満月のスープ 20180302 イルカとナイルブルー | 風のたまごを見つけた   

風のたまごを見つけた   

for pilgrims on this planet.
この惑星はなんて不思議!

昨夜は、月の周りに、ほんのり虹色の光の輪が見えたようですね!

みなさま、季節の変わり目を、うまく乗り切っていらしゃいますか?

さくらまは突然の肩の激痛から寝込んでしまい、いろんな方から有り難い手助けを頂戴しました。おかげさまで元気に回復。今日は、たまりにたまったメールをチェックしつつ、ブログを書いています。七転八倒している間、まるで生まれ変わるような大きな気づきがありました宝石緑知らず知らず、背負っていたものを手放し、人生も軽やかに春を迎えられることに感謝ラブラブ見えない人のつながりに感謝ラブラブ今、この瞬間に感謝ラブラブです。解毒と浄化の季節、みなさまどうぞ、おからだを大切に、春の準備を虹

 

 

            

             おばあちゃんの家のキッチンは

土間にあった。

 窓から満月が見える

小さな台所に今も香る

幾種ものハーブとお茶の香り

満月の日は

ここに来てお湯をわかし

こころを開いて

なくなったおばあちゃんの

光のスープを

静かに、飲んでみるのです。

 

 レイラ


 

ひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやり

         

         Voices of the first Fullmoon of March

 

 

真夜中の漆黒に

 

空海色の

 

新しい光の波が

 

生まれている。

 

泡のような音をたてて

 

輝いている

 

 

至福の闇にくつろいで

 

眠っている心に

 

さざ波がおこり

 

光の海となって

 

闇を溶かし、満ちてゆく。

 

 

さあ、目を開けて

 

動き出しなさい

 

あなたのハートの底の湖に

 

漕ぎ出しなさい。

 

 

ひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやりひんやり

 

 

3月のこころ

ナイルブルー  イルカの群れとターコイズ

 

 

その朝レイラは夢を見ていた。

 

あの夢に、また入りこんだのだと

 

その色調でわかる。

 

いつもの霞んだような、薄いブルー。

 

でも、今日は何かがはねている。

 

生き物?

 

はねるように、歌うように

 

すべるように。

 

 

「あ、泳いでるんだ」

 

 

 

それは、数匹のイルカだった。

 

霞んだブルーは海だったのだと、レイラは初めて理解した。

 

イルカの泳ぎは、どこまでも自由でなめらかで

 

レイラは夢から覚めたくないと願った。

 

 

水に光がさしこんで

 

一瞬、宝石のように光った、

 

一匹のイルカが振り返り

 

レイラの目を見た。

 

 

「わたしも!」

 

 

思わず叫んだ自分の声で、レイラは目覚めた。

 

「ワタシモ?」

 

ベッドに上体を起こして

 

夢の残像をたどった。

 

 

おばあちゃんの家で眠った朝は

 

アラームがいらない。

 

小鳥の声で自然にが覚めるから

 

スッキリした気分。

 

でも今日は

 

夢で私を見つめたイルカと

 

なぜかすごく懐かしい海の泡が

 

胸に残って、、なごりおしい。

 

 

少し切ない気持ちのまま

 

おばあちゃんの古いカーディガンをはおって

 

土間に降りて、水道の蛇口をひねる。

 

 

「ひや!」

 

 

3月なのにまだ水がまだ冷たい。

 

 

朝起きたら何より先に

 

祭壇や花瓶や、家の水をまずかえるのが

 

レイラの無意識にに染みついている。

 

おばあちゃんがいつもそうしてたから。

 

 

母さんはおかまいなしで朝ご飯を準備する。

 

「そんなことより先に、顔あらいなさいよ」

 

あきれ顔で私を見て、いつも言う。

 

でも、水替えファーストで1日を始めると

 

キレイに回る実感が、なんとなく私にはある。

 

「朝は戦争」っていうのが母さんの口癖で

 

ほかのことに、全く気にとめない私を見れば

 

蹴りでも入れたくなる気持ちも、わかるけど。

 

 

 

母さんは休日のたび、ここに来て

 

せっせとおばあちゃんの遺品を整理してたけど

 

だんだん足が遠のいて

 

「いつか、業者さんに処分してもらうしかないわあ」

 

と、何もしない父さんに、溜息まじりに愚痴ってた。

 

 

どこまで本気かわからないけど

 

母さんの性格からすれば、突然の決行もあり得る。

 

おばあちゃんとの思い出の品々が消えちゃうなんて!

 

それまでに大切な物を探し出しておかなくちゃ。

 

 

遺品整理がはかどらないのは理由がある。

 

この家にはレイラの家のような、わかりやすい秩序がない。

 

雑然としているようで、独特のリズムがある。

 

おばあちゃんの頭の中みたい。

 

 

物は多いけど

 

たとえば壁のくぼみを利用した書棚には

 

本は三分の一も入ってない。

 

あいたスペースの絶妙な位置に

 

とても気持ちよい質感の石がひとつ、置いてあったりする。

 

午後の日差しが、そこに斜めにさしかかる時間、

 

不思議に書棚から、平和感が広がって

 

何とも言えず、幸福になる。

 

 

亡くなってから気づいたけど

 

空間が、さりげなく愛情をこめて整えられているから

 

注意深く整理しないと

 

後ですごく後悔する気がするのだ。

 

 

 

おばあちゃん自身は、どちらかというと、おおらかで

 

相手が気兼ねしないように

 

オープンに人を迎え入れるタイプだった。

 

庭の花がとてもきれいだとか、雑草を抜いてあげましょうかとか

 

孫が受験に受かったとか、なんとかのレシピを教えて下さいとか、

 

これという用事もなく、いろんな人がここに来た。

 

 

正直に言うと、

 

私はそれがちょっとしゃくに障った。

 

みんなおばあちゃんを、ただの気さくな人と思っていて

 

気安く考え過ぎてるような気がしたのだ。

 

繊細な宝物を他人に乱される気がして。

 

もう少し距離をとるとか、自分の時間を大切にするとか

 

身構えた方がいいんじゃないかと思っていた。

 

 

そんな私の苛立ちを、おばあちゃんは知ってて

 

お客さんがいるとき、時々おばあちゃんは、

 

ぽんぽん、と私の肩をたたいた。

 

「はいはい、マジになりすぎ。わかってます」

 

でも、おばあちゃんが好きだから、しゃくに障るの!

 

そのときの感触を思い出して、ひとりごとが出てしまう。

 

 

 

寝室の窓を開けると

 

花の香りが混じった風が入ってきた

 

「春の風だ」

 

レイラの巻き毛が素顔の頬をくすぐった。

 

意外に風が強い。

 

カーテンをとめるタッセルを探したが、見当たらない。

 

「あれ」

 

かわりに、きらりと光るものが

 

レイラの目にとまった。

 

 

留め金にかかけられた、ペンダント。

 

「おばあちゃんのだ」

 

 

シルバーの部分がすっかり酸化してしまっているが

 

おばあちゃんが気に入っていたターコイズだ。

 

手で掘り出された貴重な種類の石だって聞いたことがある、

 

 

すっごーい!!

 

今日は探す前に、大切なものがひとつ

 

自然に見つかった。

 

ほお~ら、母さん、こういう偶然は、

 

せっせと朝の水替えを続ける、孫の特権よ!と

 

心の中で、どや顔をしてみる私。

 

 

ターコイズは、ブルーの石が大半だけれど

 

おばあちゃんのターコイズは少し濁ったグリーンだった。

 

石英と珍しいナイルブルーの色合いが

 

雲の上に湖が浮かんでるみたいだ、と話してくれた。

 

 

「奇妙なとこで、見つかったね」

 

レイラがペンダントを手のひらにのせると、

 

窓から、また風が吹き込んだ。

 

 

朝の夢が急に、鮮明に蘇った。

 

なめらかに泳ぐイルカの群れと

 

淡い色の水

 

その泳ぎのダンスの、楽しそうなこと!

 

空を舞うように海を泳いでいる。

 

 

フェルトの布を探して

 

シルバーのチェーンを磨き、そっと首にかけてみた。

 

心の中にも、きらきらした風が吹き込む。

 

「ねえ、おばあちゃん」

 

目を閉じて、わくわくして声をかけた。

 

その瞬間

 

玄関の呼び鈴が鳴った。

 

「え?」

 

 

空き家になってから、ここに人がくることはない。

 

どきんとした。

 

出ちゃだめ。危ない、危ない。

 

 

一瞬そう思ったけど

 

肩のぽんぽん、を思い出して

 

ちょっと、冒険。

 

おそるおそる玄関に向かった。

 

誰だろう。

 

息をつめて、のぞき窓からそっと見る。

 

 

男の子だ。

 

 

「ど、どなたですか?」

 

 

しーん。

 

 

男の子は沈黙している。

 

下を向いてしまった。

 

見えるのは、レイラに似たくせっ毛の髪。

 

 

「あ、見覚えがある」

 

時々、ここに来ていた眼鏡の男の子だ。

 

おばあちゃんに会いに来るのに

 

ほとんど口をきかなかった奇妙な男の子。

 

 

レイラはそっと、ドアを開けた。

 

男の子は、はっとしてレイラを見た。

 

「こん、、にちは」

 

レイラが声をかけると

 

男の子は、不器用な会釈をした。

 

 

 

なぜ、ここに来ていたのかはわからないけれど

 

自分からは何も話さず

 

おばあちゃんの昔話や料理の話を黙って聞いて

 

ひとりで座っていた男の子。

 

 

おばあちゃんは何も言わなかったけど

 

あとで、学校に行かなくなった男の子だと母さんから聞いた。

 

レイラは、驚くよりもむしろ、

 

男の子の勇気みたいなものにちょっとうらやましさを感じた。

 

その複雑な感情の印象が残っていた。

 

 

 

おばあちゃんのカーディガンと同じ色の

 

薄緑色のセーターを着て、じっとレイラを見ている。

 

 

家に入れてあげるべきなのかな、、

 

レイラはどうしてよいかわからず不安になって

 

首にかけたターコイズに指で触れた。

 

 

チチチチ

 

 

男の子の足下で、小鳥が鳴いてる。

 

入れてあげて、と言うみたいに。

 

             

                     【続く】

 

 

今日も読んでくださって

ありがとうございます!

春が近いので、山に行ったときの鳥たちのさえずりを

貼りました。現地には誰もいなかったのに

なぜか、ブーンというノイズが入っています。

不思議なので、理由をご存じの方

教えてくださると嬉しいです。

単にi phoneの音?かな(笑)

 

 

 

 

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