妥協を許さないデンマーク人の仕事への姿勢!

デンマークと言えば、世界の幸福度ランキングに常にランクインしている国です。また、それ以外にも北欧諸国が上位を占めているため、やはりデンマークと言えば幸せそうな国だと感じている人も多いのではないでしょうか。しかし、だからといってデンマーク人が全員優しくて穏やかというわけではありません。以前に私はデンマーク人と仕事をしていました。ここではこの私の経験をご紹介したいと思います。

突然の買収宣告

 女性の人事部長

私がかつてアメリカの船会社で働いていた時のことです。当時、この会社はデンマークの船会社に買収されることになりました。
デンマークの船会社には、その当時すでに女性の管理職が存在していました。男女の格差はなく、給与格差さえありませんでした。日本にも1985年には男女雇用機会均等法が成立しましたが、今の日本であっても、当時のデンマークほどの女性の社会進出はできていないと思います。
ある日、私たちが働くアメリカの船会社にデンマークの船会社で働く女性の人事部長がやってきて、いきなり雇用条件の説明をされたのです。彼女は「あなたたちの会社は我が社が買収しました。わが社の雇用条件で納得がいかないならば、やめてもらってもいいですよ」と冷たい言葉を笑顔で言い放ったのです。

 突然の解雇宣言と生き残り

私は当時営業職でしたから、顧客も抱えており、そのおかげで解雇されずに済みました。しかし、業務関連で働いていた同僚たちは次々と解雇されたのです。
そして私の給料は今までの半分となり、一気に生活が苦しくなりました。多額の住宅ローンや会社のローンが残っており、生活レベルを落とさざるを得ない状態となったため、私は絶望の淵に追いやられたのです。
その後10年余り、デンマークの船会社ではかなり大変な日々を過ごしました。オフィスの雰囲気も変わり、今まで賑やかだった事務所では何の物音もなく、一切の会話が消えました。アメリカの船会社では和気あいあいとなごやかに話し合いをしてきたのですが、静かなデンマークの船会社での事務所は息が詰まりそうでした。
机はパーテーションで区切られていたため、隣に座る人と話をすることさえできません。完全にシステムに向き合って仕事をし、聞こえてくるのはパソコンのキーボードを叩く音だけです。ロボットのような社員たちが仕事をしていただけでした。

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徹底したコスト意識

 倹約家のデンマーク人

デンマーク人の気質の中で特に目立つものは、徹底したコスト意識だと思います。彼らの多くは倹約家で、自分たちに必要がないと思われる出費は一切認めません。そのかわり、ハードウェアには多額のお金をかけるため、船舶やシステム、港の港湾施設等には他の船会社が真似さえできないような金額を注ぎ込みます。船会社としては世界初の完全なシステム管理を完成させました。

 アメリカの船会社の特徴

私が仕事をしていたアメリカの船会社ではどんぶり勘定が行われていました。アメリカの船会社では、貨物をたくさん獲得すれば給料が上がりましたが、デンマークの船会社では違います。1本のコンテナが実質的にいくら稼いでいるのか、システムで即座に計算するため、デンマークにどんぶり勘定は存在しないのです。
アメリカの船会社では、とにかく量を追求して派手な接待をし、売り上げ競争を勝ち抜いてきました。成績が直接給料に加算されるため、上司たちにも「貨物が取れるまではオフィスに帰ってくるな」と言われたものです。貨物をいかに多く取るかと言う問題から、つかみ合いの喧嘩になったこともあります。

 デンマークの船会社の勝因

古い船会社の頃は、貨物を積めば積むほど運賃が現金で入ってきました。つまり、貨物がないと現金が入らず、現金がなくなれば運転資金がなくなり、運転資金がなくなれば会社は倒産します。粥の歴史の中で、何千社と言う船会社が倒産してきました。
そんな厳しい競争を生き残って世界一になった会社がデンマークの船会社です。そして、その勝因は徹底したコスト意識だといえます。船を大型化し、輸送費の低減化を図りました。コンテナ1本あたりにかかるコストを計算し、正確な収益を計算できるようにしたのです。そのため、儲からないビジネスは切り捨てると言うことになったのです。

 人件費や家賃のコスト

デンマークの船会社は、人件費の削減も真剣でした。夕方5時になると荷主からは電話がかからないようにし、残業を一切許しませんでした。残業代で生計を立てていた人たちは経済的に苦労したようですが、経営者側の主張の方が強かったようです。
契約社員も多くが解雇され、余ったオフィスのスペースはビルの貸主に回しました。家賃のコスト低減化も実現したのです。

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業界で初めて未収料金の取り立てにチャレンジ

 コンテナが返ってこない

私が輸入の営業していた時、牧草の輸入貨物がありました。牧草は、アメリカとオーストラリアから大量にコンテナに詰められて輸入されています。しかし、日本の酪農も経済的に厳しい状況にありますから、採算が合わないと言う問題が続いているのです。
そこで、コンテナの使用料が問題になりました。実は、当時コンテナと言う概念は未熟であり、「コンテナを借りている」と言う概念がなかったのです。そのため、中近東や貨物を運ぶとなかなかからのコンテナが帰ってこない、調べてみるとコンテナを改造し、砂漠で家になっていたと言う話もありました。
日本ではさすがにコンテナを家にしてしまう荷主はいませんでしたが、使用料は払わないと言うことが当たり前でした。コンテナは借りていると言う意識がなく、お金を払うと言う意識が皆無だったのです。また、競争が厳しい船会社の中には「使用料は無料にするから荷物を積んでください」とお願いするところもあったくらいです。

 デンマークの挑戦

しかしデンマークは、収支の悪いコンテナを即座に見つけ、収入の改善をし、空コンテナの早期回収を行い始めたのです。牧草と言う貨物は大量にコンテナを使用するため、船会社にとっては非常に嬉しい貨物でした。しかし、コンテナがなかなか返ってこないため、船会社は途方に暮れていたのです。
空のコンテナが返ってこないと、船会社は次の貨物を運べません。使用料を払わせて空のコンテナを返してもらわないことには、会社は倒産してしまうのです。そこでデンマークは、きちんと使用料を徴収し、コンテナを回収すると言う方法をとりました。これは一種の賭けです。今までは無料で貸し、返ってさえこなかったコンテナに対し、使用料を付け、返してもらえるようにしたのです。

 日本の農業団体への請求金額

デンマークの船会社がこのような変化をしたことにより、長い付き合いのある日本の農業団体は、3千万円ものコンテナ使用料を支払わなければならなくなりました。今までは、私自身も何度となく催促しに行き、使用料の支払いと空コンテナの返却をお願いしましたが、その農業団体は「日本の船会社からはそんな請求はない」と言って取り合ってくれなかったのです。
最終的に、私は法務部の担当者とともに法的手段を取りました。農業団体は法的には何も対応できませんから、長い年月がかかった末に、3千万円の徴収に成功したのです。

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1円でも債権は債権、放棄はしない

 交通費が高くても関係ない

こんなケースもありました。コンテナの使用料の滞納はわずか数千円でしたが、とある酪農農家が負けてくれと懇願してきたのです。私がデンマーク人のマネージャーにその話をしたところ、その日のうちにその酪農農家に行き、取り立てて来るようにと指示されました。修正の取り立てのために、交通費の方が上回る状態でしたが、マネージャーはその日のうちに取り立てるようにとこだわったのです。

  世界一になった理由

たかだか少額の借金のために高額な交通費を支払うなんて不合理だと感じるかもしれません。しかし、それが債権である限り何が何でも取り立てると言う精神がデンマークの考え方でした。妥協を許さないと言う考えが、デンマークの船会社を世界一にしたのです。

世界で勝ち抜くために

誤解のないように申し上げますが、私はデンマークの船会社の考え方を尊敬しています。確かに私も自分の所属していた船会社を買収され、大変な生活を強いられました。同僚たちを解雇され、怒りを感じたことさえありました。
しかし、世界に勝ち抜いていくためには周りに流されてはいけない、自分たちの信念の通りに仕事をしていかなければいけないと言うことも学びました。会社がグローバル企業であるならば、どこで儲けを狙っているのか知っておかなければいけないのです。そして、社員はそれに従わなければいけません。
外国人と働くと言う事はお互いに大変ですが、お互いにニーズを理解し、同じ目標を持ってこそ、共に成長できると感じています。

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