【前回のあらすじ】
時の権力者唐橋侍従の元に、深見頼母という少年が仕えていました。
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霞亭文庫 · 男色義理物語 · 東京大学学術資産等アーカイブズ共用サーバ
男色義理物語 : 4巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション
※赤字の書入れ等は筆者。
【原文】
凡《およ》そ哥《うた》の道《ミち》にハ、貫之《つらゆき》、壬生《ミぶ》の忠岑《たゞみね》等《ら》が心にも適《かな》ひ、詩《し》は杜子美《としミ》、山谷《さんこく》が跡《あと》を覆《おほ》ふ興《きやう》有りければ、拾遺《しうい》の君《きみ》もいと憎からず、余人《よひと》に超えて情けしふ召《め》し使ひ給ひ、則《すなハ》ち時《とき》の儒官《じゆくわん》に通ハせて、周公《しうこう》、孔子《かうし》の道《ミち》を猶《な》を、尋ね聞かせ給ふ。
宛《さなが》ら顔回《がんくわい》が心にも適《かな》ひ、又、猛《たけ》き武士《ものゝふ》の道にハ、子路《しろ》が勇《ゆふ》を含ミて事とせず、全て人の品《しな》高く生《むま》れぬるハ、自然に其の気這《けわ》ひこよなふ見ゆるハ、尋常《じんじやう》の習ひと言ひながら、心にも猶《な》を勝りて、艶《あで》やかに艶《なま》めいたる様、言ゝ知らず。
彼《か》の光源氏《ひかるげんじ》、在原《ありハら》の中将《ちうじやう》など、名のミ事/゛\しふ言ひ伝へし止《や》ん事《ごと》無き人/゛\も、此の頼母に立ち並んでハ、眩《まばゆ》き程にも有らんかし。
[「光源氏、名のみ事々しう、 言ひ消《け》たれ給ふ咎《とが》多かなるに」(『源氏物語』「帚木」)を踏まえる]
然《さ》れば、打ち向かふ人毎《ひとごと》に思ひを富士浅間《ふじあさま》の煙《けぶり》に例へ、袖《そで》の湊《みなと》に唐土船《もろこしぶね》の寄るとばかり恋《こ》ひ悲しむ人/゛\多かんなれど、此の道堅く上より戒《いまし》め、関守《せきもり》厳しければ、是や葛城《かづらき》の高間《たかま》の山の心を悩まし、え出ぬ節《ふし》の身にて、漸う《やう/\》育ち、既に十六夜の春を迎へぬ夕つ方、南面の格子《かうし》を開けさせて、
【現代語訳】
そもそも、頼母は、歌の道においては、紀貫之《きのつらゆき》や壬生忠岑《みぶのただみね》たちの精神にも匹敵し、詩は杜甫《とほ》や黄庭堅《こうていけん》の後継者になりうる趣《おもむき》があったので、侍従《じじゅう》もたいそうお気に入りになり、ほかの家来より情けをかけて奉公させました。
そして、その当時の儒官《じゅかん》[儒学を教える役職]の元に通わせて、周公《しゅうこう》や孔子《こうし》が説いた道も学ばせ、まるで顔回《がんかい》のような理念も体得しました。
また、猛々しい武士の道においても、子路《しろ》のような勇ましさを持ち合わせて、問題にしませんでした。
もともと、人としての品格を高く持って生まれてきたので、自然とその人柄も格別に良く見えるのは、当然と言えば当然なのですが、心だけではなく、その色っぽい姿は、言葉では言い表せません。
あの光源氏や在原業平《ありわらのなりひら》たちのような、名前だけ仰々《ぎょうぎょう》しく言い伝えられている高貴な人々も、この頼母と並んで立つと、影が薄くなってしまうでしょう。
そういうわけで、頼母に出会った人たちは皆、富士浅間の煙に自分の恋心をたとえ[富士山から立ち上る煙のように、消える事のない恋心]、
「思ほえず 袖に湊《みなと》の 騒ぐかな 唐土船《もろこしぶね》の 寄りしばかりに」[『伊勢物語』に収録されている歌。「唐土船が寄って波が打ち付けた港のように、恋しさのあまり思わず袖が涙で激しく濡れました」の意]
という歌のように、恋い悲しむ人も多かったのですが、侍従からは恋の道は厳しく禁止され、番人を立てて監視されました。
これこそ、
「余所《よそ》にのみ 見てや止《や》みなむ 葛城《かづらき》や 高間《たかま》の山の 峰の白雲」[『新古今和歌集』に収録されている歌。葛城[奈良県]の高間山の峰にかかる白雲は、見る事しかできませんが、あの人の事も見てるだけで手の届かないまま終わるのでしょうか」の意]
の歌のように心を悩まし、自由に外に出ることができない憂節《うきふし》の身[悲しい身の上]でしたが、だんだん成長し、もう十六歳の春を迎えました。
【解説】
歌も詩も儒学も武道も極め、人柄も良く、見た目も美しいという、まさにパーフェクトヒューマンな深見頼母。
誰もが恋焦がれるのですが、侍従が寵愛してるので、自由の身の上ではなく、まさに駕籠の鳥状態なのでした。
あ、もちろん、頼母に恋焦がれるのは、女性ではなく男性です。
あ、もちろん、頼母も男性ですよ。
あ、もちろん、侍従も男性ですよ。
偉人の名前を羅列したり、たとえに古歌を使用したりして、堅苦しい感じになっているのが、いかにも仮名草子的です。
『男色義理物語』で「時の儒官」と書かれている箇所は、『藻屑物語』『雨夜物語』では「民部卿法印道春《みんぶきょうほういんどうしゅん》(または林家《りんけ》)」と書かれています。
「民部卿法印道春」は、林羅山のことなので、伏せたのは当然の措置でしょう。
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