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2018年01月16日

政治部記者が書く外国関連記事にはご注意を

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 本日は、産経新聞一面記事を例に挙げます。今回も産経を批判することになりますが、今回の件は産経に限らず、政治部記者が書く国際情勢記事で時折見られる例として取り上げます。

 本日の産経一面に「日中関係 仕切り直し」という見出しで、河野太郎外相が27、28両日に中国を訪問することが調整されているという記事が出ています(「調整」とは、準備したり、話し合ったりしている状況のことを言います)。
 中国の潜水艦が日本の接続水域で航行したことについて、河野外相が真意を探るため、王毅外相、楊潔篪国務委員との会談が「ほぼ固まった」ものの、李克強首相との会談の調整は「難航している」そうです。

 私が思わず吹き出してしまったのが、次のくだりです。「中国の外務省は軍の行動を把握していないことが多く、王氏や楊氏では満足のいく回答ができる保証はない。(中略)このため政府は、軍の行動を知りうる立場にある李氏らの会談を中国側に求めている」。
 つまり、「格下の外相では軍のことが分からないが、首相なら潜水艦の動向も知っている」という前提です。
 これは相手(=中国)のことを知らない、とんでもない誤解です。もし分かっているとすれば、外務省の担当者の意向をそのまま書いたものです。
 結論から言えば、中国の首相は「軍の行動を知りうる立場」にはありません

 これを説明するために、まず、中国の政府高官の肩書きを整理します。
 日本と中国では、「外相」の重みが異なります。
 日本の外相は、一般的に政治経験を積んだ人が就任します。河野外相も年齢は55歳で、比較的若いのですが、当選回数は8回。外相としての評価は高く、このまま無事に勤め上げれば、有力な首相候補となるでしょう。本人も従来の一匹狼型からの脱却を図るべく組織運営に気を配っているようです。
 一方、中国の王外相はベテラン外交官で、日本大使も経験したことがあるので、日本では特に有名ですが、中国共産党の序列では200人以上いる中央委員の一人にすぎないのです。日本の外相の重みに比べれば、軽いと言えます。
 記事に出てくる楊国務委員とは、王外相の先代の外相経験者です。日本ではなじみのない「国務委員」という肩書きは外相より上位に位置付けられます。昨年10月の党大会で序列25位内の政治局員入りを果たしました。ちなみに序列1位は習近平国家主席、2位が李首相です。
 日本で序列を付けるとすれば、1位はもちろん安倍晋三首相。首相臨時代理の就任順位に従えば、2位以下は麻生太郎副総理兼財務相、菅義偉官房長官、茂木敏充経済再生担当相、野田聖子総務相となるようです。河野外相は控えめに言っても、25位内には入るでしょう。
 つまり、河野外相にふさわしい会談相手は楊国務委員であって、王外相は格下ということです。
 本日の産経記事では、「政府は首脳部との会談が実現しなくても王、楊両氏との会談を『ミニマム』とし、河野氏訪中を実現させる方針だ」と説明しています。そもそも楊氏と会談できなければ、「中国は日本を軽んじている」ということになりますから、日本政府としては受け入れられるものではないのです。

 さて、では中国の首相の李氏とはどのような立場の人なのでしょうか。序列2位だから、「偉い」のは間違いありません。しかし、習主席と李首相は、安倍首相と麻生副総理のような盟友関係ではありません(習主席と李首相の経歴は省略します。ご自分で調べてください)。
 習主席が兼任している「共産党総書記」は圧倒的な存在で、中国では「現代の皇帝」とたとえられます。習主席と李首相は、いわば皇帝と宰相の関係です。全く位置付けが異なります。
 そして、何よりも大事なのが、習主席は、軍を指導する中央軍事委員会主席も兼任していることです。中央軍事委には軍人のトップが副主席として、習氏を支える構造になっています。胡錦濤・前国家主席は軍人に軽んじられていました。習氏も実権を持たない指導者であれば、軍人が勝手にできますが、習氏は軍をしっかり握っています(これについては異論もあるようです。しかし、私には習氏が軍を完全に掌握しているように思えます)。
 一方、李首相は中央軍事委の肩書きがありません。また、軍に関係する仕事をしたことがありません。中国の首相とは正式名称は「国務院総理」です。国務院とは政府のことです。中国の軍は、正式名称は「中国人民解放軍」。中国共産党の組織であって、政府の一部門ではありません
 つまり、李首相は軍のことを何も知らないと言っても過言ではありません。大学で言えば、文学部の学部長が法学部の人事を知らないのと似たようなものです。
 日本人にとっては「首相」とは、自衛隊を統率する最高司令官だという認識を持ってしまうので、「外国の首相も軍の情報を持っているだろう」と思いがちですが、事情はその国によって異なります。
 もちろん、共産党序列2位の人物ですし、国防省が形式的に行政機関として存在するので、習主席から軍の情報を教えてもらい、「日本の河野外相と会い、このように潜水艦ことについて説明すれば良い」と指示を受ければ、話は別です(文学部の学部長だって、法学部で仲の良い教授がいたら法学部の内部事情を知っていますよね)。

 さて、どうして、産経記事のような書き方になったのでしょうか。一つは、政治部の記者が中国のことを知らなかったという可能性が考えられます。
 もう一つは、中国との調整をしている外務省の立場を守るためです。つまり、「河野外相が李首相と会談できれば、今回の訪問は目的を達成できて満点」という印象を与えるためです。もし今回の会談が容易に実現できそうなら、あえてこのように事前に記者に説明することで、会談できたときに「外務省はよくやった」と言ってもらえる雰囲気作りになります。
 ただ、どうも今の状況で、「潜水艦の動向について李首相に真意をただす」という方針が表に出てしまうと、中国側は「土曜や日曜に首相は働かないし、軍は首相の所管ではないから、会っても意味がない」という反応になるような気がします。それでも、河野外相と李首相の会談が実現するなら、それだけ中国側が日本との関係を重視し、日本の怒りをなだめたいということかもしれません。

 いずれにせよ、政治部記者が書く国際情勢記事には注意してください。すべてが間違っているとは言いませんが、このような大きな誤解に基づく記事は珍しくありません。
 皆さんも就職活動で、志望する会社のことはよく調べて、相手のことをきちんと理解した上で臨んでください。相手の考え方が分かれば、面接でうろたえる可能性が減ります。相手の意図を理解できれば、いろいろな対処法が思いつくものです。

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