2018年04月29日

戦略における勝利と敗北2、負けた方が歴史を動かす


勝利と敗北の考察、に関する二回目です。
本日は「負けた方が歴史を動かす」でお送りいたします。

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★負けた方が歴史を動かす

前回の続きでは有るが、

以上の事から、国家運営や外交を戦略と言う観点から見た場合、勝利する事が繁栄に直結するわけでは無い事を肝に銘じなければ成らない。無論これは、勝利しても絶対に繁栄できないわけでは無く、勝利しても必ずしも繁栄に直結が約束がされているわけでは無いと言う事です。

寧ろ戦略の観点から見れば全く逆の思考が必要で、「勝たせられる事により破滅に引きずり込まれるリスクが上昇するのである」と言う事を考えを持たなければ成らない。


★敗者は、勝者に正義を押し付ける

勝利者にとって最も危険な事が、勝利したがゆえに正義の陣営に追いやられると言うところだ。

考えても見てほしいが、国家の興亡や人類の生存戦略を見渡して、どちらが正義か?どちらが悪か?などと言う事自体に全く意味が無い事は、歴史を学べば分かることは多くの人が感じ取れる事だろう。

古代からの歴史を見ればその事を理解できるのに、近代や現代の事で更には自分達の生活やナショナリズムに直結する様な事であるのならば、正義か悪かと言う認識は、非常に重要な事であると考える人は多くいる。

例えばとある地域で古代に戦争が有り、勝敗がハッキリしている事実があったとしても、自分達に関係が無ければ、それいちいち取り上げて問題視する人は余り居ない。しかし、現在の利益やナショナリズムや生存権に直結するのであれば、諸国の抗争の原因にもなるため問題視されてしまう。歴史の時間軸が近ければ近い程、その傾向が強くなる。

例を挙げれば日韓関係で、古代の「白村江の戦」の事で対立する事は少ないが、近代に入っての「日韓併合時代」の事に関しては、対立軸が出現してしまうと言う事である。

話を元に戻すと、この様に何らかの事件や国家間の問題に関して、勝敗が決してしまい善と悪の定義の内で物事を決してしまっては、勝者も敗者もその枠組みに取り込まれてしまう。

この状況は敗者はおろか勝者にとっても非常に危険な状況となる。

例えば戦争において、勝利者が悪逆非道の行い勝利し、その非道行為を容認されてしまった場合、 非道行為そのものが"正しく行い"と解釈され、「おまえも行った事なのだから俺が行っても良いじゃないか」と言われ、他人に真似をされると言う形で利用される可能性が出てきてしまうのだ。


★偽善の勝利者は動きが制限される

もし戦争等で非道な行為を行った勝利者が、かつて自分の行っていた非道行為を他の者からやられた場合、その行為の事態が正当な行いであると定義されているため、これを非難することはできないと言う事態になる事が有る。

これは簡単に言えばダブルスタンダード(二重基準)は嫌われると言う事のリスクである。

二重基準と言うモノは、「他人が行う殺人は犯罪、私が行う殺人は善行」と言う考えです。これはおよそ文明を築き分業体制社会で生活している人類から見れば、共同体を破壊しても自分だけは許されると言う考えを持っている文明不適合者で、忌避される存在と言えます。


①第二次世界大戦の戦後処理の例
本来自分達も悪逆非道な事を行っているにも拘らず、相対する相手を悪に仕立て自分達を正義にしたがゆえに、負わなくても良い負担を負う羽目になった国も存在する。その代表例がアメリカと言える。

一つの例を出すと、第二次世界大戦において日本に勝利した米国は、「日本が絶対悪」で、「連合軍が正義」であると言う事にして、日本に対して有る事、無い事、とにかく汚名を擦り付け世界に流布した。軍事力を制限して憲法九条も押し付けた。

しかし結果はどうだ、周辺諸国は日本は悪の国であると言う認識で、日本に対して汚名の擦り付けから侵略恫喝に至るまで何でも行いだした。それに対して日本は「お金も出す」「技術も出す」「領土も守らない」と言う態度を取ったため、それらの国が巨大化し(特に中国)、それらの国に日本一国抜かれたら本土へ直撃されてしまいアメリカの安全保障が脅かされる状況を招いてしまった。

中国や韓国はどうか?

日本に対する都合の良い批判を信じ込み、反日運動を加速させ、場当たり的な領土問題を作り上げ、国民を洗脳してしまった為、今更後に引けない状況となった。日本が日本国内で一致団結したまともな反論を行わないため、中国の方が引けずに日本を守る米国と対立せざる得なくなって、米中共に過剰な軍事負担を被らざるを得ない状況となり果ててしまった。これは韓国も似たようなものである。

②朝日新聞の裁判、壮絶な自爆の例
もう一つの例を提示したい。以前取り上げた慰安婦問題の誤報(捏造情報)流布の問題についての、東京高裁の判決についてだ。

朝日新聞が慰安婦問題における日本軍兵士への汚名記事に関して、誤報(恐らく捏造)だと言う事が分かっても海外では引き続き英語で誤報を流布し、海外の人達に「その様な非道な行いを行った人物の血をひくものはクズだ!」と言う認識を植え付けて迫害を誘発させる様な情報操作を行ったとしても、情報を受け取り分析する側も、取捨選別し自分達で解釈する自由が有るのだから、全て自己責任の上で行っているモノと解釈でき、その情報を真に受けて、無実の人間を迫害しても、迫害した人物の人間性に問題が有るのであって、誤報を流布した朝日新聞社を始めとする日本のマスコミの責任では無いと考えられる。と言う判決が下された。

しかしこれは、「"朝日新聞で働いている人"や"東京高裁の裁判官"の既に無くなった親族の名誉を汚す事によって血縁である当人たちに対して、第三者の迫害や差別的行動を取らせる様な情報を流布しても、その誤報を流布した人には責任は無い」と言ったようなものである。

逆に朝日新聞社の人間や、朝日新聞の行いを支持していると見なせる東京高裁の裁判官は、自分達が満足な勝利を得る事と同時に、同じように「無くなった自分達の親族や、その親族が所属していた組織に対する誤報を流される事により、間接的に自分達が非難や迫害に晒される事を容認した」と受け取られるリスクに晒される事になる。

つまり勝利する事により、自分達が間接的な迫害に晒されるリスクを到来させたのである。


★勝利や成功で得たモノの危険性
大きな勝利や成功を得た場合、その勝利や成功に足を引かれて最終的に道を誤る可能性が生じる。

第一に上記で述べた、勝利や成功で得た利益が偶然の産物であった場合、今後同じ事を行い同じ利益を得ようとした場合、失敗に結びつく可能性が有ると言う事である。

第二に、人は失敗を行えば、そこから改善を行う意識が生じるが、成功した場合はその成功方法を変更しようとは考えないため、改善の為の能力や意識を失ってしまうと言うリスクがある。

第三に、他者の力で得た成功と利益であれば、継続的に他社の力を借りなければ、その成功を維持できないと言うリスク。

第四に、非道な行いをしたにもかかわら得る事の出来た勝利や正義は、どの非道な行いを「正しい行い」として覆い隠してしまう。しかし、行った当人のや当国の力が衰えた場合「お前がかつて行った正しい事をしているだけだ」と言う論法で、やり返される恐れが生じる。

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★外交における強国の行いを第三国から見たらどの様に見られているか?

国家において「国力が強い大国である」と言う事は、必ずしも有利には働かない。その理由は大国だからである。大国であるがゆえに、相対している国や第三国から見た場合、国力を背景に無理を通したと思われて、恐怖感や憎しみを伴った敵意を抱かれるリスクがある。

これは大国だからこそなのだ。その様な意図が無くても、その国力にものを言わせて言う事を利かせるだけの力が有り、「やるかもしれない」と思われてしまうのだ。そして実際それをやれるだけの国力が有るのだから、その様に思われてしまっても仕方が無い。

もし小国や互角の国力を持つ中規模国家であるのならば、その様な事には成らない。自分達の意見を無理強いして押し通す力が無いから対等の交渉になりやすいからだ。


大国が強硬的な外交を行えば、恫喝国家と思われて損になる。たとえ強硬な外交をしなくても、外部から見た場合「大国であるがゆえに強硬な外交をしている」様に見られてしまう。そして周辺諸国に恐怖心を抱かれてしまう。

更に大国が恫喝的な外交でない普通の外交を行っても、受け手に国家がそれ以上の弱腰外交を行って自国民に被害を及ぼせば、恐喝的な外交を行っていると見なされる事も有るので、大国はその点を注意するべきである。

逆の事も言える。弱小国が国際的に支持を得るために、大国相手に超弱腰外交を行い、あたかも大国が無茶な恫喝外交を行っているかのような印象を国際社会に訴える事が戦略として成立する。

また敢えて大国を勝たせて巨大化させる戦略も併用する事により、その大国相手の同盟を周辺各国と組む事が可能となる。

この様な事を考慮すれば、援助され続け、弱腰外交をされ続け、勝利を捧げられ続けた大国は、自国では維持できない国力を持たされ、敵を押し付けられ、恐れられる存在となり、同盟国に恵まれないまま滅亡に追いやられる可能性がある。


★世界は、「中小国家群立」や「痛み分け」がベスト
世界の安定や、人間関係の安定は、対等の力を持った人や国同士の出来る限り上下関係を持ち込まない交渉により達成する事が可能となる。どこか一国や一個人が絶大な力を持って行う安定は、いつかは無理が出てきて破綻するでしょう。

そして紛争や交渉や対立における最も良い解決方法は、両者ともが負ける事である。

両者どちらかだけが勝利するなり利益を得れば、必ずわだかまりが残るでしょう。しかし両者とも敗北して同じだけ損害を被れば、お互いさまと言う事で、少なくとも憎しみを抱き合う事態は回避する事か可能です。「同じ愚かな行為を行い、同じぐらいの失敗をして両者とも同じだけの損害被る」と言うのがミソで、これを疲弊するまで行うのがベストでしょう。飽きるまで行う事により「もう飽きたわ・・・」と考える様になります。

代表例は、ヨーロッパ全土を巻き込んで行われたカトリックとプロテスタントの諸国が殺し合った宗教対立で、30年間戦争をし続けたため各国が疲弊し、「さすがに信仰で殺し合うのは止めよう」と妥協が成立した、ウェストファリア条約下での体制が有名なところでしょう。この条約が結ばれて以降欧州では、宗教問題で対立する事は無くなりました。


★真に正しき行い(正義)は滅びない

「勝った方が正義」では無い。

「正義は勝つ」でも無い。

勝利する側は正義に沿った行いをして勝利を取得しなければ成らない。不正を行った上での勝利や、自己の実力によらない勝利で利益を得れば、後で痛い目に合うのは勝利した側となる。

そして真の正義とは、真の勝者とは、滅びない存在の事を指すのである。

ではどうすれば滅びない存在になれるのだろう?

人間は最後には死ぬ生き物である。しかし、人間の築いた国やコミュニティ、会社や理念、自分の血を受け継いだ子孫に至るまで、後世まで自己の存在を残す事により不死性を得る事は可能である。

それには正しき行いをしなければ成らない。

では正しき行いとは何なのか?

それは「世界の理に沿った行い」である。

これは以前にも記事にしたが、

第一に「物理法則」

第二に、物理法則に作られた「自然の循環」

第三に、自然の中で発生し、物理法則と自然環境の中で文明を築きながら生活し、他の文明圏で生きる人達や他の生物と交わって生きる人類が共通に持つ「生物や人類の共通の道徳観」

この三点によって構成されたモノが「世界の理」である。


物理法則に逆らえば、いらぬ労力を浪費する。
自然に汚せば、自然からしっぺ返しを食らう。
道徳に違反した行いをすれば、他者に憎まれるかもしれない。

普通に考えれば、子供でも分かる事なのだが、大人に成れば生きるためには、それ等の真理を気にして居られる状況では無くなり、忘れ去ったり守る余裕が無い事もある。

そして遵守しなければ成らない世界の理を、無視した行いを行うから痛い目を見るのだ。



最後に・・・、真の勝者とは何か?

真の勝利者とは、滅びずに最後まで己の行動を貫き通すことができた存在のみである。

「滅びすに貫ける勝利と正義」が真の正義であり、勝利である。最後まで貫けない様な正義は、または正義を貫く事により滅びるモノは偽善である。

最後には滅びるであろう人間一人ひとりは、存在自体が偽善であるかもしれないが、人が死後残すであろうモノには、もしかしたら真の正義が存在するのかもしれません。

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以上を持って全二回の勝利と敗北の考察を終わりにしたいと思います。今回書いた事は国家戦略だけでは無く、人として社会で生きる上で哲学としても必要な考え方だと思います。

「勝利と敗北、成功と失敗」と言っても大成功を収めた事や大失敗をしでかした事だけが対象になるわけでは無く、何気ない日常で行い続けている行為、例えば「コーヒーは体に良いと言う事信じて飲み続けた人が、最初は確かに体調の改善の役に立つと言う成功体験を得たが、それを行い続けているうちに過剰摂取になり、体調を悪化させると言う失敗をする」などと言う形で体験する事も有るでしょう。

逆に「コーヒー会社が売り上げの為にその様な情報を流し最初の内は成功して儲けることが出来たが、後になって馬鹿正直に行い続け体調を壊した顧客に恨まれて、大損害を被る」と言う事もあるかもしれません。

立場が違えば成功や失敗の意味も変わると言う事を理解して行動に気負つけなけなければ成らないと思います。


長くなりましたが「勝利と敗北」に関する哲学記事は、これにて終了いたします。



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