでもありません。

自分で任意整理するメリットについて

自分で任意整理をするメリットですが、弁護士や司法書士へ支払う費用が発生しない点にあります。

弁護士や司法書士へ支払う費用については、

  • 相談料(無料が多い)
  • 着手金
  • 報酬金
  • 減額報酬など

これらの費用が必要であり、数万円~数十万円はかかってしまうケースは珍しくありません。

自分で任意整理するデメリット

任意整理を自分でおこなう場合のデメリットですが、任意整理を自分でおこなうメリットをはるかに上回ります。専門知識を持った弁護士に依頼しなければ、そもそも、貸金業者や金融機関が相手してくれない可能性があります。

そのため、債務者が個人で任意整理をする場合、貸金業者や金融機関を交渉のテーブルにつかせることが、そもそも不可能な場合があるのです。

下記では、任意整理の流れの中から生じるデメリットについて紹介します。

任意整理の流れの確認

任意整理を弁護士や司法書士に依頼した場合、弁護士は下記の流れで債権者と交渉をおこないます。

  1. 債権者に対して受任通知を送る
  2. 債権者に取引履歴の開示を要求する
  3. 引き直し計算をおこなう
  4. 元本の減額や利息のカット交渉を債権者とする
  5. 合意

このような流れで、任意整理は進んでいきます。

自分で任意整理交渉をすると受任通知は送れない

まず、自分で任意整理交渉をする場合、受任通知を債権者に送ることができません。

受任通知を弁護士や司法書士が送ることで、債権者である貸金業者は債務者に督促を直接おこなうことができなくなります。これは、貸金業法第21条1項9号にて定められた法的なルールです。これを貸金業者が破ると刑事罰や行政罰が科されます。

個人で任意整理の交渉をする場合、貸金業法21条1項9号は適用されなくなりますので、任意整理を開始する旨を債務者本人が債権者である貸金業者へ通知しても、債権者は督促を止める必要はなく、債務者は任意整理の交渉中であっても返済を続けなければなりません。

任意整理以外の債務整理、つまり、特定調停・民事再生(個人再生)・自己破産を個人でおこなう場合であっても、同様であり裁判所に対して債務整理の申立てをおこない、裁判所が受理したのちに、裁判所が債権者へ通知するまで督促はとまりません。

取引履歴の開示でごまかされてしまう可能性もある

取引履歴の開示については、貸金業法第19条にて貸金業者は取引履歴の保存、そして貸金業法第19条2号で開示の義務がある旨を規定しています。そのため、債務者が取引履歴を取り寄せるのは、難しいことではありません。

実際問題、貸金業者のWebサイトなどに取引履歴開示の方法が案内されていることも多くあります。また、大手の貸金業者であれば電話1本で取引履歴を開示してくれるケースもあります。ですが、任意整理の交渉を考えている場合、債務者が貸金業者と接触することは、あまりおすすめできません。

過払い金があからさまに発生している場合など、貸金業者にごまかされてしまう可能性があります。たとえばですが、貸金業者側から「○○万円の過払い金が発生しています」と、実際の金額よりも少ない金額で和解を持ちかけてくることがあります。

また、取引履歴の開示が不完全な可能性も考えることができます。会社法や貸金業法にて10年は帳簿を保管しておく必要があります。そして、それより昔の取引履歴は破棄したので開示には応じることができないと拒否する業者も存在します。

さらに、取引履歴を債権者に都合よく分割するなどして、過払い金が少なく見せかけるというケースもありえます。取引履歴の開示があっても、それが実は債権者にとって有利になっているということを見抜く専門的な知識や経験が必要となります。

その上、取引履歴の開示には応じるものの、開示請求書の提出などを債務者へ求めることで、取引履歴の開示までの期間を延ばす作戦をとるケースもあります。取引履歴の開示までの期間は金融機関により異なりますが、弁護士がいない場合はわざと開示までに時間をかけて債務者が諦めたり忘れたりする作戦をとる金融機関や貸金業者も存在します。

引き直し計算をするのは意外と難しい

引き直し計算については、Web上にて、弁護士や専門家が作った計算ファイルが無料で公開されています。取引履歴を正確に把握しているのであれば、自分で引き直し計算は不可能ではありません。

取引履歴が正確に把握できない場合には、貸金業者との契約書や借入や返済の都度発行される明細書、そして債務者自身の預金通帳などの資料から取引履歴の把握できない部分の取引を推測する必要があります。

しかし、これはあくまでも推測であり、どれだけ客観的であり、合理的な根拠を示すことができるのかという点が重要になります。そして、専門家はそれらのノウハウを蓄積しているので、利用することができるというわけです。

そもそも、専門家でなければ交渉に応じてくれない

個人である債務者が債権者である貸金業者と交渉するのは、非常に困難です。相手は貸金業法などの専門的な知識を持っているプロ、自身は付け焼刃の知識で交渉することになりますので、交渉は当然ですが貸金業者に有利な条件ですすむことになります。貸金業者としては1円でも多く借金を回収し、過払い金が発生していてもなるべくは払いたくありません。

そのため、前述したとおり取引履歴の開示請求をした時点から、勝負は始まっています。貸金業者の申し出や引き直し計算の結果に対して、騙されて合意をしてしまう可能性もゼロではありません。

専門家であれば、貸金業者との交渉過程での状況や特徴などによって過払い金を回収して他社の返済に充てる、和解が困難であれば訴訟に切り替えるなどの、戦略レベルでの状況判断をすることができます。個人では2手、3手と貸金業者を追い詰めていく方法がなく手詰まりになってしまう可能性が高くなります。

特定調停なら自分でできる

特定調停とは、裁判所を利用した債務整理の手続きに1つであり、将来的に借金の支払が不可能になる可能性の高い人・法人を対象にして、経済的な更生を目的としておこなわれます。任意整理では、貸金業者と債権者の代理人として弁護士や司法書士が間に入り交渉しますが、特定調停では簡易裁判所が弁護士などの代わりに間に入り、借金整理をおこないます。

簡単にいえば、特定調停の申立ては、簡易裁判所を利用した任意整理であり、そもそも個人的に任意整理を検討している方を対象にして作られた制度になります。

手続き費用についても安価であり、債務者が自身で任意整理をしたいというのであれば、任意整理ではなく、特定調停を検討するべきでしょう。

特定調停の申立てをおこなえば、裁判所から債権者に対して通知が送られます。調停期日呼出状という書類なのですが、これが送られた債権者は受任通知を受け取ったときと同様に督促を止めなければなりません。また、すでに給料の差押えなどの強制執行をおこなっている場合、債務者は民事執行手続きを停止しなければなりません。

ただし、弁護士や司法書士は依頼を受任したら即日~翌日までに、受任通知を債権者へ送付しますが、調停期日呼出状が送付されるまでには時間がかかりますので、督促が止まるまでに時間がかかります。

調停期日呼出状があるので、個人的に任意整理をおこなう際の問題点である、督促が止まらないというデメリットを解決することができます。

また、調停委員会には、取引履歴などの必要書類を債権者に提出させる権限があります。そのため、取引履歴のごまかしという問題点についても助力を得ることができるでしょう。

そして、引き直し計算については、特定調停の申し立てられた債権者である貸金業者は。調停委員会に対して、利息制限法に基づいた正確な計算書類を提出する必要があります。そのため、最低限、法的に正しい借金の残高を債務者は知ることができるでしょう。

交渉に関してですが、これは調停委員会を介しておこないますので、貸金業者と直接顔をあわせながら交渉しなくて済むというメリットがあります。

ただし、調停委員会については法的に中立な立場にあります。そのため、こちらが極端に有利になるということはありません。また、債務整理について特別な知識を持つ者が調停委員になるとは限りませんので、債権者有利になる可能性はゼロではないのです。この点は、少し厄介であるといえます。

また、合意についても、調停期日で合意に至ることができなかった場合、調停委員会が職権により決定を出すことができます。

特定調停のデメリット

特定調停については、債権者が少なく、返済の見込みが高いなどの特定の条件下、限られたケースでのみ利用することが難しいデメリットを内包しています。また、実際に申し立て件数も年々減少傾向にありますので、個人で特定調停を利用するというのは、それなりにハードルが高いと思われます。

また、任意整理の場合、弁護士や司法書士に依頼してしまえば、特別な事情がない限り弁護士たちに任せてしまえばいいのですが、特定調停の場合は自分ですべての手続きをする必要があります。

そのため、債務者が自分自身で簡易裁判所へ申し立ての手続きをおこなう必要がありますし、特定調停を進めるためには、簡易裁判所に何回か出廷しなければなりません。不慣れな手続きをすべて自分でおこなうのは困難ですし、家族に内緒で借金整理をしたい場合には特定調停は不向きです。

また、引き直し計算が正確ではない可能性もあります。特定調停では貸金業者から提出された取引経過に基づき、簡易裁判所が選任した調停委員が引き直し計算をおこないます。

調停委員は弁護士などの専門的な知識を持ったものが選任されるのですが、弁護士以外の有識者が選任されることもあります。弁護士の場合であれば、取引経過に間違いないのか、すべての取引が記載されているのか債権者に聴取しながら調べます。ですが、調停委員が弁護士以外の場合は、取引経過が誤りがあっても、そのまま引き直し計算されてしまう可能性があるのです。

しかも、過払い金の請求をすることが、特定調停ではできません。引き直し計算をおこなって過払い金があったとしても、過払い金返還請求は特定調停の目的を越えるとして、過払い金の請求をするためには、弁護士や司法書士に別途依頼する必要があるのです。

また、任意整理の場合では、将来利息については基本的にカットしてもらうように、弁護士が交渉しますが、特定調停では将来利息がついたままの額で合意に至るケースもあります。

そして、一番のデメリットは、債権者が容易に強制執行できるようになってしまう点にあります。特定調停では、合意に至ると調停調書を作成します。この調停調書は裁判の「判決」と同じ効力を持っています。そのため、特定調停で決めたスケジュールどおりに返済しない場合には、債権者は調停調書を理由に給与などの差押えなどの強制執行を簡単にすることができる点にあります。

まとめ

基本的に任意整理を自分でおこなうことはおすすめできません。

メリットよりもデメリットの方が多いからです。メリットは、弁護士費用のみです。デメリットは、そもそも債権者である貸金業者や金融機関が交渉に応じない可能性があります。

もし、自分で任意整理をおこなうのであれば、簡易裁判所を間に挟んでおこなう特定調停がいいでしょう。ただし、この特定調停もそこまでメリットのある制度ではありません。

つまり、任意整理は専門の弁護士・司法書士へ依頼しておこなった方が楽でメリットは多くなります。

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