資金調達の際、いくら借りられるかということに頭が行き、いくら返すのかは何となく決めるという方はいらっしゃらないでしょうか。
これが、サラリーマンで月給取りなら年収がほぼわかっていてその中から返済することになるため、返済額が年収に占める割合すなわち返済比率が出てきます。
民間の融資ではこの返済比率をもとに融資できるかどうかを判断しています。

ところが開業時の個人事業主の場合、売上は見込みであり年収はまだ未定です。
だから民間企業では自営業者に融資しにくい現実があるのだとも言えます。
このあたりを公的融資の場合どのように考えているか、以前融資担当の方に疑問をぶつけてみたところ、申込者の売上見込に対する返済額のみから判断することはなく、独自に別のシミュレーションを作ってみるというようなお話でした。
ただ、これをそのまま融資の判断基準とは捉えない方がよいと私は考えています。
私が聞いた担当の方が嘘を言っているというのではなく、聞いている方は民間の基準と置き換えようとして聞いているけれども、聞かれた方は聞かれたから答えたという会話だったのではないかと思っています。

推測になりますが、公的機関の場合、発想が全く異なると考えた方がよいのではないでしょうか。
民間企業の場合、返せるか返せないかを返済比率から判断します。
これを開業時の個人事業主にあてはめると、ほとんど貸せないということになります。
同じ判断方法を公的融資に持ち込んでも、やはり貸せないという判断になってしまう。
そのため、発想を換えて返済比率からはこぼれ落ちてしまうお客さんを拾うような基準で運用されているのだと思います。
つまり自己資金が一定額あり、その何倍までかの額を、きちんとした創業計画に基づいて営業しよとしている事業主には融資するという判断です。

異なる基準だから民間で融資しにくいお客さんに融資が可能になっているということです。

この場合も返済はされないと困るので返済額は決めなければなりませんが、どのように決めたらよいでしょうか。

現実的な判断方法としては、予測売上から必要な経費を差し引き事業主の手取りを出してみて、その中から返済可能な額を算出するという計算を行うのが現実的かと思います。

借りることに頭が行き、より収益が上がりそうな創業計画を立ててみても、その創業計画と返済額のバランスが取れていなければ、見通しの甘い事業主と判断されてしまうでしょう。

言い方を変えると、
現実的に予測できる手取りの中からの毎月の返済額✕12✕借り入れ年数
から出てくる額ぐらいまでが借り入れの限度額の目安ということになります。
もちろん実際には金利で返済額が膨らむことをお忘れなく。

これを大きく超える額を借りようとして返済額だけ調整しようとしても、お金の流れがわかっていないということが露呈してしまうのです。