わたしは、どう在るかが最も重要なことだと伝えている。その人は、そこは分からないと言った。

 確かに、話していると、取り留めのない会話が延々と続き、どうするのかとか、どうしたいのかがわからなかった。

 人にはいろいろ得手不得手があって、それに基づいた役割があるのだということなのだと理解した。

 

 何かしらの縁があったのだろう、なぜか二人でカウンセリングをするというこという流れになっていった。

わたしには、静かな声の導きがあった。その声に確認すると、その声が、そうするようにと伝えていた。

 

 だから、素直にその流れに乗った。わたしの強い意志がそうさせたのではなく、わたしの前に小さな小舟が流れ着いて、それに揺られて流れてみようかな、それも面白そうだという感覚だった。

 

 カウンセリングのやり方は、わたしは見ているだけで何もしないということだった。

もちろん、声の導きがそうするように言った。声には素直に従う。だから、わたしはそのようにした。

 

 相談者の申し込みが、ぽつぽつとあった。過去生を聞きにきている人ではない相談者である。

 そのカウンセリングへ申し込む人はすべて、過去生リーディングだけを行っている女性の元を訪れた後、更に高めたい人のためのセッションということだった。

 

 わたしは、この辺りのことは何も関わっていなかった。

 元々、その男性は、スピリチュアルに傾倒していた。

何十年も前から、霊能者という人たちと交流していた。

そして今もその中の何人かと関わって、そのような活動をしていた。

 

過去生というものが次から次へと見えるという女性がいた。その女性のご主人の会社が倒産して、専業主婦から突然に仕事をしなくてはならない状況になった。そこで、スピリチュアル仲間が、過去生リーディングという仕事を彼女のために用意したのだった。

 

彼女の散乱された情報を、歴史と照らし合わせて正確に書き直す作業をする人もいた。

 わたしは、その女性とその作業をする男性と顔合わせした。

 女性とは妙に気があった。実際、そんな仕事はしたくはないと思っているようだった。専業主婦でのんびりしていたいというところが、わたしと共感するところがあって、尽きないくらい話が弾んだ。

 

 その女性と文章にする作業を担当する男性が並んで座ると、二人で一対の大きな羽が見えた。

 ふたりでひとつということか…と、それを伝えると、二人とも「勘弁して~」という感じだった。

「今の作業が、ということだけで、それが良いことだと、そういうことを表現しただけなんだけど…」と。

 

 文章にする作業を担当する男性に「あなたは…横になって、肘をついた手で頭を支え、我何も関せず、って言ってます」と見えるまま伝える。実際に、その人は空っぽだった。引っかかるものが何もなく、あの気配の全くない窯爺に似ていた。

瞑想をずっと続けていると言っていたが、それがこういう境地にさせるのかと思った。

ただ、同じ方法の瞑想を続けているという過去生が見える男性は、全く違って、引っかかる部分や突っ込み所だらけで、その瞑想がすべてそうなる…とはならないのだろう。

 

涅槃の男性は、シュタイナーを研究していた。その部分に妙に信頼できるものがあった。

過去生リーディングと二人で行うセッションということを、わたしは受け入れていった。

申し込みとかその他の面倒な作業は、涅槃の男性がやってくれるということだった。

それは、とてもとてもありがたかった。

わたしはといえば、ただ座っていればいいだけのことだった。

 

 過去生リーディングを行う女性とも話した。

 昔から過去生というものが見えていて、ひとたびその扉を開けると、情報が溢れ出してきて止まることなく押し寄せられる勢いなのだ。

それに何の意味があるのか分からず、それの活かし方が分からなかったということだった。

 その女性の生活状況が急変して、急遽仕事を始めたことをきっかけに過去生リーディングを仕事にすることになったのだ。

 扉を開くと何時間も止まることのない言葉が溢れだして、それを書き留めていく作業は本当に大変なことだと言っていた。ひとりの人に何時間もかかる作業で、過去生を10個くらい書かなくてはならない人もいて、とても大変だと言っていた。

 わたしがパパに鍛えられていた状況に似ているな、と思いながら聞いていた。

「わたし、これからどうすればいいと思う?」

「自分自身であるということ、もっともな自分を見つけること」

「分かる、それ分かるわ~」

 わたしは声をそのまま伝えた。そのままの言葉は普通は理解しずらいものであるが、彼女はさすがに鋭かった。、勘もいいので、話が弾んだ。何も伝えないことが正解で、彼女自身が答えを見つけることが、何よりも大切なことだと感じた。だから他愛もない話を留まることなく続けていた。

 

 散漫。散乱。整理されていない。物が溢れている。目の前にくるものが答えだと思い掴もうとするが、実際はそれは答えではない。それを見ないようにすること。もっと透明になって真実を見るようにすること。

 彼女には伝えなかったが、話ながらそう感じていた。そして、彼女ならそんなことすぐに気づくのだろうと思えた。

 


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