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祖母が帰って来るとふすまの開く音で目が覚めるのですが
母はうっすらと目を開け
祖母の手にお土産のお好み焼きがなければ
そのまま眠り手にお好み焼きがあると
弟を起こし半分にわけて冷めたお好み焼きを
二人で美味しい美味しいと食べるのです。
それがこの頃の母の一番のごちそうでした。
戦争中もお腹いっぱい食べていたのが
祖父が病気になり
そして手術ミスで亡くなり
信用していた番頭に家と会社を取られ
もうこれ以上は落ちようがない所まで落ちてしまったのです。
世間知らずな祖母も悪いのですが
一番の悪者は誰が何と言おうと番頭です。
今更なにを言っても仕方がありません。
今の状態を少しでも良くする事を考えた方が
数倍いいのです。
でも中学2生の母には家の家事をすること以外は
何も出来ないのです。
お弁当も持って行けない家計は本当に苦しく
鉛筆は持てなくなるまで使い続けるし
消しゴムも豆粒ぐらいになるまで使っていたのです。
そして何よりつらいのはお腹いっぱい食べれない事です。
朝は少しのご飯とほとんど具の無い味噌汁
昼は少しのご飯にお茶をかけただけのお茶漬けです。
漬物も何もありません。
それを飲み込むように急いで食べると学校に戻るのです。
そして夜はコロッケを半分にして弟とわけて食べるのですから
以前の事を思うと昔が夢だったのではと思った程です。
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