2018年05月14日
なぜ複数の新聞を読まないといけないのか=日経独自と他紙の追随報道の違い
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「複数の新聞を読みましょう」。
良く言われることですし、私も推奨しています。
これは「一紙だけだと見方が偏る」というからだけでなく、「一紙だけだと事実誤認が起きる」のです。
「見方が偏る」のは、自分の読んでいる新聞の思想に染まってしまうということですが、「事実誤認」は間違えたことを事実だと思い込んでしまうことです。見方が偏っていても事実を正確に認識していれば、それほど問題はありません(あくまで個人の嗜好の問題)が、事実誤認は深刻です。
どうしてこんな前置きをしたのかというと、昨日の日本経済新聞は「米朝会談直後 トランプ氏来日へ調整」という見出しの記事を掲載しました。「調整に入った」と書きながらも、「4月に日本の首相と会ったばかりの米大統領がこれほどの短期間で会談を重ねるのは異例」「トランプ氏は一連の首相との電話などですでに米朝首脳会談直後の来日に意欲をみせている」と記し、トランプ氏が訪日することで日米が共通認識を持っているような書きぶりです。「日本は米韓との連携を強めながらこの外交戦に臨む」というくだりは、悲壮感も漂います。情報源は安倍晋三首相周辺でしょうか。米朝首脳会談後の日米首脳会談に相当な思い入れを感じさせます。
ところがそれを追い掛けた読売、朝日、毎日の各紙の見出しはそれぞれ「政府、トランプ氏の来日要請」「日本政府、トランプ大統領の来日要請」「『米朝』後の連携模索 トランプ氏来日案」。3紙に共通するのは「日本は米大統領に米朝首脳会談後の訪日を要請しているが、まだ決まっていない」というニュアンスです。
日経報道が出た後、各社が真っ先に裏取りの取材をするのは外務省でしょう。当初から実現を危ぶんでいた外務省関係者は「米大統領に来日してほしいと希望は伝えた。でも、まだできるかどうか分からない」という説明をしたのかもしれません。あるいは前のめりになっていた首相周辺も報道が出たことによって、「日経報道を見た米側が硬化してしまって、実現できるかどうか分からない」と危ぶんでいるのかもしれません。
日経報道もあくまで「調整」なので、「誤報」になることはないのですが、日経だけを読んでいると「米朝首脳会談直後に米大統領が日本に来ることになったということは、安倍首相とトランプ大統領の関係がいまだに良好だということだな」という印象を受けたままになります。
しかし、新聞各紙に目を通していると、「少なくとも現時点では日本側が熱心に呼び掛けているが未定」ということが分かります。
今回の件に限って言えば、事実認識として日経だけを読んでいる人と他紙も読んでいる人の間で大きな違いが生じます。
特ダネは関係者が口を閉ざす状態で潜行取材するので、細部で間違った要素を含む記事になりがちです。後追いはすでに報じられた内容の確認ですし、特ダネが報じられたことによって情勢が変化することもありえます。取材先も「もう書かれてしまったんだから、正しいことを世の中に伝えてもらおう」ということで後追いの方が正確で分かりやすい内容になることが往々にしてあります。
特定の新聞に特ダネが出ていたら、その後他紙はどう書いているのか必ず確認するようにしてください。
引き続き質問をお待ちしています。
下のコメント欄にお書きください。
日中、気になったニュースをリツイートしたり、つぶやいたりしています。
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どうしてこんな前置きをしたのかというと、昨日の日本経済新聞は「米朝会談直後 トランプ氏来日へ調整」という見出しの記事を掲載しました。「調整に入った」と書きながらも、「4月に日本の首相と会ったばかりの米大統領がこれほどの短期間で会談を重ねるのは異例」「トランプ氏は一連の首相との電話などですでに米朝首脳会談直後の来日に意欲をみせている」と記し、トランプ氏が訪日することで日米が共通認識を持っているような書きぶりです。「日本は米韓との連携を強めながらこの外交戦に臨む」というくだりは、悲壮感も漂います。情報源は安倍晋三首相周辺でしょうか。米朝首脳会談後の日米首脳会談に相当な思い入れを感じさせます。
ところがそれを追い掛けた読売、朝日、毎日の各紙の見出しはそれぞれ「政府、トランプ氏の来日要請」「日本政府、トランプ大統領の来日要請」「『米朝』後の連携模索 トランプ氏来日案」。3紙に共通するのは「日本は米大統領に米朝首脳会談後の訪日を要請しているが、まだ決まっていない」というニュアンスです。
日経報道が出た後、各社が真っ先に裏取りの取材をするのは外務省でしょう。当初から実現を危ぶんでいた外務省関係者は「米大統領に来日してほしいと希望は伝えた。でも、まだできるかどうか分からない」という説明をしたのかもしれません。あるいは前のめりになっていた首相周辺も報道が出たことによって、「日経報道を見た米側が硬化してしまって、実現できるかどうか分からない」と危ぶんでいるのかもしれません。
日経報道もあくまで「調整」なので、「誤報」になることはないのですが、日経だけを読んでいると「米朝首脳会談直後に米大統領が日本に来ることになったということは、安倍首相とトランプ大統領の関係がいまだに良好だということだな」という印象を受けたままになります。
しかし、新聞各紙に目を通していると、「少なくとも現時点では日本側が熱心に呼び掛けているが未定」ということが分かります。
今回の件に限って言えば、事実認識として日経だけを読んでいる人と他紙も読んでいる人の間で大きな違いが生じます。
特ダネは関係者が口を閉ざす状態で潜行取材するので、細部で間違った要素を含む記事になりがちです。後追いはすでに報じられた内容の確認ですし、特ダネが報じられたことによって情勢が変化することもありえます。取材先も「もう書かれてしまったんだから、正しいことを世の中に伝えてもらおう」ということで後追いの方が正確で分かりやすい内容になることが往々にしてあります。
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