母の過去 38 | 不思議なトントン日記

不思議なトントン日記

感動あり泣き笑いのブログにし皆さんが楽しみにしてもらえる事を目指します。
1話完結ではありません。根気よく読んでいただければ嬉しく思います。
時間のある方は初めから読んでいただければ、笑っていただけると思います。

38
 
祖母が帰って来るとふすまの開く音で目が覚めるのですが
母はうっすらと目を開け
祖母の手にお土産のお好み焼きがなければ
そのまま眠り手にお好み焼きがあると
弟を起こし半分にわけて冷めたお好み焼きを
二人で美味しい美味しいと食べるのです。
それがこの頃の母の一番のごちそうでした。
戦争中もお腹いっぱい食べていたのが
祖父が病気になり
そして手術ミスで亡くなり
信用していた番頭に家と会社を取られ
もうこれ以上は落ちようがない所まで落ちてしまったのです。
世間知らずな祖母も悪いのですが
一番の悪者は誰が何と言おうと番頭です。
今更なにを言っても仕方がありません。
今の状態を少しでも良くする事を考えた方が
数倍いいのです。
でも中学2生の母には家の家事をすること以外は
何も出来ないのです。
お弁当も持って行けない家計は本当に苦しく
鉛筆は持てなくなるまで使い続けるし
消しゴムも豆粒ぐらいになるまで使っていたのです。
そして何よりつらいのはお腹いっぱい食べれない事です。
朝は少しのご飯とほとんど具の無い味噌汁
昼は少しのご飯にお茶をかけただけのお茶漬けです。
漬物も何もありません。
それを飲み込むように急いで食べると学校に戻るのです。
そして夜はコロッケを半分にして弟とわけて食べるのですから
以前の事を思うと昔が夢だったのではと思った程です。
 
 

 

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