#89 続・時は金なり ~「時うどん」~ | 鑑賞歴50年オトコの「落語のすゝめ」

鑑賞歴50年オトコの「落語のすゝめ」

1956年に落語に出逢い、鑑賞歴50余年。聴けばきくほど奥深く、雑学豊かに、ネタ広がる。落語とともに歩んだ人生を振り返ると共に、子や孫達、若い世代、そして落語初心者と仰る方々に是非とも落語の魅力を伝えたいと願っている。

二代目桂枝雀の爆笑落語の一つに「時うどん(ときうどん)」という一席がある。これは「時そば」の上方版で、「そば」を「うどん」に代えただけのものとして同一の噺とする見方が一般的であるが筋書きが随分異なっており、別物として扱うのが妥当であると私は思っている。

 

「時そば」に登場する甲、乙の男性二人をここでは兄貴分と弟分に設定しており、大筋は以下の通りである。

 

最初の晩は二人合わせて15文しか持ってなかったので一杯のうどんを分けあって食べることにした(この(くだり)でまず笑いを取る)。ここで兄貴分から一文の誤魔化し方を教わった弟分は翌晩、同じことをやろうと一人でうどんを食べに行く。

弟分は手順が大事と、昨晩と全く同じように二人で食べている風に振舞うので、うどん屋は「大丈夫ですか、お医者さんを呼びましょうか?」などと気味が悪くなる(この件が枝雀の独壇場で爆笑を誘う)。

以下は支払いの段となり、「時そば」と同じサゲとなっている。

 

江戸の「時そば」が上方へ移入され、納得性があるように筋書きが改作されて「時うどん」となったと私は思っていたが事実はその逆で、「時うどん」の方がオリジナルで、これが東京へ移入されて「時そば」になったということのようである。その後、「時そば」の方が古典落語を代表する演目の一つにまで人気となって行ったのであった。

 

二代目枝雀が熱演した「時うどん」は「時そば」とは別の噺という認識の下で話し継いで行って欲しいと上方落語家にお願いしたいところである。

 

(大阪市中央公会堂・大阪 2009年)


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