旅する骨董屋 喜八

チベット圏を中心にアンティークや古民芸・装飾品を旅をしながら売買する喜八の、世界の様々な物や人その文化を巡る旅のブログ。

図太さ、という事 チベットにて

2017年12月12日 | 仕入れ旅


そのオバちゃんと出会ったのは、
ラサ旧市街の茶屋だった

観光客など一人もいない、
地元民がたむろする小さな茶屋で、
僕はチベット人に混じり、
バター茶を飲んでいた

貧困層でもなく、
巡礼者でもない、
明らかな地元民の風態の、
小太りで、
悪徳な大福のような顔のそのおばちゃんは、
ゆったりと茶屋に入ってきた

そして、おもむろに周りに茶をせがみ、
狭い店内を歩き回り、
茶屋にいるチベット人達に
お金もせがんだ

そして、僕の前に立ち、
金か茶をおごれ、という
図太い素振りを見せた

なんでやねん、と思ったが、
僕はバター茶を奢ってやった

そして、僕の前の席にドカッと座ったオバちゃんの手に持った
マニ車が僕の目に入った

「ババァ、それ、売れや」

僕は言った

人生初の提案だっただろう僕の提案に、
おばちゃんは全く動じる事なく応じた

僕は提示されたお金を渡し、
マニ車を手にしたが、
もっと金くれ、と言う
ここまでは、まぁ、当たり前の展開だが、
そのオバちゃんは、
茶もお代わりをくれと、
言うのだ

インドや各地で喜捨をせがまれる事には慣れているが、
僕はその図太すぎる肝っ玉と態度に笑いを覚え、
僕は、バター茶をボトルごと奢ってやった


そのマニ車は、どうという事ない
普通すぎるマニ車で、
今思えば、
何故、僕が欲しがったのか分からない

いつもは選びに選ぶ仕入れをしてるが、
何故か、その普通のマニ車を
迷いもなく買った

何万回、いやそれ以上も
回されたであろうそのマニ車は、
僕にとって、
時には必要となる、
「図太さ」を
思い出させる物になった


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