夜中の紫

腐女子向け 男同士の恋愛ですのでご興味のある方、男でも女でも 大人の方のみご覧下さい。ちょっと忙しいので時々お休みします

沁みる 41

2018-04-24 | 紫 銀

 「・・・お前らと同じ船には乗らねえよ!!。」


と、

高杉が 炎の町から水路に飛び込んで

銀時の船に向かって泳ぐ姿を見ると、

眼鏡は

銀時に向かってそう言った・・・。

「・・・!。」

銀時が見ている前で水に飛び込むと

高杉と入れ違いに岸に向かって泳いでいく。

銀時が不安定な船の上に立ち上がって櫂を持つ


「女も救われねぇな!・・全く・・惚れた弱みに 漬け込みやがって!・・?カスが!!・・・それで男のつもりか!。」

と、叫び

眼鏡は水路の石垣に爪を立てしがみつくと登り始めた。

「・・可愛い弟のまま 静かに 隠れてりゃ良かったんだ!!・・・。何であの人が・・・お前の代わりに!・・・・・何だよ!!。」

がりがり引っ掻きながら壁をよじ登る眼鏡を 

高杉を船の中に引っ張り上げながら、銀時は見つめていた

「眼鏡!戻れ!!何やってんだ!・・・死ぬぞ!。」

と叫ぶ。 

櫂で何とかバランスを保ち漕ぎながら 眼鏡のしがみつく岸に付けようとしたが、波がうねりうまくいかない。櫂が濡れて手も滑る。

眼鏡は2メートル程の石垣を登りきると立ち、


「・・・俺には 弟様のお守りは出来ねぇ・・・。俺が仕えるのは あの人だけだ。」

そう言い、炎の方を振り返る。銀時は引き留めるように

「・・・ンなもん守る 義理も義務もねえだろうが!・・・。」

と声かける。

銀時は、水路の水が荒れ狂い 流れ始めた事に気が付いた。水門が開いたのだ・・・。いつの間にか雨もざーざーと降り出している・・・。

ぐいっと濡れた眼鏡を、眼鏡が直し 笑っていた

「馬ー鹿!・・・ガキのくせに 義務とかいってんじゃねぇ!!約束も! 女も漢も!全部! 命張って守る!・・・それが人生ってもんじゃねえか?!。・・・・その上に!! 俺は侍だから 義理で死ぬる。羨ましいだろ?!銀時・・・・・・あばよ!!。」

彼は、眼鏡の上から敬礼して手を振ると、雨が強くなり 雨粒はその手の上で跳ね返っていた。

そしてそのまま町の中に走って消えて行く。


自分は 何か叫んだが・・・


何だったか 覚えていない・・・。



 

 

 

 

 

 

 

 

現在の江戸は・・・・

春の午後、


気が付いてみれば 空気はやっと 春らしい匂いが交じって

モノトーンだと思っていた枝が、知らぬ間に丸くなり つぼみの下から花びらの紅が凍み出している。

黄色いレンギョウや真っ白い雪柳は

気が付けば花開き 花はとっくに空気の違いに気が付いて 開きだし一足先に花びらを撒いている。


沖田 総悟が市街の外れに来ると、

桜が薄ピンクに、一輪二輪と、咲いている。

沖田総悟はわき腹を抱えながら

その花を見上げた・・・。


いつも通る道なのに

微かに色付いた紅から 沁み出した空気は

町中にあふれ、それを吸い込んだ町の者は誰も彼も笑顔になり 上を見上げては微笑み緩む。

やっと来た春に挨拶しているようだ。

総悟は、まだ冷え切った体に制服を纏い

痛む腹を抱えるように歩く。

近藤に切られた腕が上げられず 服の片方には腕は通していない。

頭の腫れもだいぶ判らなくなったが、自分にはまだ凍り付いている空気の方がいい。

 

 

漸く歩き、屯所にもう少しと言う所まで来ると

懐の携帯が鳴る。

沖田総悟は肩を壁に付け、胸ポケットから携帯を出す。

山崎からの着信だった

「もしもしィ・・。」

 

 

 

 その少し前

坂田 銀時は

松平 片栗粉と、寺の墓地に居た。

松平が 両手を合わせ長く合掌している・・・。

墓石の表面には 南無阿弥陀仏 とだけ掘られている。

坂田銀時は 片栗粉が退いてから ゆっくりしゃがみ込み

じーっとその墓石を眺めていたが、

ふいに 懐から手を出すと、墓石の前に一枝の桜を置いた。

片栗粉は 黙ってそれを眺めた・・・。

 

 そして、銀時は立ち上がると 何も言わず去っていく。





「・・・それはそれで ひどくないっすか?・・・沖田さんにも教えようとしたのに、『関係ねぇよぉ』って一言で電話切るって 可笑しいっすよ・・・今まであんなに・・・。」

と、山崎が、土方の後ろを歩きながらぶつぶつ文句を言った・・・。


土方と沖田と山崎は、片栗粉に呼び出されて 江戸城から少し離れた寺町のある寺に向かっているのだ。

沖田総悟はまだ姿が見えない。

土方と山崎の二人は、片栗粉の菩提寺だと言う和尚に連れられ、その寺の本堂に通された。

がらんとした本堂には誰も居ないので とりあえず座って待ち、目的を考えた。

松平片栗粉も、程なく薄暗い本堂に入って来ると 沖田 総悟も時間ギリギリに入って来た。


「・・・・・・。」

無言で本堂に入って来た総悟に 土方は怒って睨み何か言いかけたが、片栗粉が手を上げてそれを止める。

「今日は・・・細かい事言いっこなしだ。」

と片栗粉は話し始めたのだ・・・。


「まず、ここには、田嶋 六助所縁の・・・・3人の遺体の一部が 埋葬されている・・・・。」

土方も沖田も黙って居た・・・。

山崎だけは話が見えていないので、それは誰なのかと質問しようとしたが、土方も沖田も押し黙り、それを許す雰囲気ではない・・・。

お前たち 二人に話すのは初めてだと思う。・・・・お前たちを江戸に連れて来た時は、まだガキだったしなぁ・・・。何も知らなきゃ武州に返すのも 超簡単だと思ったんだ。」

片栗粉は、本堂の中を見渡すように見てから煙草に火を付けた。

ゆっくり時間がかかり、ハイライトの濃い煙が立ち込める。

座布団が四方に置かれて 4人は車座になっている。

片栗粉には・・・ある光景がみがえるが、

それを思い出しだけで渋い煙草が恋しくなった。

それを二人に語らねばならい時が来たようだ。

後悔と苦痛と胸の圧迫感に、顔を上げて目の前にいる3人の顔を見て笑う・・・。

すーっと深く 煙草を灰に吸い込み、灰皿に灰を落とす。


「・・・維新戦争の話ですか・・・?」

土方が聞くと 

片栗粉は助けられたように堰を切った・・・。

「そうだ・・・俺は将軍お側衆の一人に、将軍の為に汚れ仕事の出来る武士を集めろと言われ・・・・、其れなら武州から集めるのが良いと言った。・・・・・・俺は武州に行き、将軍子飼いの道場から猛者を集め、目の前で真剣試合をさせ 4人を選びだした。・・・その中の一人が田嶋だ・・・。」

と言う。

「全てを話すのは・・・もう難しいが、彼らは・・・焼き討ちから強盗なんでもした・・・。腐敗に腐敗を重ねた侍 江戸の悪を根底からしぼりだすにゃー・・・、文字通り根絶やしもあった、・・・・なまじの侍の覚悟じゃ出来ねぇ仕事だった。・・・将軍を切れる程の刀じゃなきゃ  ダメだったのさ・・・。・・その辺は山崎の方が詳しく 調べてるだろうが?・・・。」

片栗粉が煙草を吸い、

山崎は黙って居住いを直す。

「ですが・・・地球の・・・天人の協力者を 一掃したとも言えます。それで資金源を断つことが出来た・・・。」

と山崎が言った。

「資金源・・・?」

総悟が、胡坐に足を直しながら山崎を見る。

「・・・そう、江戸の老中達は・・・地球自体壊滅すると思っていたらしく、逃走闇金を集めていた。・・・それをあぶく銭の湧く、吉原にかくして洗浄させていたのさ。」

と、山崎は答えた。

片栗粉は

「・・・まあ吉原内部から証拠を集めたのは、奴ら・・・。銀時はそんな豆な玉じゃねえから、高杉と桂だと思うがな。・・・その後、吉原で火事が有って犠牲者が多く何でも管理され始めたから 大ぴらに集金出来なくなって、吉原を牛耳っていた一ツ橋家一派は失脚したんだ、で、茂茂の父親 紀教が将軍になったんだよ・・・。」

といい、煙草の煙を噴き上げた。


「・・・先生は・・・?。」

と、総悟が聞く。

「・・・六助達は・・・。老中の護衛役として吉原に入れたがなぁ・・・。ひどい女達を見て・・・流石に、維新志士の手伝いをしていたように思うねぇ。・・・。」

片栗粉は首を傾げて答える。

土方は正座したまま黙って、

話を聞いて居る。

片栗粉は横を向いて ふーっと煙を吐いた。

煙いのか、煙たいふりをしたいのか 眉間にしわを寄せ体を横に傾かし

やたらに、煙草の煙を吸い込む

何かを、鈍らせようとしていた・・・。

「・・・・・・銀時達は・・・何も悪い事なんてしてねぇかもな・・・。自分を守っただけ・・・。・・・そして六助達も手は汚したが、言われたことに従った迄・・・・・・・・・。」

片栗粉は灰皿を睨んだまま ぎゅうぎゅうと煙草を

押し付け潰し、もみ消した。


「・・・・・戦争も終わりかけ、次の世の青写真を設計してた頃だな・・・・六助の兄弟子3人が、維新志士に被せるはずの罪を、・・・・自分たちが被りたいと言って来た・・・。」

 

3人が一斉に片栗粉を顔を上げ見る。

片栗粉は彼らを見ず

「・・・『どうせなら、自分の罪は自分で 決済したい』と言う。・・・・・・わしは『・・・だが、維新志士が死ななければ、新しい将軍が・・・・側衆とお前らの罪を蒸返さなきゃならなくなる。全て闇に蓋して葬るのが 紀教を将軍にする条件だ。・・・それだけは出来ない』と言った。」

言うと、土方が徐に


「・・・先生 以外・・・・武州藩士の首を、維新志士の首として 差し出した・・・。」

という。

それは 土方が 近藤から聞いた言葉だった。


「そうだ。・・・・・・・それで、吉田松陽を捕らえると、次に高杉、桂、坂田を捕らえ、彼らは江戸郊外の古い神社のお堂に籠ったのだ。・・・儂は、兄弟子に薬を盛られた田嶋六輔を・・・・お堂から引きずり出して、・・・・。兄弟子たちは、田嶋の目の前でお互いを切りあって相果てたのさ。・・・その首に・・・・桂、高杉、坂田と・・・首札つけて 門外にさらした。」

片栗粉が言う。


「・・・・・・ここの・・・遺体の一部って言うのは・・・。」

沖田総悟が言うと、

片栗粉は頷いて


「土方・・・・あれを持って来たか・・・?。」

と土方に聞く。

土方は頷いた。


山崎が 腰を上げ

「・・・・・・それは・・・?。」

と聞く。

土方が 胸から片栗粉の前に小さな箱らしき物を出した 

それは紫色の袱紗に包まれていたが、

何となく中身が分かる

「・・・。」

土方も答えない。



「・・・田嶋も 長年待ち、あいつらも長年待っただろう・・・。」

と片栗粉は、小さな包みを見ながら言った。




「・・・ま!・・・待ってくださいよ!。」

山崎はごくりと唾を飲み込んでから、むかむかと・・・

納得できない物が込み上げて、


「それは違くないっすか?・・・埋めて・・終わりにするつもりっすか?・・・先生でしょ 沖田さんと土方さん 近藤さん!!・・我々の前任者でしょうが!・・・このまま何も無かったみたいに埋めれませんって!。」

と山崎が二人の顔を見る。

土方は包みを持ち上げると、立ち上がり本堂から出て行く。

総悟までも 黙って立ち上がる・・・。


「副・・・・隊長・・・!。」

と山崎が声を掛け、沖田の肘を掴む。


「・・・悪いな 山崎。・・・師匠は 望まねぇ・・・・・。」

といい 土方を追う。





「長官は・・・全部しってるんすよね・・・。いつかは公表して、名誉を・・・挽回するんですよね。」

山崎は片栗粉を睨むように見る。

不正義を強要され その汚名を被ったまま墓に終われるのは

納得がいかない・・・。

それを知った弟子まで 黙認するなんて・・・


片栗粉は足を崩し、

煙草を箱から出すが、

山崎はライターを出さなかった。

タバコを吸う前に片栗粉は 眉間にしわを寄せライターを探し続けた。

仕方なく自分のを見つけて、苦笑しながら・・・火を付ける。


「・・・納得いかねぇか?・・・いかねぇよなぁ・・・。」

湿気ているのか上手くつけられずに ぽかぽかと煙だけが立つ。

「今なら 隠す事は出来無いでしょうが・・?。」

山崎は言った その時に、片栗粉のしわの深い目じりが湿っているような気がする・・・。


「・・・まあ聞け。・・・俺がなぁ・・・・六助に 決めた時、本人いいのか?って聞いたら、・・・そうしたいって言いやがった。・・・・道場を継ぐはずだろう?と言うと、・・・自分は邪魔になるだけだっていう。・・・まあ・・そういうやつを探せって言われてたからな。」

やっと煙草に火が付いて、

大きく息を吐きながら片栗粉が山崎を見る。

山崎は まだ怒って居た。

「・・・俺も、・・・筋は通したい。城の中に居る奴は信用できねぇ。だが、紀教様ってのは信頼できたんだ。その紀教様が 幼馴染だとか言う お側衆と・・・。これは、その男の筋書きなんだよ 全てな。」

片栗粉はタバコを吸った。

「・・・で?。」

山崎は 促した。

「・・・で、・・・当時、どいつもこいつも、侍の皮を被った私腹を肥やす豚でよ・・・、各地で反乱がおこって それに対してまた不満が募り反乱が起きる。負の連鎖が繋がっちまって・・・、結局、責任を誰かが取らなきゃ収まらなくなった。本当の侍は・・・塹壕の泥の中に落ちた 腹の破れた侍を一人一人持ち上げ、戸板に寝かせてむしろを掛けた。・・・・・・江戸城の侍はすぐおかしくなっちまう。・・・・・・侍だからってな・・・地反吐を頭からかぶってなぁ・・・。」

それを聞いた山崎が顔をゆがめて鼻を擦った 匂いには覚えがある・・・。


「俺は・・・・春のある晩・・・・。桜を眺めて酒を飲んでいるあいつらを見つけた。酒を勧められて、つい、嫌にならねえかって・・・・自分で連れて来ておいて馬鹿なこと聞いた・・・。」

片栗粉はまた本堂中を眺めた 

本堂の畳の向こうにはぐるっと回り廊下があり、その向こうに白い障子が締まっている。

薄暗い本堂は日が弱くなり山崎の顔が見えずらくなっていた。

だが、片栗粉は あの日を思い出すとまた、煙草を大きく吸い込んだ・・・。

「何て答えたんですか・・・?。」

山崎が言う。

「・・・・・・忘れた・・。」

片栗粉は また短くなった煙草を灰皿にぎゅっと押し付けて消す。


「なんで・・・田嶋さん達は・・・坂田さん達を庇ったんです?。」

山崎は 膝に手を付き 身を前に乗り出しながら片栗粉に聞いた。

片栗粉は山崎を見て

 

「何かが・・・残ってんだろうよ・・。・・・・田嶋たちは戦争責任を奴らからを被った。だが、問題を全て解決したわけじゃない。お側衆も、それを解決できずに姿を消したんだからな・・・。」

片栗粉は笑って言った。だが、山崎は笑っているようには見えない・・・。

「だから・・・。」

 

「だから、あんなに坂田さん達の資料が残ってたんですね。まるで推定無罪だと 言ってるみたいに。」

山崎はガテンしたように手で合槌を打った。

「・・かもな。」


山崎は、片栗粉がまた煙草を一本出したので、今度はライターを差し出した。

 

「で、・・・そのお側衆ってのは 何もんなんです?。」

と聞く。

「・・・・さあ・・・知らねえなぁ。・・・」

と煙草をふかして火を付けると、片栗粉が山崎から離れる。

「・・・・教える気・・・ない ですね。」

と山崎が言うと

「・・・。」

片栗粉が煙を吐いた。

山崎が首を振、片栗粉は灰皿に灰を落としながら

「・・・お前は何も変わっちゃいないと思うだろうが、・・・俺には あいつの願った通りに成ったような気がする・・・。」

と言う。

「そうですかね・・・。」

と山崎は返事をし、誰の想い通りになったのか・・・

考えた。


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