私は、入社してしばらくは長距離~マラソンをかじっていました。
10kmを37分切れるかどうかという所から、1年かけずに33分台を切る目前まで到達できました。
ランナーの方々に役に立つ点があるかと思い、当時の練習内容をまとめました。
一つのデータとして、参考にしてください。


-------

10kmの練習を始める前の著者の走力
jogはある程度継続的にしていました。いわゆるジョガーです。
400m~1000mのインターバルを時々ですがやっていました。
駅伝チームの方々と一緒に走った最初の10kmTTでは、37分台をようやく切る程度(36分58秒)でした。


最終的にどこまでタイムが縮んだか
その年度末、駅伝チームでの非公式の10kmTTで33分09秒を出しました。

また、2016年度中国山口駅伝において代表チームに選ばれました。
2区(11.3km)を38分10秒(3’22”/km, 10km通過33分25秒)で走ることが出来ました。


著者の労働環境
研究開発職の常日勤として、平日5日フルタイムで勤務していました。
研究所での作業は肉体労働が多く、思いの外疲れました。
朝から晩まで製造現場で立ちっぱなしということもザラで、脚が棒になっていました。
また、研究所内で着用が義務づけられている安全靴が、重くて靴底が硬く、とにかく脚に悪かったです。

【画像】安全靴
20170924-2


業務時間は8:30~17:00となっていましたが、7:30には出社して実験室の掃除や後片付けなどをしていました。
当時は覚えることが多く、18時~19時までは職場にいましたね。

帰宅時には疲れ切っている日も多く、競技に適した労働環境ではありませんでした。


当時こなしていた練習メニューの大枠
「週2ポイント、残りはつなぎjog」というスタイルでメニューを組み立てました。
これは、松本翔さんの著書を参考にしました。

上述のように労働環境はあまり良くなかったので、疲労回復を第一にしました。
まずは継続ありきだと思ったからです。
週の中日である水曜日と、休日である土曜日をポイント練の日に決めました。

自分の中の理想像は、週3ポイント練でした。
週明けの月曜日もポイント練を入れられるだろうと思い、月曜日にインターバルを入れたこともありました。
すると気力も体力もそこで使い果たしてしまい、水曜日のポイント練の質が大きく下がってしまいました。

この教訓より、以降はとにかく欲張らないように気をつけました。


練習時間
朝イチに練習するようにしていました。
4:30に起床後、15分~20分後には出走していました。
これには以下の2つの理由があります。

理由①:朝イチであれば、心身の疲れが抜けてフレッシュな状態で練習をすることができる
仕事後は精神的に疲れ切ってしまっていて、肉体的には走れても脳が走るのを嫌がって走れませんでした。

理由②朝イチの空腹状態で走ることで脂肪利用能力を高める
フルマラソンも視野に入れていたので、脂肪利用能力を高めたかったのです。
そのため。あえて何も食べずに走っていました。
脂肪利用能力アップは眉唾ものでしたが、少なくとも「食べないと走れないことはない」と実証することができました。



平日の練習
水曜日にポイント練の「LT走(詳しくは後述)」を入れました。
残り4日はつなぎjogと流しを徹底するようにしました。

休日の練習
土曜日にポイント練の距離走(15km程度)を入れました。
翌日の日曜日は、疲労抜きかつ脚づくりとして、long jog(15km~20km)を入れるようにしました。

練習としてのレースは、殆ど出ませんでした。
競技場が片道3時間と遠いのもありましたし、何より休日はゆっくりしたかったからです。

レースを絞った分、気力を集中させることができて良い走りができました。
自分に合ったスタイルだったようです。

普段から集中して取り組むタイプの人は、レースに出るとどうしても頑張りすぎてしまい消耗も激しくなってしまうので、レースを絞ることをオススメします。


私が大切にしていた「練習の核」
jog+流し、LT走、距離走の3つです。

①jog+流し ②LT走 ③距離走の順番で大切にしていました。
10kmという長い距離で力を出し切るには、毎日それなりの距離を走って身体を改質する必要がある。
ゆえに、つなぎjogの「質」を第一優先にしていました。

今振り返っても、この考えは間違ってなかったと思います。

また私は、練習の核①~③を以下のピラミッド状に考えていました。

jog→距離走→LT走→レース

「jogの積み重ねが距離走に活きて、距離走がLT走を底上げする。LT走がレースに活きる」という具合です。


練習の核①:jog
基本的に14kmを、ビルドアップ形式で行っていました。
7kmの折り返しコースで、多少の起伏があります。

最初の3kmは5分/km程度で身体をほぐし、3km~11kmを4’30”/km程度で巡航し、最後の3kmは4’15”/km程度までリズム良く上がっていました。

一番大切にしていたことは、身体の声を良く聞くことです。
欲張らずに身体の声をきちんと反映させたjogを「質の高いjog」と考えていました。
身体が動き出して、自然とペースアップする範囲で留めておくのです。

スピード感を忘れないように、jogの後は必ず流しを入れていました。
150m×3がデフォルトで、場合によっては200m~500mを数本入れたりしました。

ポイント練後のjogは無理せずゆっくりペースで留めていました。
ただし距離はいつも通りで。


練習の核②:LT走
コレさえ押さえておけば、10kmは十分対応できると太鼓判を押せる練習です。

そもそもLT走とは…
「ダニエルズのランニング・フォーミュラ」に掲載されているトレーニングです。
ある程度以上の速さで走ると、乳酸が生じます。
この乳酸が体内に蓄積することが、走動作における疲労の主要因です。

乳酸の除去能力を高めることで乳酸が蓄積するポイント(LTポイント)を先送りにできる
→疲労を溜まりにくくして走力を高める、というのがLT走のコンセプトです。

【画像】LTポイント
20170924-3


なお、現在の持ちタイムからLTペースを換算する表が複数の書籍より出ております。

【画像】LTペース走の表
20170924-4

参考文献
・ダニエルズのランニング・フォーミュラ(第2版、第3版) ジャック・ダニエルズ著
・基礎からわかる!中長距離走トレーニング 櫛部 静二著

ダニエルズのランニング・フォーミュラ 第3版
ジャック・ダニエルズ
ベースボール・マガジン社
2016-03-22


基礎からわかる!中長距離走トレーニング
櫛部 静二
ベースボールマガジン社
2015-08-01



私がやっていたLT走
8kmをある程度の負荷をかけて走っていました。
「脚に乳酸が溜まるギリギリのペース」を基準にしてペース調整をしていました。
ここがポイントで、ペースを基準にしませんでした。
ペースは脚に乳酸を溜める速さで走った結果ついてくるものだと考えたからです。

ペースありきで走ってしまうと、以下2点の問題点があります。
・「前回より速く」と焦ってしまい、精神的に擦り切れてしまう
・適切な生理的負荷(乳酸がギリギリ溜まる負荷)よりも高い負荷をかけてしまう

高い負荷をかければかけるだけ良いわけではなく、前回よりも速いペースで走れば走るほど良いわけでもないのです。
「適切な負荷をかけるように走ってタイムを確認してみたら、以前よりも速くなっていた」という状況が理想なのです。

私は、川沿いの車道を3kmで周回するようにコースを決めて、そこを走っていました。
最初は3’45”/kmでトータル6kmからスタートしました。
上述した「乳酸がギリギリ溜まるペース」を基準に走った結果、回を重ねるごとにラクに速く走れるようになり、3ヶ月後には3’30”/kmで8kmを走れるまでになりました。


練習の核③:距離走
LT走の8kmを短く感じるようにする目的で取り入れていました。

具体的には、15kmをjogより速め~LT走より遅めのペースで走っていました。
目的に応じて、7.5kmの往復コースもしくは3kmの周回コース(LT走のコースと同じ)を使用しました。

○往復コースを使用の場合(ゆるめの距離走、基礎作り)
4’20”/kmで3kmを入り、折り返し地点~ラスト3kmまでを4’00/km、ラスト3kmを3’50”/km程度で淡々と押してゴールしました。
ラストの1000mは3’20”/km程度まで上げることはありましたが、身体の芯に余力が残っているように気をつけていました。

○4km周回コース使用の場合(ペース走、きつめ)
3’50”/km程度のペースで、4km周回を3~4周していました。
ゆるめの距離走よりはシンドイ負荷で、でも出し切らない範囲で留めておきました。

速めのペースで良いフォームを持続するように意識していました。
10kmレースの走り方の基礎を作ることが出来たと感じます。


一週間のトレーニング例
参考までに、一番調子の良かった2015年秋の練習メニューを書いておきます。

月:jog 14km(4’40/km), 流し150m×3
火:jog 14km(4’30/km), 流し500m×2
水:LT走 8km (3’30”/km)(周回コースまで3kmjogをw-up, c-down)
木:jog 14km(4’50/km), 流し 150m×3
金:jog 14km(4’30/km), 流し150mm×3
土:距離走 15km(3’45/km), 流し 150m×3
日:long jog 20km (5’00/km), 流し×3


成績(公式)
中国山口駅伝 2区(11.3km)
38分10秒(3’22”/km, 10km通過33分25秒)

成績(非公式)
チームTT 10km 
 33分09秒


練習の最中で気づいたこと
気づき①:インターバルの重要性は低い
10km用の練習を始めた当初は、400m×10や1000m×5のインターバルを平日に取り入れていました。
しかし、インターバルはダメージがやたらと溜まる割に、走力アップの手応えを感じませんでした。

インターバルのダメージは、筋肉組織に直接食い込むような感覚でした。
インターバルの翌日~翌々日のjogは、動きが悪くなりペースも上がりませんでした。
週末の距離走にも悪影響が出るほどのダメージでした。

仕事による疲労でインターバルの無酸素的なダメージが回復しきれなかったことが原因でした。
仕事をしながら競技をする場合は、インターバルは刺激が強すぎてオススメできません。


気づき②:やたらと長い距離走も結果に直結しにくい
私はフルマラソンも視野に入れていたため、30km程度の距離走に取り組んでいた時期もありました。
その経験から分かったのですが、20km以上の距離走を入れすぎると、10kmのスピードに対応できなくなるということです。

基礎鍛錬期に「練習に耐える体力をつける」「身体を頑丈にする」意味で取り入れるのはOKだと思います。
要は、距離走は練習のための練習に留めておく。
すなわち距離走で追い込みきらないということです。


気づき③:LT走の質がレースに直結する
10kmの取り組みの中で、一番実感したことです。
レースよりも少しだけ余裕を持って走ることで、レースペースの底上げができると感じました。

主観的には、じわりじわりと力が蓄積される印象を受けました。
身体の資本を使い切る練習ではなく、資本を充実できてとても良かったです。
精神的にも負担少なく取り組めたので、仕事に精神エネルギーを持っていかれがちな社会人でも継続しやすいメニューだと実感しました。


やっておけば良かったと思う3つのこと
案①:3000mTT
LT走に取り組んで3ヶ月もすると、次第にペースが伸び悩むようになりました。
身体の器(スピードと筋力)が律速になったからです。
ここで、スピードと筋力の底上げをすれば、上限値の伸びに引っ張られてLT走のペースも再び上がったのではないかと思います。

3000mTTに取り組まなかったのは、「今よりLTペースを落としたくない」という現状維持に走ってしまった心の弱さが原因です。
弱体化をぐっとこらえて、基礎から作り直す強さがあったらもっと伸びた、と今思います。


案②:ウエイトトレーニング
走り続けていると、体重がどんどん減っていきました。
有酸素運動ばかりで、筋肉がやせ細っていったのです。

弊害として、スタート時に「グイッ」とアクセルをかける力が無くなってしまい、スムースに流れに乗れないようになっていきました。
ウエイトトレーニングで「力の入れ方」をインプットすることも大事だなと思います。


案③:走行距離を落とす
平日のjogが長すぎました。
「10kmを走るには10km以上を継続的に走らなければいけない」という距離信仰に陥っており、距離を落とすということがなかなか出来ませんでした。
疲れを溜めないように・かつ距離を守るようにすると、jogのペースが落ちていってしまいました。
10kmまでなら、jogはスピード重視でキレを保った方がタイムに直結すると感じました。

確かに「毎日ある程度の距離を走って、身体を10km向けに改質すること」は重要です。
しかし、「ある程度の距離に留めておく」という視点も必要だったな、という反省点です。

ちなみに、上記のチームTT10kmおよび中国山口駅伝の時期は、距離信仰がエスカレートして調子を落としてしまっていました。
LT走を10kmまで伸ばす・平日に20kmjogを入れるなどして、むやみに身体を追い込んでしまいました。
身体のキレをもっと重視していれば、10kmで33分を切ることができたのではないか、と後悔しています。


やらなくてもどうって事無かった3つのこと
巷で「ランニングの質を上げる必須項目!」と謳われていますが、気にかけなくても良いと感じたことです。

①入念な準備体操
起床後15分~20分後には走り出していましたが、1回も怪我を起こしませんでした。
走り出して最初の数キロをw-up代わりにじっくり走るだけで事足りました。

寝床で身体が温まっており、筋肉が柔らかい状態なので、怪我をしにくいのだと感じます。
逆に仕事終わりであれば、どうしても脛回りが冷えてしまいます。
この状態で走ってしまうと、筋肉が硬くなっているためシンスプリントを招いてしまいます。


②何か食べてから走る
起床直後に何も食べずに走っても、エネルギー切れを起こすことはありませんでした。
jogはもちろんのこと、30kmオーバーの距離走でも低血糖で倒れるなどということは無かったです。
LT走やインターバルといったスピード重視の練習も、質を落とすことなくこなせました。

私は物を口にしてから走ると、胃がチャポチャポしてとても不快に感じてしまいます。
人によっては、物を食べて走ると横っ腹が痛くなったり、吐き気を催したりさえします。
そういった方々は、走る前に無理して食べずとも良いと思います。
エネルギー補給をせずとも、十分良いトレーニングが出来ると思って問題ありません。


③怪我の対策として休足日を設ける
10kmに取り組み始めてから365日、文字通り毎日走り続けました。
ほぼアスファルト上を走り、土の上や不整地など「足に優しい」といわれる路面を走ったことは数回しかありませんでした。
しかし、怪我はゼロでした。

アスファルト上のランニングを避けるのは、主に接地時に足に加わる衝撃を和らげるのが目的です。
接地時の衝撃に足の筋肉が耐えられず、炎症を起こしてしまうからです。

足の筋肉が温まっていて柔らかい状態であれば、衝撃を十分吸収できるので怪我をしにくい、とも考えられます。
私は朝イチで走っていたので、足の筋肉が硬くなっておらず、怪我をしにくかったのでしょう。


まとめ
・10kmのタイムを縮めるのに最も有効なのはLT走である
・毎日「適度な」距離を走ることで身体のベースを作る
・たまには筋肉を鍛え、力の入れ方を思い出すようにすべし
・自分の身体と向き合って、何が必要で何がいらないのか丁寧に取捨選択しよう


参考ブログ
練習メニューを組むにあたり、以下のHPを参考にさせて貰いました。
ランナーの皆様も、得るものはとても多いと思います。



生データ
私のランニング履歴を記したブログ(現在更新停止中ですが…)のURLを張っておきます。
ご興味のある方はどうぞ。


https://rumaasa-running.blogspot.jp/