昨日は日本の行事を風習で考えるとよく理解できますよというお話で、桃の節句の由来に即して考えてみました。
今日は、お雛様の人形の並び方についてです。
お雛様とお内裏様。
右に座るか、左に座るか、これにも歴史があるんですね。
大正時代までは、お雛様が右、お内裏様が左に座っていたようです。
だけど、これを変えたのは、大正天皇。
明治になって、西洋の文化を取り入れ出した日本。
西洋では剣や盾をもつという風習から、男性が右に立つというのが習わしで、大正天皇が結婚式のときに、右に座られたんですね。
それ以来、お雛様を飾る時も、お内裏様が右に座り、お雛様が左に座るようになったそうです。
だけど、京都人は京都は文化継承の地という自負がありますから、そんなことで代々の習わしを変えるようなことはしない!ということで今でも京都の雛飾りはお雛様が右に座っているんですね。
さすが京都人ですよね!
次に3人官女。
この3人官女の真ん中は実はおばさんのようです。
おばさんというかまぁ既婚者といった方がいいでしょうか。
そして、両隣の2人がまだ若い独身娘。
その証拠に真ん中の官女だけお歯黒で眉毛を額に書いていたりしますね。
二人の若い娘たちがきちんと職務をはたしているかのお目付け役でしょうか。
次に5人囃子は、楽器が重い順に並んでいて。
右大臣と左大臣。
弓をもった若い男の人とおじいさん風の顔が赤い男の人。
どちらがどちらか分かりますか?
お雛さまの歌では「す~こし白酒めされたか、あ~かいお顔の右大臣」とあるので、赤いお顔の方が右大臣と思ってしまいますが、実はこれ逆なんです。
右大臣っていうのはお雛様のお父さんで、娘の晴れ姿を邪魔するものがいないか一生懸命見張っているんですね。
その点、若い左大臣はこの祭事にうかれちゃってお酒をのんじゃうようなノリなんですって。
日本では基本的に右に重鎮がくる。
つまり右大臣は官房長官的な存在ですね。
そして、最後の段にいるのが、じちょう(仕丁)。
3人の男の人たちですね。
彼らが持っているのには2パターンがあり、傘か掃除道具。
彼らの仕事は雑務です。だから、雨の日、晴れの日に、傘をさす仕事であったり、お雛様たちの歩くところを掃除するという仕事だそうです。
この3人。顔が笑ったり、泣いたり、怒ったり。
3種類の顔があり、笑い上戸、泣き上戸に怒り上戸と呼ばれています。
これは表情豊かな子になるようにとの願いが込められているようです。
このように日本の行事には日本独特の感情や習わしがたくさん込められています。
歴史や古文を教えていて、子どもたちが日本の風習に疎すぎるんじゃないじゃないかと気にかかることがよくあります。
たとえば、貝合わせを知らなかったり、小堤という太鼓を知らなかったり、お歯黒の女性という言葉からこの女性は結婚しているんだということが連想できなかったりするんですね。
そして、こういう習わしを知らないと、この文章は理解できないだろうな~ということが多々あり、それは幼少のころから親御さんとそんな話をしたことがあるかが大きく関わっていると思います。
家庭以外にそういうことを教えてくれる環境というのはありませんから。
日頃はそんな話題にならないでしょうが、日本の行事を通して、日本独特の風習や考え方を少しずつ知識として持っていると、大きくなったときに点と点が線になり、理解につながることがあるので、親御さんもこういう行事の際にはその習わしの由来を積極的に教えてあげるといいと思います。
また、歴史や風習にはその出来事が単体でポンッとでてきたということはなく、何事でもその出来事が起こる背景があるということも、理屈ではなく行事の中で見てとれることもおもしろいと思います。