岡山を奔走した。

 

大きな病院や福祉施設の慰問が決まった。

 

様々な施設にチラシを置かせてもらった。

 

行政の後援も許可が降りそうだった。

 

これで、なんとか集客の目処がつきそうだ。

 

宣伝費をかけることができないため、草の根で、コンサートを人々に告知していくしかない。

 

 

そうやって、岡山コンサートに向けて、一生懸命準備をしていた頃だった。

 

その日僕は、ある大きな福祉施設で、慰問の打ち合わせをしていた。

 

大きな体育館で、Toshiさんの慰問コンサートを行うことで話がまとまりつつあった。

 

担当者の方は、僕を体育館に案内すると言った。

 

 

新緑の庭を歩き、体育館にたどり着こうとしていたその時だった。

 

僕の携帯電話が鳴り響いた。


父からの電話だった。

 

「今、ワイドショーで、Toshiさんのことを報道している。大変なことになっている!」

 

父の声から、ただならぬ様子を感じた。

 

僕はとっさに、担当者の方に、こう言った。

 

「何があっても、冷静に受け止めてください」

 

 

今思い出しても、なぜそういう言葉が出てきたのかはわからない。

 

その時の僕には、ワイドショーで何が起こっているのか知る由もなかった。

 

でもなぜか、冷静に受け止めることのできない事態が起こっているのではないかと感じたのだろう。