先日、加温加湿器についての質問を頂いていたので今回は加温加湿器がアラームを発生した場合の状態はどういう状態なのか?というトピックでいきたいと思います。

そもそもの発端は以前書いたこの記事(人工呼吸器で吸気と呼気を逆に繋いだらどうなるの?)なのですが、吸気と呼気を逆に繋いだら加温加湿器はガス温度が目標温度になかなか到達しないため加温をガンガンやっちゃうわけです。

そうしたら加温しているけど温度が上がらないため加温加湿器がアラームを出しますが…加温加湿器チャンバー(蒸留水がたまるところ)内のガスは高温状態になっているはず。そして、アラームの原因が吸気と呼気を逆に繋いでしまっていることが分かったとすると普通だったら慌てて繋ぎ変えるわけですが…こうやってしまったら何がおこるか?

それは、チャンバー内で高温になっていたガスが患者側に流れるため瞬間的な気道熱傷になるのでは?という懸念がでてくるわけです…では、いったいそれはどのくらいの温度なのかという話。

気道熱傷については世間一般的に上気道(鼻腔・口腔・咽頭・喉頭等)熱傷がほとんどで今回のトピックでは挿管人工呼吸管理を行った上での加温加湿器についてのお話になるため上気道熱傷は除外されます。

したがって気道熱傷というか下気道熱傷(気管支系)および肺実質が熱傷となることが予想されるわけです。

では、以前の記事でも行ったように吸気と呼気を逆に繋いで加温加湿器を動作させてみます。

使用物品は変わらず以下のもの

人工呼吸器 サーボS(フクダ電子)
加温加湿器 MR850(フィッシャー&パイケル)
人工呼吸器回路 RT206(フィッシャー&パイケル)

人工呼吸器の動作条件は初期設定的なVCVでTV500ml・・・こんな感じです。


回路の状態は下のように吸気の青い回路を呼気へ、呼気の白い回路を吸気へ繋いでいます。


ここから人工呼吸器を数分ランニングさせ加温加湿器を動かします。動作1分後の状態を見てみると、チャンバー部分の温度がコチラ


患者口元側の温度がコチラになります。


当たり前ですが、患者口元温度が低い理由は、吸気と呼気を逆にしているため呼吸器から送気されたガスがそのままテスト肺へ行き呼気へ移行⇒呼気の最初に温度センサーがあるのでそのままドライガスの状態を反映しています。その後呼気フローは加温加湿器へ入るので加温されたガス温度がチャンバー温度となり高値を示すわけです。

では、以前の記事でも紹介しましたが、温度測定を行う加温加湿器は過度の温度上昇で加温を停止する安全機能がついています。この状態で人工呼吸器と加温加湿器を動作させ2分44秒後にアラームがなったのですが、その時のそれぞれの温度は・・・・




この結果から42.8度のチャンバー温度、口元24.7度の時に加温加湿器は動作を停止したと考えられるわけですが、口元温度は当たり前のようにドライガスそのものなので換気開始時といたって温度は変わりません。チャンバー温度は42.8度を示していますが基本的に口元温度は40度以上にあげないような管理を行うのが一般的です。

と、いうよりも機械的にそうなっています・・・。

尚、今回、手持ちの資料等で限界値は分からなかったのですが・・・IMI(呼吸器のメーカー)が出しているMR850の添付文書では「患者に41度以上のガスを送るかもしれない」との記載があるので危険温度の閾値としては41度なのかもしれません。


と、いうことは繋ぎ間違いに気付いて慌てて正しい接続に変え、患者へ42.8度という高温
ガスを送気したら【大変危険】という事になります。

このことから、まず人工呼吸器から加温加湿器へ接続する短い吸気回路を外し加温加湿器から患者へ繋がる吸気回路を人工呼吸器側へダイレクトにつなぎ一旦加温加湿器の電源を切り冷やす・・・その間の加湿は人工鼻を接続・・・みたいにすれば下気道熱傷予防と「とりあえずの加湿」はできるのかなと思います。

その後、正しい加温加湿器の接続を行い、人工鼻を外せば完了。


でも・・・こんな煩雑なことしたら人工鼻の外し忘れや回路接続間違いに繋がりそうだから現実的にはとりあえず加湿器offしてしばらくたって動作というのが現実的かもですね・・・

改めて今回は私自身考える事ができました。みなさん、加温加湿器の取り扱いには注意しましょう!